晩成型、「無伸展」走法で開花 陸上短距離・高瀬慧(上)

2015/8/15 6:30
共有
印刷
その他

近年、日本の陸上男子短距離は早熟の選手が目立ってきた。2012年に大学2年で100メートルを10秒07で走った山県亮太(セイコーホールディングス)に、13年に高校生で日本歴代2位の10秒01を出した桐生祥秀(東洋大)。そんな彼らの活躍を横目に開花を待ち続けてきたのが高瀬慧(26、富士通)。昨年から好結果を積み上げ、けがで伸び悩む桐生らを抑えて第一人者の地位に上り詰めた。

伊東や高野ら歴戦の名選手と同じく、高瀬(中)も大器晩成タイプといえる

伊東や高野ら歴戦の名選手と同じく、高瀬(中)も大器晩成タイプといえる

昨春から急成長、200メートル歴代2位

昨年4月の織田記念国際が飛躍への第一歩だった。100メートルを10秒13で走り、山県らを抑えて優勝。リレーのみの出場予定だった同年秋のアジア大会(韓国・仁川)は太ももの故障で欠場した桐生に代わって急きょ100メートルに出場、10秒15で銅メダルを獲得した。

今年も成長は止まらない。5月のセイコー・ゴールデングランプリ川崎は10秒09の自己ベストで2位。同月の東日本実業団選手権は200メートルを日本歴代2位(当時)の20秒14で優勝。伊東浩司の100メートルの10秒00、末続慎吾が200メートルで持つ20秒03の日本記録の更新も視野に入ってきた。

タイム向上の要因が「膝を伸展させない走り」を身につけつつあること。接地した足が地面を離れるまで一定の角度で曲がった状態を保つ走法だ。順大時代からの師匠の佐久間和彦(順大陸上競技部部長)によると、足が地面を離れる際に膝が伸びていると次の接地までにかかとが円を描くような動きになり、時間のロスにつながる。膝が曲がったままだとかかとを尻に向かって直線的に引き上げられ、速いピッチにつながる。

速い選手ほど強く地面を蹴り、膝が伸びているイメージがあるが、高瀬は「走りで一番力を加えなければいけないのは足を地面に着くところ。そこで力を加えることは終わっていて、それ以上キックしても意味がない」と説明する。

必要な筋力つき、重ねた経験も生きる

走法の実現に必要な筋力がついたことが大きい。最近2年間は60メートルの砂場をそりを引いて走るトレーニングを重ねてきた。重さ10~15キロのそりを引こうとすると自然に上半身が前傾し、膝が曲がった状態を保てる。走法の習得と筋力向上が見込める格好の練習法。今も試合で膝が伸びることはあるものの、「無伸展」というよすがを得た自信が好結果につながっている。

順大での優勝は4年の関東学生対校選手権の400メートルくらい。富士通入社当初も目立った活躍はなく山県らの陰に隠れていたが、焦りはなかった。「経験が生きて記録が出ると思っているので。経験という積み重ねが今、少しずつ形に表れてきているのだと思う」

伊東が1998年に10秒00をマークしたのは28歳の時。高野進は91年に30歳で400メートルの日本記録(44秒78)を打ち立てた。歴戦の名選手と同じく、高瀬も大器晩成タイプといえる。

今月22日開幕の世界選手権(北京)は来年のリオデジャネイロ五輪の試金石。走り同様に力強いステップを踏みたいところだ。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊8月10日掲載〕

電子版の記事が今なら2カ月無料

共有
印刷
その他

関連キーワード

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]