鉄道500kmの地震被害を1度に予測

2015/8/11付
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日経コンストラクション

鉄道総合技術研究所は、長大な鉄道構造物の巨大地震による被害を予測する「鉄道地震災害シミュレーター」を開発した。新幹線の路線といった数百キロメートルにわたる構造物や地盤を対象に、1度に震動解析することが可能になった。

鉄道地震災害シミュレーターで予測した構造物被害の結果を地図上にプロットした。赤色は高架橋が落下する可能性のある甚大な被害を、緑色は鉄筋コンクリート構造物にひび割れが入っている程度の被害を表す(資料:鉄道総合技術研究所)

鉄道地震災害シミュレーターで予測した構造物被害の結果を地図上にプロットした。赤色は高架橋が落下する可能性のある甚大な被害を、緑色は鉄筋コンクリート構造物にひび割れが入っている程度の被害を表す(資料:鉄道総合技術研究所)

鉄道構造物は、一部でも被災するとその線区での運行が不能になる。東日本大震災では、数百キロメートルにわたる範囲が揺れ、多くの鉄道が被害を受けた。今後起こり得る南海トラフ巨大地震などに対して、線区全体で被害を予測したいという鉄道事業者の要請は増えている。

開発したシミュレーターでは、三つの段階を踏んで予測する。第1段階では、地震波が地中をどのように伝播するのかを予測。そのために、今後の想定地震と既往地震の断層位置や規模といった情報が必要になる。

第2段階では、予測した地震波を使い、地盤の厚さ、強度などの地盤情報を基に、地表面の揺れの程度を解析。そして最後に高架橋などの構造物の諸元と地表面の揺れから、構造物の被害を予測する。

鉄道地震災害シミュレーターのイメージ。地震動と地盤の揺れ、構造物の揺れの三つの予測が可能になる(資料:鉄道総合技術研究所)

鉄道地震災害シミュレーターのイメージ。地震動と地盤の揺れ、構造物の揺れの三つの予測が可能になる(資料:鉄道総合技術研究所)

従来、鉄道沿線全体の地盤や構造物を対象にした大規模な解析は、モデル化に多大な労力を要するので、現実的ではなかった。例えば、橋脚1基をモデル化するだけでも数日を費やしていた。

鉄道総研は、地盤や構造物を高速で自動的にモデル化する技術を開発。線区全体のモデル作成に要する時間の削減に成功した。

■M9級の地震波の伝播予測は1日程度

スーパーコンピューターの使用によって、解析時間も大幅に削減できる。各フェーズの解析時間は規模によって異なるものの、おおむね1日程度で完了する。例えば、地震動の予測では、スーパーコンピューターを使えば、M(マグニチュード)7級では約3時間、M9級では1日程度で、それぞれ伝播経路などを解析する。

鉄道延長500km、高架橋5000基程度を三次元FEMモデルで詳細に解析した場合、スーパーコンピューターを使用すれば構造物の被害状況予測は1日程度で完了する。

シミュレーションの検証結果によると、地震動については震度階級で±1程度の誤差で、過去の地震動を表現できた。構造物の被害予測についてもおおむね再現できることを確認している。

計算結果は、写真の地図上に被害別に色分けしてプロットするなど、分かりやすく可視化できる。

鉄道総研は今後、鉄道事業者からの被害予測の要請に応じて、シミュレーションの仕事を請け負う。将来は、一部の機能をインターネット上で活用できるようにする方針だ。

鉄道地震災害シミュレーターで予測した構造物被害を三次元で可視化。ひび割れや鉄筋が露出してはみ出している状況が分かる(資料:鉄道総合技術研究所)

鉄道地震災害シミュレーターで予測した構造物被害を三次元で可視化。ひび割れや鉄筋が露出してはみ出している状況が分かる(資料:鉄道総合技術研究所)

(日経コンストラクション 真鍋政彦)

[ケンプラッツ 2015年8月11日掲載]

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