「日本でなきゃダメ」 米国発技術で産業ロボに革新

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2015/8/19 6:30
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高い技術力で次世代を担う革新の種を生み出そうとする東大発ベンチャーを追う

高い技術力で次世代を担う革新の種を生み出そうとする東大発ベンチャーを追う

 米国で磨き上げた技術を武器に、日本で産業用ロボットの革新を目指すベンチャーがMUJIN(東京・文京)だ。CTO(最高技術責任者)のデアンコウ・ロセン氏は、米カーネギーメロン大学で技術を開発し、事業を立ち上げるために日本の地を踏んだ。従来、ロボットを動かすための初期設定には膨大な手間がかかったが、同社の「MUJINコントローラ」を使えば、多数の関節を組み合わせた複雑な動作を自動で作り出せる。

「MUJINコントローラ」を接続した産業用ロボット。ロボットの奥にある銀色の箱がMUJINコントローラの本体

「MUJINコントローラ」を接続した産業用ロボット。ロボットの奥にある銀色の箱がMUJINコントローラの本体

「今までの産業用ロボットは、単なる製造機械にすぎなかった」――。東京大学にほど近い文京区・湯島にある32坪のオフィス。技術者の大半が外国人で、活発な英語が飛び交う中、ロセン氏は丁寧な日本語で話し始めた。

かつて産業用ロボットを動かすには、専門のオペレーターが試行錯誤しながら手作業で関節の動きを指定する必要があった。作業には膨大な手間がかかり、ロボットは教えた通りの動作を延々と繰り返すだけで応用がきかない。これがロセン氏が言う「単なる製造機械だった」という理由だ。

MUJINコントローラを使えば「周囲の環境を検知して、それに合わせてリアルタイムに自律的に動作を作り出す」という真のロボットの姿を実現できる。「工場内で自動化が必要とされている作業の中で、95%はリアルタイム制御が必要」とロセン氏は分析する。

キヤノン、日産自動車、日立製作所、富士通、ホンダなど、日本のものづくりを支える企業がMUJINの技術を既に利用し始めている。

■既存のロボットで困難だった「ピッキング」

実現できる作業の具体例が、ケース内にばらばらに入った部品を拾い上げる「ばら積みピッキング」作業だ。ロボットが手先についた指で部品を拾い上げ、近くのケースに並び替えたり、別の部品に取り付けたりする。

部品を拾い上げるだけ、というと簡単に聞こえるが、従来の産業用ロボが苦手とする困難な作業だった。部品の山を3Dカメラで捉え、拾い上げる1つの部品を捕捉して向きや高さを認識する。そのうえで、ケースなどの障害物にぶつかることなく、アームをどの方向から差し込めばいいのかを判断し、ロボットに動作の指令値を送る。

「ばら積みピッキング」の作業。ケースの中に入った多数のねじから1本を選び、ロボットの手先にある箸のようなハンドで拾い上げる

「ばら積みピッキング」の作業。ケースの中に入った多数のねじから1本を選び、ロボットの手先にある箸のようなハンドで拾い上げる

こうした臨機応変さを、オペレーターが動作を手作業で指定していく従来の方法で実現することは難しかった。「ばら積みピッキングを従来の方法で実現するには、少なくとも1~2年はかかった。我々の技術を使えば最短1カ月で構築できる」とロセン氏は見積もる。導入コストも削減できる。ばら積みピッキングの場合、システム開発コストの50%を削減できる例もあるという。

従来は、製造ラインに立つ人間の工員が作業を担ってきたが、ロボットに代替させるメリットは多い。重いものを運んでも疲れないし、休まずに24時間働き続ける「止まらない工場」が実現できる。人為的なミスを防ぐための検査工程も削減できる可能性もある。

■米国は産業用ロボットに抵抗感

「自分の技術を製品化するために日本に来た。日本でなければ、どうしてもダメだった」――。博士号を取得した米国ではなく、日本で起業する道を選んだ。理由は、労働人口が減り、工場の海外移転による空洞化の問題がある日本で最もニーズが高いと考えたからだ。

カーネギーメロン大学ではロボット工学の権威である金出武雄教授に師事し、研究室を訪れた多数の日本の技術者とふれ合った影響も大きかった。

MUJINのCTO(最高技術責任者)兼共同創業者のデアンコウ・ロセン氏

MUJINのCTO(最高技術責任者)兼共同創業者のデアンコウ・ロセン氏

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