サッカー独代表の戦術、名は広がらずとも影響大きく
スポーツライター 木崎伸也

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2015/7/30 6:30
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ドイツで、はやりそうで、はやらなかったサッカーの戦術用語がある。それは「プログレッション(Progression)」。「ポゼッション(Possession)」を意識した用語で、発案者はドイツ代表のスカウト主任、ウルス・ジーゲンターラーだ。

このヨアヒム・レーウ監督の右腕は、2014年ワールドカップ(W杯)の開幕直前、ドイツ代表が「ポゼッション」から脱皮し、「プログレッション(前進)」に取り組んでいることをメディアの前で宣言した。

ポゼッションを進化、縦に速く攻める

「ボールを保持し続けるには、絶え間ないアクションが必要だ。しかし、ブラジル北部の暑さの下では、動けば動くほど体力を消耗する。ドイツはポゼッションサッカーによって大きく前進したが、それを見つめ直すことが求められた。新たに導き出されたのは、単なるポゼッションを進化させた、スピーディーで常にゴールに向かうポゼッションだ」

「私たちはこれを『ボールプログレッション』と呼んでいる。単なるボールポゼッションはブラジルでは正しいレシピにはならない。ボールを失わないようにしながらも、縦に速く攻めることが重要だ」

レーウが04年に、ユルゲン・クリンスマン監督からの誘いでドイツ代表のコーチになって以来、ドイツは戦術の近代化に挑み続けてきた。

まずは3バックに慣れていた選手たちに4バックのラインディフェンスをたたき込み、全選手にボールの動きに応じて立ち位置と体の向きを修正することを教えた。いわゆる「ボールオリエンテッド」の守備である。

06年W杯後、レーウがコーチから監督に昇格すると、次は攻撃のモダン化が始まった。パスを出したら前に走る「パス&ゴー」を徹底し、1人当たりのボールタッチ時間の短縮にこだわった。

その結果、10年W杯で低い位置からのカウンターがおもしろいように決まり、イングランドやアルゼンチンから4点を奪って、2大会連続で3位になることができた。

独リーグの新たなスタンダードに

レーウはそれで満足せず、スペイン代表とバルセロナをお手本にポゼッションサッカーにチャレンジする。エジルら若手の技術を生かし、どの国と対戦しても敵陣に押し込めるようになった。だが皮肉なことに12年欧州選手権では、準決勝でイタリアのカウンターに沈み、タイトルには手が届かなかった。

そういう紆余(うよ)曲折を経てレーウたちが行き着いたのが、「カウンター」と「ポゼッション」を融合させた「プログレッション」なのである。速いだけでも、遅いだけでもない。状況に応じて攻撃のスピードを変化させるサッカーだ。

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