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レフェリーの癖見抜き、16人目の味方に ラグビーW杯

この人がいなければ球技の試合は成立しない。それがレフェリー(審判)だ。とりわけラグビーのルールは難解なうえ、レフェリーによって「解釈」に幅があることもある。選手や監督にとって大事なのはレフェリーと対立することではなく、癖や傾向などを見抜き、その解釈にチームを適応させて「味方につける」ことだ。18日(日本時間19日)に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)でも、レフェリーの判断が試合を大きく左右することもありそうだ。ラグビーのレフェリーの世界をのぞいてみよう。

すべての判断の最終責任は主審に

W杯のような国際試合を担当する審判団はどのように構成されるのだろうか。まずレフェリー(主審)。フィールド内で笛を吹き、トライやゴールキックの成否、反則の有無、反則やケガなどで選手を退場・退出させるべきかどうか、時計を進めるか止めるか、選手を交替させるかどうか……など、ありとあらゆる判断について最終的な責任を持つ。ただ主審一人だけですべてを見定めることは物理的に不可能なので、「補佐役」が必要になる。それがアシスタントレフェリー(AR)1、AR2、テレビジョン・マッチオフィシャル(TMO)だ。

ARはボールや選手がタッチに出たかどうか、ゴールが成功したかどうかを見極めるのが最も大切な仕事。加えて主審の見えないところで危険なプレーを含め反則が起きていないかどうかチェックし、無線で主審に伝えたりする。主審はトライかどうか判断できない場合や、危険なプレーをした選手を退場させるべきかどうか、ARに見解を聞くことがある。また、肉離れや選手との接触でケガをするなどして主審がその任務を継続できなくなった場合、まずAR1が代わりに主審を務める。

TM0、トライ直前の反則の有無もチェック

主審もARもトライかどうか判断できない場合は、TMOの見解を聞く。TMOは様々な角度から撮影された映像を見て、主審に見解を伝える。TMOの役割は以前はトライシーンに限られていたが、最近になって、トライにいたる直前のプレーで反則がなかったかなどについてもチェックすることになった。これら主審、AR1、AR2、TMOの4人をマッチオフィシャル(審判団)と呼ぶ。ただ、このほかにも交替指示者(サブコントローラー)などもレフェリーの資格保持者が務めている。

レフェリーたちは研修を重ねるなどして、主審ごとに「解釈」の幅が出ないように努力はしている。ただ、主審によってはスクラムを落とす行為に厳しかったり、ラックなどボール争奪戦での反則の判断が早かったり、若干の「個人差」は生じてくる。また、同じ主審でも試合によって幅が出てくることもある。そうしたレフェリーの「癖」にいち早く適応すれば試合を有利に進めることができる。

W杯の日本の試合をさばくレフェリーの割り当てはすでに決まっている。初戦の南アフリカ戦を担当する主審はフランス協会のジェローム・ガルセス氏。直近では8月22日の福岡・レベルファイブスタジアムでの日本対ウルグアイ戦の笛を吹いている。2戦目のスコットランド戦はアイルランド協会のジョン・レイシー氏。9月5日の対ジョージア戦を担当した。日本代表の選手にとっては主審の癖をつかむことができた一方、主審側も日本の反則の傾向を知ることができただろう。

3戦目のサモア戦は南ア協会のクレイグ・ジュベール氏。前回2011年大会の決勝、ニュージーランド(NZ)対フランス戦の主審を務めた実力者だ。4戦目の米国戦はNZ協会のグレン・ジャクソン氏。日本の主将、リーチ・マイケル選手も契約するNZのスーパークラブ、チーフスで1999年から04年までスタンドオフを務めた後、イングランドのクラブ、サラセンズに移籍。日本代表のエディー・ジョーンズ監督もかつてサラセンズの監督を務めており、2人は選手、監督として重なった時期がある。ただ、そのことが日本に有利に働くほど甘くはないだろう。

日本代表のレフェリーへの適応力は?

日本代表のレフェリーへの対応で少し気になったことがあった。8月29日、東京・秩父宮ラグビー場で行われたW杯前の最後の国内試合、対ウルグアイ戦だ。この試合で日本代表は後半、スクラムを故意に崩す「コラプシング」という反則を3度、立て続けに取られた。もちろん選手に「故意に崩した」つもりはないだろう。しかし、リーチ主将含め選手らは主審のジョージ・クランシー氏(アイルランド協会)に「なぜ反則なのか」と尋ねる風でもなかった。試合後の会見でジョーンズ監督は「我々の問題とは思っていない」と主審の判断を疑問視したが、同じ反則を何度も取られる前に、主審ともっとコミュニケーションを取る必要があったように思える。

W杯はレフェリーにとっても一生に一度、あるかどうかの晴れ舞台だ。ただ、最終的な目標、夢は決勝の笛を吹くことだろう。そのためには1次リーグでの「評価」が大きな要素になる。明らかなミスジャッジなどは大きく評価を下げることになるなど、晴れ舞台に立ってもなお、レフェリー同士での鼻息の荒い競争は続く。出身国が決勝トーナメントを勝ち進むかどうかという「運」もある。出身国が決勝に駒を進めれば、その国のレフェリーは決勝の審判団に入ることはない。

日本のトップレフェリー、W杯の審判団に入れず

残念なのは、AR、TMO含めW杯の審判団に日本のトップレフェリーが1人も入っていないことだ。W杯の審判団もやはり「ティア1」、つまり強豪国の協会のレフェリーがほとんどを占めている。サッカーのW杯では日本人のトップレフェリーが重要な試合を任されている。こうした現状は、ラグビー日本代表のこれまでの成績や現在の地位と無関係ではない。日本のトップレフェリーは「日本代表が強くなって強豪国の仲間入りしなければ、我々もW杯のような国際舞台にはなかなか立てない」と口をそろえる。そのためにも日本代表には本大会で悲願の決勝トーナメント出場を果たしてほしい。

(電子編集部 松井哲)

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