2019年6月17日(月)

福岡、なぜラグビー王国に 日本代表も多数輩出
幼少期から親しむスクール隆盛

2015/9/2 15:30
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ラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会の開幕が18日に迫った。同大会の日本代表には九州ゆかりの5選手が選出。都道府県別のラグビー協会登録者数は人口当たりで宮崎が3位、福岡が4位だ。九州のラグビー人気が評価され、次回2019年のW杯日本大会では福岡、熊本、大分が開催地に選ばれた。なかでも福岡県はラグビー王国と呼ばれるほど。ラグビー熱の秘密に迫った。

幼い頃からラグビーに親しめる環境がトップ選手が育つ地盤となる(みやけヤングラガーズの練習風景)

幼い頃からラグビーに親しめる環境がトップ選手が育つ地盤となる(みやけヤングラガーズの練習風景)

下は幼稚園・保育園児から上は中学生まで、毎週末多くの少年少女が楕円のボールを追い回している。福岡ラグビーの特色と関係者が声をそろえるのはラグビースクールの存在だ。日本代表で不動の先発メンバーとして活躍する五郎丸歩選手もみやけヤングラガーズ(現在は福岡県那珂川町を中心に活動)でラグビーを始めた。

現在、福岡県内には24のスクールがあり、未就学児から中学生までのスクール登録選手数は1800人を超える。人口10万人あたりの選手数では37人と、ラグビーが盛んな大阪(27人)や神奈川(26人)、東京(17人)などを大きく上回る。

九州にラグビーが伝わったのは1920年ごろとされる。日本ラグビー史にその名を刻んだのが49年。初代日本一を決める第1回全国社会人大会で福岡配炭公団が優勝した。50~60年代にかけて八幡製鉄が活躍。重厚長大産業が隆盛を極め、一大工業地帯だった九州に有名大学出身選手が集まり、九州ラグビーの礎が築かれた。

ただ、その後は低迷。九州ラグビーフットボール協会の安部直幸事務局長は「修猷館高校ラグビー部に在籍した60年代は新入部員勧誘に苦労した」と自身の経験を語る。

こうした中、70年に設立された草ケ江ヤングラガーズ(福岡市中央区)などをモデルケースに80年代にかけて福岡各地でラグビースクールが誕生していく。70年代前半は団塊ジュニア世代が生まれた時代。育ち盛りの子どもたちが元気いっぱい動き回れるよう「町内会長らが少年健全育成の場として始めた」(草ケ江ヤングラガーズの上野和信事務局長)という。

現在でもラグビーエリート育成より、教育を重視するスクールが多いようだ。体をぶつけ合うスポーツだけに「かつてはドラマ『スクールウォーズ』のように不良少年を指導する役割を担う一面もあった」と話す福岡市内の指導者OBもいる。

当初は「子どもにこんな危険なスポーツをやらせるなんて」と反対する声も多かった。ラグビー協会からも正式には認められず「公式戦を開けないから、自主的にクラブが寄り集まって『交流会』と銘打った活動にならざるを得なかった」。78年にみやけヤングラガーズを創設した大石侃会長は当時を振り返る。

こうした草の根での切磋琢磨(せっさたくま)によりラグビーの輪が広がった。指導の質も高まり、中学年代の全国大会などでも福岡県チームの活躍は目立つようになった。老舗スクールは既に30~40年の歴史を誇る。スクール出身者が子どもを再びスクールへという循環も生まれている。

ラグビー日本代表の五郎丸歩選手(左)と福岡選手(右)はW杯日本大会の開催地になった福岡県の小川洋知事(中)を表敬訪問した(5月、福岡県庁)

ラグビー日本代表の五郎丸歩選手(左)と福岡選手(右)はW杯日本大会の開催地になった福岡県の小川洋知事(中)を表敬訪問した(5月、福岡県庁)

高校年代ではラグビーの甲子園にあたる花園(全国高校ラグビー大会)で、ここ8年で5度優勝した東福岡高校の活躍が圧倒的。創部90年を超える福岡高校や修猷館高校、筑紫高校などの県立勢も健闘している。これもスクールが形成する広い裾野のたまものだ。日本代表に名を連ねる福岡堅樹選手は玄海ジュニアラグビークラブ(福岡県宗像市)でラグビーを始め、福岡高校で花園出場を果たした。

少子化で子どもの数が減る中、福岡県内のスクール登録者数はここ15年ほぼ横ばい。女子の活躍も増えている。女子日本代表の野田夢乃選手は男子に交じって、かしいヤングラガーズ(福岡市東区)でラグビーを始めた経歴の持ち主だ。

スクールの運営は選手の保護者などが運営を担う。競技経験がないことも多く、子どもがスクールに入ったのをきっかけにラグビーにのめり込んでいった保護者も目立つ。草ケ江ヤングラガーズの上野事務局長もその一人。「地域のスクールを媒介にしてラグビーファンが育っている面もある」と話す。

W杯に向けた日本代表の壮行試合が8月22日に福岡市のレベルファイブスタジアムで開かれ、幼いスクール生を含む多くのファンが席を埋めた。福岡のスクール関係者は40年にわたって、熱く、ラグビーの裾野拡大を進めてきた。日本ラグビー界の頂点を引き上げるべく、W杯では日本代表の健闘に期待したい。

(西部支社 佐藤洋輔)

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