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人民元切り下げの今後はどうなる?

中国人民銀行は、これまでもクローリング・ペッグ方式に近い為替相場制度を採ってきた。この方式は、財務省の定義によれば、「事前に発表される固定された小幅レート、または選択された数量指標における変化を下に、定期的に為替レートの変動幅が調整される制度。変動幅を明示して固定」ということになる。英語で、クローリングとは、「毛虫がはうような歩み」を意味する。ペッグは「固定」である。毎朝基準値を発表してその上下2%を変動幅としてきたわけだ。

今回の「人民元切り下げ」の特徴は、その基準値をマーケットの実勢に近づける点に大きな変化がある。

3日連続して基準値を引き下げたことで、段階的切り下げにより人民元自由化への方針をアピールする意図がより鮮明になってきた。

今後の市場の注目点は、最終的な落としどころだ。

さまざまな臆測が流れるが、最終的に10%程度の切り下げが現実的なところではないか。

なお、昨日引け際の人民元買い介入に見られるごとく、スムージング・オペレーションも頻繁に実施することになりそうだ。これは為替相場が大きく変動したとき、その振幅を小さくするために行うオペだ。今回は特に投機的人民元売りをけん制して「秩序ある人民元安誘導」をアピールすることになろう。中国人民銀行はこれまでも上限2%の変動幅内で人民元の買いオペレーションは時折行ってきた。特に中国からの資本逃避が顕在化するようになってからは、人民元を上げる必要が生じる局面もあったのだ。

今回も急激な人民元下落は、資本逃避を加速させるリスクがあるので、スムージング・オペレーションにより、「早すぎず、遅すぎず」の微妙なかじ取りが必要となろう。

ただし、中国人民銀行は「市場とのコミュニケーション」を重視しない。一方的な発表により金融政策を変更する。従って、疑心暗鬼の市場内で、人民元のボラティリティーが、今後も高まるのは必至の情勢だ。

なお、市場も、唐突な変更で動揺したが、実相が徐々に明らかになってきたので、落ち着きつつある。中国経済減速の不安は残るが、目先、大きな値崩れのリスクは和らいだ。円相場はドル買いの手じまい売りで円高に振れたが、毛虫がはうごとく円安が進行するトレンドは変わらない。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://gold.mmc.co.jp/toshima_t/index.html
ツイッター(http://twitter.com/#!/jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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