サッカー独代表の戦術、名は広がらずとも影響大きく
スポーツライター 木崎伸也

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2015/7/30 6:30
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ドイツが「プログレッション」を重視したサッカーで、見事に14年W杯を制したことで、この戦術用語は流行語になる……と思われた。しかし、ドイツ人たちは、それほど戦術に興味がないらしい。メディアがこの用語に飛びつかなかったため、それ以降ニュースで目にすることはほとんどなくなった。

日本ではFC今治の岡田武史オーナーが目をつけ、クラブの指針のひとつにしているが、本国ドイツではお蔵入りしつつある。

とはいえ、その概念が消えてしまったわけではない。用語自体ははやらなかったが、「カウンター×ポゼッション=プログレッション」というスタイルはドイツリーグにおける新たなスタンダードになりつつある。

レバークーゼン、アウクスブルク、ホッフェンハイムといった若手監督が率いるチームは、まさに「プログレッション」を実践し、昨季のドイツリーグで大躍進した(それぞれ4位、5位、8位)。

速攻が可能かどうか、より直感的に

「プログレッションサッカー」の台頭により、サッカーにおける「定義」も変わり始めた。

たとえば従来、サッカーの局面は次の4つに分けられてきた。

【従来の分け方】

(1)マイボールのとき

(2)相手ボールのとき

(3)ボールを失った瞬間

(4)ボールを奪った瞬間

3と4はいわゆる攻守の「切り替え」の瞬間だ。

だが最近ドイツでは、こういう分類ではなく、次の分け方が一般的になりつつある。

【最新の分け方】

(1)マイボール&敵の陣形が整っている

(2)マイボール&敵の陣形が崩れている

(3)相手ボール&自分たちの陣形が整っている

(4)相手ボール&自分たちの陣形が崩れている

従来、攻守が入れ替わる「トランジッション」が重視されてきたのは、ボールを奪った瞬間はチャンスになりやすい、と考えられていたからだ。もちろんそれは間違いではないが、例外もある。もしボールを奪ったときに相手の陣形が整っていたら、速攻で崩すことは難しい。

そこで「ボールの保持」の有無に加えて、「組織の秩序」の有無を盛り込んだのが新しい分類法だ。これによって「速攻できるか・できないか」が、より直感的にわかりやすくなる。

相手陣形が整っていたときの攻め方は

相手の陣形が崩れているときは、どんな状況だろうと、ゴールに最短時間で迫ればビッグチャンスになりやすい。相手のパスをカットしたとき、シュートのリバウンドを拾ったとき、セットプレーからのカウンターなど、いろいろな状況がありうる。

逆に陣形が整っていたら、ただの速攻では崩すのが難しくなる。いわゆる遅攻をせねばならず、別の手が必要だ。

こういう分類をすることで、前に行くべきか、行かざるべきかを判断しやすくなる。「前への意識」が前提にあり、まさに「プログレッション」的思考だ。意味なくボールをまわす「ポゼッション」とは一線を画す。

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