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ロボットだらけのホテル、ハウステンボスで近未来体験

"ロボットホテル"探訪記(上)

ITpro
ハウステンボスが2015年7月17日に開業した「変なホテル」。快適性と世界最高水準の生産性を両立させるため、様々な技術を駆使した革新的なホテルだ。特に面白いのは、人件費を通常の4分の1に抑えるため、フロントやポーターなどの業務にロボットを導入していること。とはいえ、"ロボットホテル"などこれまでなかっただけに、ピンとこないだろう。一体どのようなホテルなのか。開業前の7月15日に開かれた、完成お披露目記者会見に参加した記者が体験レポートを2回にわたってお届けする。

「変なホテル」は、長崎県佐世保市にあるハウステンボスの敷地内に建設された、72部屋(第1期)を有する宿泊施設。人件費、建設費、光熱費の三つを抑制する工夫を凝らした「世界初のローコストホテル」(ハウステンボスの澤田秀雄社長)である。

2階建てのその外観は、特段変わったところはない(写真1)。だが、中に入ると他のホテルにはない、様々な工夫を目にすることになる。

ホテルに入って目を奪われるのが、左手にあるフロントだ。そこには3台のロボットが宿泊者を出迎える。カウンターをはさんで対話する相手は、女性型ロボットや恐竜型ロボットだ(写真2)。

「女性型はまだしも、なぜ恐竜のロボットがフロントに?」。外見がリアルな恐竜が帽子と蝶ネクタイをしてフロントに立っている様子に、ここが「変なホテル」であることに改めて気付かされる。

まずはチェックイン。女性型ロボットの前に立つと、センサーでそのことを感知し、女性型ロボットが話し始める。「いらっしゃいませ。変なホテルにようこそ。チェックインをご希望のお客様は1のボタンを押してください」。

お辞儀をしたり、口やまぶたを動かしたりしながら話す女性型ロボット。その動きは、思っていたよりもスムーズで、ほとんど違和感はなかった。

女性型ロボットとはボタンで会話

フロントのカウンターの上には、1~3と番号が振られたボタン付きの装置がある。ロボットの案内に従ってボタンを押す(写真3)。すると、ロボットは「宿泊者名簿に氏名などを記載してください」「右手にある端末でお客様の名前を入力してください」などと案内してくれる。

カウンターに備え付けてある専用紙に自分の氏名などを記入し、それを投函する。その後、右側に移動して、カメラやタッチパネルの付いた端末の前に立つ。

タッチパネルには「チェックイン」と書かれたボタンが画面に表示されているので、それを押す。その後は、画面の指示通りに氏名を入力(写真4)。すると、非接触型のICカードキーが発行された(写真5)。

宿泊者がカードキーを忘れたり、紛失したりすることもある。そんな場合に備えて変なホテルは、カードキーがなくても入室できるよう、顔認証システムを導入している。顔画像の登録は、ICカードキーを発行するのと同じ端末で行う。

直前に発行されたカードキーを読み取り部分にかざしながら、カメラの前に立って、顔画像を登録。これで自分の顔をルームキーとして使える手続きは完了だ。

顔画像を登録したくないという宿泊客もいるだろう。その場合は、顔画像を登録しなくても構わない。その際は、ICカードキーだけを使うことになる。

これまでの端末の操作については、画面の指示をきちんと読めば、特に難しいことはなかった。

これでチェックインは完了だ。再び女性型ロボットの前に立ってみると、「操作が完了したら3のボタンを押してください」と話す。ボタン3を押すと、「以上でチェックインは終了です。ありがとうございました。滞在をお楽しみください」と言ってロボットがお辞儀をした。これで部屋に入れる。

人型ロボットは本当に必要なのか

チェックイン作業をすべて終えてみて一つの疑問が浮かんだ。「この女性型ロボットと会話しなくても、カメラやタッチパネルの付いた端末を操作するだけでチェックインできてしまうのではないだろうか」。

この点をホテルの従業員に尋ねてみた。答えは「宿泊者名簿への記入は必要なので、女性型ロボットとのやり取りは必要です。ただしそれだけでチェックイン業務を完結させているのではなく、横にある専用端末も使ってもらわないとなりません」。フロントロボットはチェックイン業務の案内役という位置づけである。

極論すると、コスト削減だけを突き詰めるならば、「わざわざフロントに人型のロボットを設置する必要がないのでは」と思う。しかし、このロボットたちがフロントにいなかったらどんな光景になるかを想像してみると、端末だけが並んだ無味乾燥な無人フロントの姿が浮かび上がってくる。

これでは、いかにローコストを追求したといえども、顧客を引きつけられるとは思えない。

なるほど。ローコストを追求しすぎて無味乾燥なホテルになってしまっては、顧客にとって"つまらない"。ハウステンボスで遊んでウキウキした気持ちになっていたのに、ホテルに着いた途端にその興がさめることになってはならない。だからこそ、このフロントにエンタテインメントとして女性型ロボットや恐竜型ロボットを配置する意味があるのだと分かった。(写真6)。

澤田社長は変なホテルについて、生産性だけでなく、快適性も同時に追求すると説明している。このフロントを最初に見たときの「何だこれは?」という驚きやワクワク感。それらが快適性につながるというわけだ。

女性型だけでなく、恐竜型のロボットを配置した意味もそこにあるのだろう(写真7)。後から聞いた話では、プロジェクトチーム内にも「いくらなんでも恐竜はやり過ぎだろう。やめたほうがよいのではないか」という意見があったという。それでも最終的に「面白いじゃないか」と採用する方針を貫いたそうだ。

クローク担当はアーム型ロボット

宿泊者が荷物を預けたりするクロークも、変なホテルはユニークだ。変なホテルのクロークは、ホテルに入ったすぐ正面。ショーケースのようにガラス張りの小部屋になっている。

このクロークの中には、荷物を入れる棚とクロークロボットがある。クロークロボットはアーム形状だ。クローク内の様子はガラス越しに外から見えるものの、顧客は中に入れない(写真8)。

クロークには、荷物の預け入れと取り出しのための小窓がある。ただし通常、この小窓は金属製の扉で閉じてある。

荷物を預ける際は、専用のタッチパネル端末を操作する。するとクロークロボットが荷物を入れるための専用ケースを棚から取り出し、小窓に運ぶ。小窓の扉が開く。そこから専用ケースに、預けたい荷物を置く(写真9)。

再びタッチパネル端末を操作して扉を閉める。すると、クロークロボットは荷物の入った専用ケースを持ち上げ、元の棚に荷物を収納する(写真10~写真12)。

このクロークロボットには、フロントロボットと同様のエンタテインメント性を感じた。

荷物を単にしまうだけであれば、クロークをガラス張りにして中の様子を見せる必要はない。あえて、ロボットの動きを見せることで通常のホテルとの違いを演出しているのだ。

クロークロボットは荷物をロッカーに収納し終えると、記者の方を向いてアームを左右に振る動作をした。これは「バイバイ」を意味しているという。思わず笑ってしまった。(続く)

(日経コンピュータ兼日経ITイノベーターズ 矢口竜太郎)

[ITpro 2015年7月21日と同22日付の記事を再構成]

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