2018年12月18日(火)

ジョホールバル 空白の大地はフロンティアの匂い
シンガポール=編集委員 太田泰彦

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2015/7/26付
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シンガポールに隣接したマレーシアの町ジョホールバルは、一昔前の西部劇の映画のような「フロンティア」の匂いがした。一獲千金の富を求めて開拓地へと急ぐ人間の群れ。勇敢な冒険家もいれば、カネへの嗅覚が鋭い商人もいる。探鉱や土木で腕を振るう技術者もいる。中には荒くれ者も交じっている。外の世界から次から次へと訪れる新参者と、日々刻々と変貌していく町並みに、地元の民は戸惑い、時には怯えながらも、これから町が大きくなっていくかもしれない期待に胸を膨らませている。

「OK牧場の決闘」「荒野の用心棒」など往年の名画で描かれたのは、埃っぽく、汗臭い光景だった。乾燥した北米の開拓地と違ってマレーシアの空気は湿っているけれど、同じ雰囲気が漂っているのはなぜだろう。おそらく集まってくる人々が醸し出す独特の表情のせいではないか。たとえば三井物産がマレーシア政府系企業との共同出資の開発会社に送り込んだ2人の駐在員、岡村哲夫氏と石田一明氏である。

■巨大プロジェクト「イスカンダル計画」

イスカンダル計画の完成予想図

イスカンダル計画の完成予想図

「町づくりは順番こそが大事なのです」。ジャングルやゴム畑を切り開いて地表が露出した広大な大地を指さして、彼らはそう何度も強調した。開発する総面積は東京都とほぼ同じというから、とてつもなく巨大なプロジェクトである。2本の橋でつながる隣国のシンガポールが対岸に見える。そのシンガポール一国より大きな都市を作る「イスカンダル計画」だ。

土地はいくらでもある。とはいえ、手当たり次第に次々と施設を建設すればよいというわけではない。一気に大量の集合住宅をつくれば、供給過多で価格が崩れるかもしれない。そもそも働く場所や遊ぶ場所がなければ人は集まらないだろう。

ローマは一日にして成らず。都市は一朝一夕には築けない。三井物産が開発を手がける地区では、最新鋭の医療機器と人材を集めた高度医療の病院が完成を目前に控えていた。さらにテーマパークの「レゴランド」、英国の名門パブリックスクール「マルボロ・カレッジ」が初めて海外に開設した分校もある。整備された工業団地には、精密機械、食品、電子部品などのメーカーが入居し始めていた。

ここでは、働く、遊ぶ、学ぶ、住む――という人の営みの全方面に目配りしながら、順序よく施設を造っていく考え方が貫かれている。さまざまな都市機能が有機的に連結したときに、はじめて開拓地に生命が宿り、新興の町としてブランド価値を高めながら発展していくはずだ。2025年までに人口300万人の巨大都市を完成するというマレーシア政府の計画目標は、おそらく達成できないだろう。さら10年、20年、いや、もしかしたらあと半世紀ほどの長い年月がかかるかもしれない。

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