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[FT]数字で見る日本郵政グループのIPO

日本の郵便事業を担う国有の日本郵政グループが予定する上場は、通常の民営化とは異なる。過去20年で国内最大の新規株式公開(IPO)で約115億ドルの資金調達を目指しているが、その過程で10年が経過していることから、変化に抵抗する傾向のある同国での株式公開が政治的論争となることを浮き彫りにしている。

日本郵政は、1870年代の創業以来、日本の郵便物の配達サービスを監督する一方で、同国最大の銀行および主要な生命保険事業者へと進化してきた。銀行事業と保険事業の営業利益はグループ全体の80%を上回る。

IPOはグループ3社でそれぞれ行われる。日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式は11月4日に上場する予定だ。IPOを通じて得られる資金の一部は、2011年の津波で被害を受けた地域の復興資金に充てられる。ここからは、関連する数字を基に日本郵政を分析してみる。

2万4000。

これは、人々が銀行取引や郵便物の発送を行う日本国内の郵便局の数だ。

この数は日本の他行の支店数の約2倍で、日本最大のコンビニエンスストア・チェーンの店舗数を6000上回る。

数百万人の日本国民、特に高齢者や農村部に住む人々にとって、日本郵政は最も認知度が高く信頼のおけるブランドの一つだ。社会の中心に位置する巨大グループであり、政治的に大きな影響力を持つことが、民営化に10年かかった主因の一つだ。

最終的な売り出し価格は未定だが、IPOに関わる銀行員によると、初回分は、複合組織である郵政グループの顧客である国内個人投資家を対象とするという。

29億。

これは2015年の正月に日本郵政が配達した年賀状の数で、1人当たり平均25枚の計算だ。年賀状は日本国民の伝統へのこだわりを示すかもしれないが、その数は1998年の41億枚から大きく減少している。

年賀状の減少は、日本郵政にとって最大の問題の一つを象徴するものだ。つまり、同社が世界で最も速く高齢化の進む国の人々にサービスを提供する、きしむ巨大組織だということだ。

日本郵政は郵便・物流事業が「取扱量減少の継続的な潮流」に直面していることを認めている。同社は3月末までの1年間で、売上高が2%増の2兆8000億円だったのに対し、純利益は53%減の154億円だった。直近の会計年度では、グループ全体の売上高は7%減の14兆3000億円、純利益は1%増の4820億円だった。

同社の銀行事業と保険事業は、日本の人口減少への対策も取らなければならない。

79。

これは東京証券取引所グループの元会長で13年から日本郵政の社長を務める西室泰三氏の年齢だ。

同氏登用の決定に詳しい筋によると、同氏は第1候補ではなく、IPO後の後継者探しは難しい作業だという。

関係筋によると、社長候補探しの難しさは、株式公開後に日本郵政が直面する厄介な課題を浮き彫りにするという。次期社長は、これまで国外に目を向ける必要がなかったグループの海外事業を拡大しつつ、縮小する国内市場に対処しなければならない。

次期社長は、政治絡みのにらみ付けるような視線の下で、グループ会社の人員削減やその他の効率化を進めることが期待される。要するに、日本郵政の社長は、公の場でたたかれ役になるリスクを取る覚悟のある経験豊富な重役クラスの人物でなければならない。

1000万円。

これは、ゆうちょ銀行の貯金額の上限だ。同行の貯金総額は1兆4500億ドルで、日本の個人金融資産の13%を占める。

IPOにより、上限を引き上げる政治的機運が生まれている。ゆうちょ銀行の貯金が抑制されていることで持ちこたえていた地方銀行も多いことから、地方の銀行業界で不満が高まっている。

地方票を獲得しようとする政治家は3000万円を上限とするよう求めている。他の収入源が細る中、ゆうちょ銀行に郵便局施設の利用料を課している日本郵政にとって、上限引き上げは手軽な増収につながる。

地方銀行の激しい抵抗の他にも、積み上がった資金の運用先が不足しているゆうちょ銀行がバランスシートの拡大を探るべきかについて、日本の金融規制当局である金融庁が疑問を呈する可能性も高い。

By Leo Lewis

(2015年9月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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