フルスイングの余韻(山崎武司)

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高校で得た「理不尽への免疫」 野球人生の糧に

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2015/8/16 6:30
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夏の高校野球が真っ盛りだ。期待していた母校の愛工大名電は残念ながら愛知県大会決勝で負けてしまったが、高校野球は毎年楽しみにしている。僕は甲子園には縁がなかった。それでも高校時代の3年間はその後の人生の大きな糧になっている。

愛知県では愛工大名電のほかに中京大中京、東邦、享栄の私学4強がしのぎを削り、隣県を含めた有望な中学生を取り合っている。勉強が得意でなかった僕は、中学生の頃には将来はスポーツで食べていこうと勝手に決めていた。特に好きだったわけでもないが、金を稼ぐなら野球が一番いい。けれども中学では部活の軟式野球をしていただけで、大した実績もない。何となく大会に出て好成績を残した陸上や相撲では高校からの誘いがあったのに、野球では声がかからなかった。

掃除に洗濯、練習よりきつかった寮生活

当時、大学生だった兄が愛工大名電で教育実習をしていた。そこでお世話になっていた先生が野球部のコーチで、「弟が野球をしている」と話したら「それならセレクションを受けに来てみれば」ということになった。現ソフトバンク監督の工藤公康さんらプロ入りした先輩も多い愛工大名電はスカウトの目にも留まりやすい。プロを目指すにはいい環境だった。

セレクションを通った特待生とはいっても最初は基礎体力づくりや球拾いばかりで野球をさせてもらえない。一般入試で入った生徒を含めて100人ぐらいの新入部員が1日で半分に減った。1日で辞めた特待生もいて、一般の生徒となると1カ月後には数人しか残らなかった。

練習以上にきつかったのが寮生活だ。それまで母任せだった掃除や洗濯をすべて自分でやらなければならない。家にいた頃は文句を言っていた母の手料理が妙に恋しくなったものだ。

入学前、僕は先輩とケンカして野球部を辞めるんじゃないかと心配していた。予想通り、先輩の嫌がらせはひどかった。監督の家族は離れたところに住んでいて、寮にいるのは生徒ばかり。大人の目が行き届かないのをいいことに、洗濯の仕方が悪いとか、返事の仕方が気にくわないとか何かにつけて文句を言ってくる。手を出してくることも当然あった。理不尽な上級生はほとんどがレギュラーになれない人たち。鬱屈したエネルギーのはけ口が下級生なのだ。「プロに行くための辛抱だ」と自分に言い聞かせ、おとなしくしていた。

本気の二塁送球からレギュラーへ

一方、野球ではそんなに苦労しなかった。僕はうぬぼれ屋だったから、先輩や実績のある同級生を見ても「俺の方がイケてるんじゃないの」と思っていた。1年生の夏の大会の時、ケガをした先輩捕手に代わり、試合前のシートノックに入れと言われた。人数あわせのつもりの監督を驚かせてやるか。ちょっと本気を出して二塁までピュッと投げたら「明日から毎日入れ」。新チームの秋には背番号をもらってレギュラーになった。打順は6番で「なんで4番じゃないの」と不満だった。「下級生の4番は過去にいない」というのが理由だったが、寮での雑用がいくらかでも軽減されたのは助かった。

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