四十肩・五十肩 強い痛みには抗炎症薬、漢方も有効 - 日本経済新聞
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四十肩・五十肩 強い痛みには抗炎症薬、漢方も有効

なんとなく肩が痛いと思ううちに痛みがだんだん強くなり、やがて肩全体が硬くなって、腕が十分に動かせなくなる「四十肩・五十肩」。自然に治る病気ではあるが、放置すると数年にわたって症状が続くことも珍しくない。早く治すには肩の状態に合った治療やケアをすること。そのポイントを3回に分けて紹介する。今回は痛みの強い「炎症期」の治療について見ていこう。

四十肩・五十肩の治療は「炎症期」と「拘縮期」で異なる。「痛みの強い炎症期は、薬で痛みを緩和することが重要。そうすれば肩を動かしやすくなる」と日本医科大学千葉北総病院整形外科の橋口宏部長は話す。

痛みを鎮める薬はたくさんある。一般にまず用いられるのは、非ステロイド性消炎鎮痛薬と筋弛緩薬ののみ薬を併用する方法だ。さらに、消炎鎮痛効果のある外用薬が加わることもある。「痛みが強い人には、最初から患部にステロイド薬を注射するケースも」と橋口部長。

夜間痛で眠れない人には催眠鎮静薬、筋緊張や不安が強い人には筋弛緩作用を持つ抗不安薬なども用いられる。これらの薬で効果が得られない場合は、脳に作用して痛みを緩和するアセトアミノフェンと麻薬成分のトラマドールを配合した疼痛治療薬も選択肢になるという。

漢方薬も有効な選択肢

女性の場合、漢方薬も選択肢の1つだ。「いくつもの生薬からできているので、1つの薬で色々な症状に対応できる。鎮痛薬をのむと胃腸障害が出る人や、冷え、むくみ、肩こりなどの不定愁訴を同時に持っている人には特にお薦め」と橋口部長。体の状態に合った薬を選ぶと、切れ味よく効くという。

代表的な薬は二朮湯(にじゅつとう)だ。6カ月以上痛みが続いた患者13人に二朮湯をのんでもらった研究では、全員の痛みが改善した。研究を行った愛知医科大学医学部学際的痛みセンターの新井健一准教授は「保険適用で処方できるので、担当医に処方をリクエストしてみて」と薦める。

一方、運動療法はこの時期、まだ早い。「強めのストレッチを行うと、逆に痛みが強くなる」(東北大学病院リハビリテーション部の理学療法士である村木孝行さん)からだ。むしろ痛みが出ない範囲で、筋肉をしっかり動かしながら日常生活を継続することが重要という。

肩まわりをゆるめるマッサージにも取り組もう。「炎症期は痛みに対する無意識の防御反応として、肩や背中の筋肉が緊張する。そのせいで肩全体がカチカチに凝って痛んでくるが、それを緩和できる」と村木さん。

肩の付け根から胸に広がる大胸筋、肩甲骨を動かす背中の筋肉、肩から上腕に伸びる筋肉がそのターゲット。背中はボールのついた肩たたきなどでもんでもいいが、それ以外はその部位の力が抜けるように優しくさするか、軽く圧そう。

この人たちに聞きました

橋口宏さん
日本医科大学千葉北総病院整形外科部長。専門は肩・肘関節外科、スポーツ医学。「重要なのは診断。五十肩が長引く人の中には腱板断裂などの病気が隠れている場合がある。まずは整形外科を受診してほしい」
村木孝行さん
東北大学病院リハビリテーション部理学療法士。専門は肩関節疾患、肩の運動学。「肩を大きく動かすためには体幹の柔軟性も必要なので、体をねじったり、わきを伸ばすストレッチも薦めている」
新井健一さん
愛知医科大学医学部学際的痛みセンター准教授。麻酔科医。専門は慢性疼痛、がん性疼痛、漢方治療。「漢方薬は西洋薬に劣らない効果がある。こじれた五十肩にも効果があるが、早めに使うことをお薦めしたい」

(ライター 小林真美子)

[日経ヘルス2015年9月号の記事を再構成]

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