アイアンマンレース226キロ 壮絶な五島列島の坂

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2015/8/29 6:30
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 ランニングブームが続く2015年の日本。長距離レースの舞台は、硬い舗装路やトラックだけではない。街を飛び出し、山・森・海といった自然の中を本能のままに駆け回るランナーが増えている。トレイルランニング、トライアスロンなど自然そのままを競技コースにした「ワイルド」な大会に記者自身が参加し、その熱気と魅力を伝えたい。第6回は総距離226キロに及ぶ「五島長崎国際トライアスロン大会」だ。

スタート前、水温20度前後の海に入る(長崎県五島市、五島長崎国際トライアスロン大会実行委員会提供、以下同)

スタート前、水温20度前後の海に入る(長崎県五島市、五島長崎国際トライアスロン大会実行委員会提供、以下同)

「ファーン」。少々間の抜けた音が港内に響いた。水色のキャップをかぶった約700人の選手が泳ぎ出し、穏やかだった海面はたちまち水しぶきに包まれる。スタート前にはカウントダウンがあると思い込み、気を抜いていた記者は慌ててゴーグルをつけて後に続く。いつも思うが、トライアスロンのこのスタート音、長く過酷なレースの幕開けにしてはのんきな感じがして、調子が狂う。

トライアスロン3戦目、今回はスイム3.8キロ、自転車180キロ、ラン42.2キロと、とにかく長い。「鉄人競技」の異名を持つトライアスロンでも、特に今回のような長距離の大会は「アイアンマンレース」と呼ばれる。競技を始めた者であれば誰しも一度は完走して「アイアンマン」の称号を得たいものだ。

舞台は長崎県の長崎港から船で西へ約100キロ、五島列島最大の福江島。6月13日に島に入り出場手続きを済ませると、民宿で早めに就寝。翌14日はスタート3時間前の午前4時に起き、バスでスイム会場の富江港に向かった。上空から小雨がぱらつく曇天。直射日光が少ない分、やりやすい環境だ。

スイムのスタート直後はいつも、密集状態で蹴られたりたたかれたりする「バトル」と呼ばれる激しい選手同士の接触に巻き込まれる。スピードは落ち、体力も消耗する。いいことはない。この足の引っ張り合いを避けるため、今回はスタート時から前方に位置取り、最初だけ飛ばして早めに集団から抜け出す作戦をとった。

スイムの1周目を終えるといったん陸に上がる

スイムの1周目を終えるといったん陸に上がる

「逃げ」はうまくいった。それほど接触することなく泳ぎ出すと、200メートルほどで同じくらいのスピードで泳ぐ集団が形成された。これで一安心と、省エネに切り替える。力を抜き、大きく、ゆっくりと腕を回す。キックは下半身が沈まない程度に軽く。3種目のうち唯一得意と言えるスイムだが、バイクとランで222キロも残っているのだ。落ち着いていこう。

曲がり角が多い1周1.9キロのコースを2周。水が濁り波立つ海を、まっすぐクロールで泳ぐのは案外難しい。時々首を起こし、目印のブイやまわりの選手の位置を確認する。それでもたびたび方向を誤り、ジグザグ方向に泳ぐし、時々塩辛い海水を飲み込む。1周目を終え一旦陸に上がった。時計を見ると35分。予定通りだ。

2周目に入ると選手がばらけ、ほとんど独泳状態になった。近くに選手がいないと、真っすぐ泳げているか不安になる。ライフセーバーが乗る黄色いボートをチラチラ見ながら泳ぎ続ける。速度はたった時速3キロ。岸から応援の太鼓の音が聞こえてくれば、ゴールは近い。終盤、腕でグイグイ水をつかんでペースを上げた。陸に上がると2周目は36分。よし、あとは脚力勝負だ。

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