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FRB情報漏洩後のFOMC

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の特徴は、米連邦準備理事会(FRB)のサイト上に掲載された声明文より、7月24日にリリースされた以下の「釈明文」のほうに注目が集まったことだろう。

「6月29日に意図せざるうっかりミスがあった。FOMC参加者ではなく、FRBスタッフの経済予測値が含まれるファイルをサイト上で公開してしまった。既にリリースしてしまったので、本日、あらためてここに公開する」

誤って公開したデータは、実質GDP成長率、インフレ率、失業率など多岐にわたる。特に市場が注目したのが、米フェデラルファンド(FF)レートの予測値だ。FOMCの声明文から市場が必死に読みとろうとしている利上げの数値を、FRBスタッフはどのように見ているか、ずばりあらわになってしまった。

問題は3か月ごとに発表されるFOMC参加者が予測するFFレートの数値、いわゆる「ドットチャート」との間にかなりの差が見られる点だ。

添付のグラフに表したごとく、FOMC参加者の予測中央値より、FRBスタッフの予測値のほうがかなり低い。FOMC参加者は0.63%(2015年)、1.625%(16年)、2.875%(17年)。一方、FRBスタッフは0.35%(15年)、1.26%(16年)、2.12%(17年)となっている。

15年が0.35%ということは、FRBスタッフは年内利上げを1回予測していると解釈できる。FOMC声明文はあいかわらず、言質を取らせない表現に満ちていたが、漏洩データはFRBスタッフの本音を明確に示唆した。

かといって、9月利上げと決めつけられないのが悩ましいところ。背景には市場が抱えるトラウマがある。

2013年9月16日のNY証券取引所の様子(筆者撮影)

それは13年9月に開いたFOMCでの逆転劇。当時のバーナンキFRB議長の発言から、市場は9月に量的緩和縮小、いわゆる「テーパリング」の開始と読んでいた。ところが、フタをあけてみれば、テーパリングは完全にスル―され、市場は見事に肩透かしを食った。外為市場では意表を突かれたファンドが損切りの円買い戻しに走り、円相場は1ドル=99円台から一気に97円台まで急騰した。筆者はその当日、NY証券取引所のフロアに居合わせたので、市場のろうばいぶりを鮮明に記憶している。

このトラウマが市場には依然くすぶるので、今回の利上げ9月説といわれても、にわかには反応できないのだ。

FRB内部でも割れる利上げ観測、そして、市場のトラウマ。

9月に利上げになっても、ならなくても、市場にはサプライズとなりそうな展開だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://gold.mmc.co.jp/toshima_t/index.html
ツイッター(http://twitter.com/#!/jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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