2019年5月22日(水)

触感の魔力 携帯・食…「リアル」が人気

(1/2ページ)
2015/8/2 6:30
保存
共有
印刷
その他

押す、触れる、握る。「触感」がマーケティングの分野で注目されている。情報があふれる中で、消費者はものやサービスを選ぶときに無意識のうちに触ったときの感触や感性を重視するようになってきた。新世代の携帯電話「ガラホ」や手づかみレストラン、万年筆……。ヒット商品から時代が求める触感を探ってみた。

■あふれる情報、感覚で選択

テーブルに広げたカニやエビなどを手づかみで食べる(東京都新宿区のダンシングクラブ)

テーブルに広げたカニやエビなどを手づかみで食べる(東京都新宿区のダンシングクラブ)

"新世代の携帯電話"として今春お目見えしたガラホ。ガラホとは中身はAndroidのスマートフォン(スマホ)とほぼ同じながら、見た目や操作性は昔ながらの携帯電話。時代遅れとも見えるが「想定以上の売れ行き」(KDDI)だ。

「キーを押した感覚がないと、何となく落ち着かなくて」。岡山県に住む山本宗尚さん(38)は「ガラホ」を片手にこう話す。大阪市在住の女性会社員(30)も買い替えの際、スマホではなくガラホを選んだ。「今は何でもバーチャルなやりとり。送信ボタンを押した時に『送った』という実感が欲しかった」

人気の理由の一つが触感だ。「0.2ミリ、150グラム」。KDDIにガラホを供給するシャープ。この2つの数字に触感で消費者をひきつけるカギがある。0.2ミリはキーにつけた傾斜の頂点の高さ。150グラムは押すときに必要な力。消費者への調査などから最適な数値をはじきだした。

持ちにくい、書きにくいという理由で敬遠されてきた万年筆。もっと普及させようと、パイロットコーポレーションの渡辺広基社長は「小学生でも持てるように角張った鉛筆みたいな形がいいのではないか」と考えた。

握りやすさを追求し、2013年10月に発売したのが「カクノ」(税込み1080円)。軸は六角形、グリップの形状は丸みのある三角形。親指、人さし指、中指が自然と正しい位置にフィットするように設計した。

「握りやすい」と、これまで万年筆を使ったことがなかった人が飛びついた。インターネットでのコミュニケーションが全盛期の中で、15年5月時点で計140万本を販売。万年筆としては異例の大ヒットとなり、20年ぶりに工場を増強した。

指で触れたり押したりして「何かをやった」という実感を得る――。こうした意識は「食」の世界にも求められている。 東京・新宿のシーフードレストラン「ダンシングクラブ」。テーブルに敷かれた白い紙の上に、店員が熱々のムール貝やエビ、カニなどをビニールの中から出す。待ってましたとばかりに女性たちが手づかみでかぶりつく。

友人らと訪れた東京都練馬区に住む内田怜奈さん(20)は「野性的でおいしい。『生き物を食べてる』と指先で実感できるのも刺激的なの」と興奮気味。机の上の魚介はあっという間になくなった。

シャープのガラホはキーの形状を工夫して押し応えを重視した

シャープのガラホはキーの形状を工夫して押し応えを重視した

同店は昨年10月にオープン。デザートなど一部を除くほとんどのメニューを手で食べる同店には「リアルな触感」を求め予約が殺到する。運営するミールワークス(東京・港)によると、最初はお皿で提供していたサラダも客が勝手に手で食べ始めたため、手づかみ方式にした。

「手食」を広める「日本手食協会」(東京・世田谷)理事長の佐谷恭さんによると「香りをかいで味わうのと同じように、触覚でも料理の温度や味も感じられる。手で触れながら味わうことで、感覚が1つ増える」。

インドやスリランカ料理の専門店でも、素手で食べられる店は増加中。五感で味わうと昔からいうが、これまで影をひそめていた触感がにわかに台頭してきた。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報