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広島・福井、取り戻した輝き 黒田助言でたくましく

斎藤佑樹(日本ハム、27)、大石達也(西武、26)、福井優也(広島、27)の早大トリオが、そろってドラフト1位で指名されて話題になったのが2010年秋。即戦力として期待された3右腕は最近めっきり影が薄くなっていたが、福井は今季、先発の役割を果たして輝きを取り戻している。復活の背景にはチームの精神的な支柱、黒田博樹(40)の助言があった。(記録は19日現在)

1年目に「怖いものなし」で8勝も…

前半戦最後の登板となった12日の中日戦(ナゴヤドーム)。福井は打たせて取る投球でゴロの山を築き、「後半戦にいい形で入れる」と納得の8回4安打無失点の好投を見せた。打線の援護に恵まれずに白星はつかなかったが、今季を象徴する安定した投球内容だった。

開幕から先発ローテーションの一角に加わり、ここまで11試合に投げて6勝2敗、防御率3.22。規定投球回数には届いていないが、6回以上投げて自責点3点以内の「クオリティースタート」は11試合中8試合で達成した。8勝(5敗)のエース前田健太(27)、6勝(4敗)の黒田、7勝(4敗)のクリス・ジョンソン(30)とともに12球団トップクラスの強力な先発投手陣を形成している。

福井の今季成績(19日現在)
日付相手勝敗自責
4・5中日
4・17中日
5・3ヤクルト2 2/3
5・10阪神
5・17DeNA6 2/3
5・24ヤクルト
5・31オリックス7 1/3
6・7楽天
6・14ソフトバンク3 1/3
7・2巨人
7・12中日

岡山県出身。愛媛・済美高2年の時に、エースとしてチームを甲子園で春優勝、夏は準優勝に導くという輝かしい実績を残した。巨人から05年高校生ドラフトの4巡目で指名されたものの辞退、1年の浪人を経て早大に入学した。東京六大学リーグで通算11勝を挙げ、周囲の期待に応えてプロ1年目に8勝(10敗)をマークした。1年目は遮二無二突き進み、「何も知らず、無敵というか怖いものなしだった」と振り返る。

「試合つくることに集中しろ」と黒田

だが、プロの世界を知っていくことで、2年目以降は暗転する。「いろいろ勉強してわかるようになったら、怖さが出てきた。(自分の力は)こんなものじゃないと思いながらもダメだった」。球威のある150キロ近い直球をはじめ、スライダーやフォークなど球自体はいいものを持っているのに生かしきれない。1年目にリーグワーストの68四球を与えたように制球に難があり、四球から崩れる場面が目についた。

福井の年度別成績
試合防御率
201127104.12
12174.30
13128.69
14114.35
15113.22

12年は2勝、13年は1勝も挙げられず、14年は後半に入って活躍したものの4勝どまりだった。「毎年毎年、勝負と言っているけれど、結果で示したい」。危機感を胸に復活を期した今季。大リーグから8年ぶりに広島に復帰した黒田にアドバイスを求めると、その言葉が胸の奥に突き刺さった。

「120点を目指しているからダメなときはダメなんだ。投手に完璧はないし、100点満点を目指さなくてもいい。試合をつくることに集中しろ」

今季は右足首などに故障を抱えながらもマウンドに立ってきた黒田は「ここ何年か100%の状態でマウンドに上がれることはない。いいときばかりではないし、欲をいえばきりがない」と語ったことがある。制球が定まらない球種があったとしても、逆にボール球として利用しながら、そのときそのときの状況に応じて修正を重ね、自分が今できるベストを尽くすのが黒田の流儀。「完璧なピッチングをめざしていた」という福井は、百戦錬磨のベテランの助言が身に染み「精神的に安定してきたというか、楽に考えられるようになった」と話す。

マウンドで自信、ピンチにも動じなく

今季の福井はマウンド上での自信に満ちた姿が印象的だ。ストライク先行で強気に立ち向かっていく。6月7日の楽天戦(マツダスタジアム)では、バッテリーミスから1イニングに暴投を3つ記録したが、恐れることなくフォークを投げ続けた。昨季から技術面で変えたことはないという。「気持ちがプラスになって、ストライクを取ることが精いっぱいではなくなった」。くすぶっていた右腕が気持ち一つでよみがえった。

ちょっとやそっとのことでも、動じなくなった。たとえば走者2人を背負うようなピンチの場面なら「1点ならOK」。無死満塁の大ピンチなら「2点までだったらOK」と割り切る。それまでなら最高の結果を求めるあまり、何が何でもゼロに抑えなくてはと自分を追い込み、それが力みにつながっていた。「やばい、やばいと。そう思ったら四球を出してしまって、またピンチになる」という悪循環に陥っていたが、今は「ピンチでも一個ずつアウトを取っていくしかない」とシンプルに考える。四球で自滅した姿は過去のものになりつつある。

1-0で競り勝った4月17日の中日戦(マツダスタジアム)では、1点リードの五回と七回にピンチを招いたが、「同点はOK」と割り切って無失点で切り抜けた。5月31日のオリックス戦(京セラドーム大阪)では、四回にT―岡田に先制ソロを浴びて均衡を破られたが、「まだ1点だと思って投げた」。その後は得点を許さず終盤の味方の逆転劇を呼び込んだ。今季、福井が口癖のように繰り返すのは「試合をつくる」という言葉。黒田の教えは、試合全体を俯瞰(ふかん)した投球につながり、白星にも結びついている。

KOされても開き直り精神で立て直し

もちろん全てが順風満帆にいくはずもなく、5月3日のヤクルト戦(神宮)は4失点を喫して3回持たずに降板。6月14日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では四回途中、今季ワーストの7失点でKOされた。チームは先発投手争いが激しい。次の試合で結果を残せなければ2軍降格もちらつくはずだが、そんなときでも「開き直りの精神」ですぐさま立て直した。「結局びびっても一緒だなと思って。同じ一日だったら思い切ってやろうと思えるようになったし、投げるんだったら楽しく投げたい」

安定した成績を残してはいるものの、現状は登板間隔が頻繁に空くなど、先発ローテーションの5、6番手扱いだ。ベンチの絶大な信頼を勝ち得ているとまではいえない。福井は「悔しい気持ちはあるけど、それを前に出したところで結局そこ(5、6番手)で投げるだけなので」と胸の内を明かしつつ、こう続ける。「僕は本当に投げるだけだし、チャンスがあるだけでいい」。苦しんだ3年間を乗り越え、一回りも二回りも精神的にたくましくなった右腕がいる。

(金子英介)

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