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全米テニス、高額優勝賞金 男女同額へ奮闘の歴史

テニスの四大大会今季最終戦、全米オープンが31日、ニューヨークで始まる。シングルスの優勝賞金は四大大会の中で最も多く、昨年より10%増えて史上最高の330万ドル(約4億円)に引き上げられた。ツアー大会ではまだ男女の格差は残るものの、四大大会の賞金額に差はなく、テニスはプロの女子選手が男子並みに稼げる競技だ。

男女双方に不満なおくすぶる

テニスの四大大会は男子ゴルフのメジャー大会よりも賞金が高額だ。全米オープン1カ月前に行われる大会で得たポイントに応じて賞金がもらえるほか、男女それぞれポイントの上位3選手は全米オープンの成績に応じてボーナスまで手に入る。ポイント1位の選手が優勝すればその額は100万ドルにもなる。今大会で女子シングルス4連覇を目指すセリーナ・ウィリアムズ(米国)はこれまで2年連続でフルにボーナスを得ており、男女を通じて最も全米オープンで稼いだ選手だ。

この問題については、なお男女双方に不満がくすぶっている。男子選手側の言い分は「3セットマッチの女子に比べ、(四大大会では)5セットを戦い精神的、肉体的消耗が激しい」。これに対し、女子選手側は「女子ツアーも商業的に成功している」と主張する。かつて、フランスの男子選手、ジル・シモンが記者会見で「男子テニスの方が女子テニスより(レベルで)先を行く」と発言したことがあった。女子トップ選手の1人、マリア・シャラポワ(ロシア)は記者会見で「私の試合を見る人の方が彼の試合を見る人よりちょっと多いわ」と応戦。セリーナは「多くの観客がシモンの試合より、マリアの試合を見るんじゃないの」とシャラポワを援護射撃した。

全米オープンの賞金が男女同額になったのは1973年からだ。米国では当時、トップ選手だったビリー・ジーン・キング(米国)が熱心に活動し、男子選手と対戦して勝ったこともある。3万人も観衆が集まり、テレビ中継もされ、女子テニスが認知されるきっかけになった。

その後もクリス・エバート、マルチナ・ナブラチロワ(共に米国)、今ならビーナス・ウィリアムズ(米国)、シャラポワら現役スター選手が活動を引き継いでいることが大きい。21世紀に入り、他の四大大会も全米オープンに追随したが、最も反応が鈍かったのがウィンブルドン選手権で、実現したのは2007年。05年ウィンブルドン女子シングルス決勝の前日、ビーナスが演説して政治家らも後押ししたのが効いた。

100年以上前から四大大会が男女共催だった歴史のあるテニスに比べ、他のプロスポーツはこうはいかない。サッカーでは日本女子代表「なでしこジャパン」の日常生活が質素であることはよく知られた話。今夏のワールドカップ(W杯)カナダ大会で優勝した米国でも、国内女子リーグは大差ない。川澄奈穂美(INAC神戸)、米代表GKホープ・ソロらが所属したシアトルのチームは試合後、宿泊先のホテルで夕食のハンバーガーをほお張っていた。男子の14年W杯ブラジル大会の優勝賞金が3500万ドルだったのに対し、今年の女子は200万ドル。国際サッカー連盟(FIFA)はスポンサーの差を理由に挙げるが、14年大会ベスト16だった米男子チーム(900万ドル)より少ないことを指摘する意見がある。

27年ぶりの年間グランドスラムも

米女子プロバスケットボールのWNBAでは、トップ選手の年俸は日本円で1000万円ほど。男子のNBAの最低年俸の5分の1程度にすぎず、トップ選手がオフに中国やロシアへ"出稼ぎ"に行くのは珍しくない。ゴルフも全英女子オープンは男子の3分の1ほどで、全米女子オープンでさえ男子の半分以下というのが実情だ。

米経済誌フォーブスで毎年恒例の「最も稼ぐアスリート100人」をみると、男女選手の賞金格差がよく分かる。15年版でランク入りした女子選手は26位のシャラポワと47位のセリーナのわずか2人にとどまり、ともにテニス選手。女子プロスポーツは賞金額で男子選手に大きく水をあけられている。

賞金ではスポーツ界で男女平等の先端を行くテニスだが、女子選手からみれば待遇改善はまだ道半ばといえる。今年のウィンブルドンではセリーナとキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)が「女子はセンターコートや1番コートなど、ビッグコートで試合が組まれる機会が少ない」と発言した。試合会場は照明設備がセンターコートにしかない。試合を消化するためにやむを得ない面もあるが、女子の試合は約40%しかセンターコートや1番コートで行われなかった。ほかの四大大会では50%前後を女子の試合に割り当てている。

昨年の全米オープン決勝は実は錦織圭(日清食品)が出場した男子決勝より、女子決勝の方が全米で視聴率が高く、盛り上がった。今年は「セリーナ一色」になるかもしれない。シングルスで優勝すれば4連覇、四大大会は昨年の全米オープンから5大会連続での優勝となる。しかも男女を通じて27年ぶりの年間グランドスラム達成になる。

(原真子)

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