「突破者」のマネー哲学 お金だけでは得られないもの

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2015/8/22付
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なぜ、お金を求めるのか。ある人はより豊かな暮らしのために、またある人は将来の安心を買うために。ただ、様々な分野で最先端を走った突破者の中には、お金だけでは手に入らない価値を見つめる人々もいる。お金を手にした今、改めて彼らのお金との距離感を聞いた。

■お金では自由は買えない 波乱の半生が生んだ「絶対視」しない目

宋文洲さんは波瀾(はらん)万丈の経験を通じて「お金で自由は買えない」と実感する。

宋文洲さんは波瀾(はらん)万丈の経験を通じて「お金で自由は買えない」と実感する。

業務用ソフト開発のソフトブレーン(東証1部)創業者の宋文洲さん(52)は2006年に経営から引退した。残りの人生をお金のために働くことに疑問を感じたためだ。今は中国と日本を行き来する生活だが、日本では千葉県の自宅で多くの時間を過ごす。房総半島に所有する山で農作業に精を出し、敷地内に自分の手で道路、橋などをつくる。「山での作業を頭に浮かべるだけでわくわくする」といい、「たとえ収入が3分の1になっても満たされた生活を送る自信がある」と笑う。

人に頼まれれば経営指南をしたり、日中間の政治問題の評論家としてテレビに出演したりするが、目的はお金ではない。基本的には自分のやりたいことしかやらない。「お金で自由は買えない」という宋さんの人生観は中国の革命や改革の波にさらされた半生がはぐくんだ。

宋さん一家はかつて上海の租界に住む外国人向けのコックや清掃作業員といった労働者派遣業で財をなした資本家だった。しかし1949年に中華人民共和国が樹立されると、財産はすべて没収される。7人兄弟の6番目の宋さんが生後すぐ移り住んだのが東北部の遼寧省の農村だ。北朝鮮との国境を隔てる川沿いに石と泥で作った粗末な小屋を建て、荒野を開墾し田畑を耕した。69年に中ソ国境紛争が起きると政府の命令で山東省への移住を余儀なくされる。生活のため宋さんは少年期に新疆ウイグル自治区の姉の嫁ぎ先に単身で身を寄せたこともある。

資本主義は悪とされ、「資本家出身の自分たちは敵視され、出世の機会もなかった」と述懐する。「私有財産が保証される安定した社会システムがないとお金の価値なんてない」と実感した。

70年代後半からの改革開放で出自に関係なく大学で無料の教育を受けられるようになり未来が開けた。遼寧省の大学で学んだ後、公費留学生として来日。北海道大学で資源工学の博士号を得た後に日本で起業し成功した。

「身の丈に合った経営を続ければ失敗しても損害は少ない。ビジネスの成功を焦らず地道に事業を育てることが重要」という。それゆえにベンチャーキャピタルに多額の資金援助を求めて起業する新興企業には批判的だ。「お金がないと寂しい。ただお金に振り回されてはいけない」と戒める。社会主義と資本主義の両方の体制を経験する中で、お金は絶対ではないと確信する。

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