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イチロー フィールド

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球団の狙いピタリ イチローが促す若手の意識変化
スポーツライター 丹羽政善

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2015/7/20 6:30
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昔、マリナーズにマイク・カープという選手がいた。

2009年にメジャー初ホームランを放つと、試合後、手元に戻って来た記念ボールを見つめながらしばらくニヤニヤとしていた。そして、思いついたようにロッカーの椅子から立ち上がると、ボールとペンを手に、その年からマリナーズに復帰したケン・グリフィーJr.のところへ向かった。

「このボールにサインしてください」

これには、あの自由奔放な行動で知られるグリフィーもびっくり。「俺のか? これ、おまえが打った初めてのホームランボールだろ?」

当然の反応に見えたが、「構わない」とカープ。複雑な表情を浮かべながらグリフィーがサインしていたのとは対照的に、ボールを受け取ったカープは子供のような無邪気な笑みを浮かべた。

ロッカーに昔のイチローのユニホーム

あとでカープに「なぜ?」と聞くと、こう答えている。「だってグリフィーは、ずっと憧れの選手だったんだ。今、その選手と同じチームにいる。サインをずっともらいたいと思っていたんだけど、これだ!と思ってね」

それからしばらく、そのサインボールは彼のロッカーに飾ってあったが、今回、どうしてそんな古い話を思い出したかというと、先日、同じようなことがあったからだ。

前半戦も終わろうとしているある日の試合前、クラブハウスでディー・ゴードンと話していると、何気なく目を向けた先、隣のクリスチャン・イエリッチのロッカーに、マリナーズのユニホームがかかっているのが見えた。袖口のロゴは、紛れもなくマリナーズのそれ。その後、「それ、マリナーズのユニホームだよね?」と聞くと、イエリッチはニヤニヤしながら、ユニホームの背中をちらっとだけ見せ、さっと隠した。

背番号「51」。その上には、ICHIROの文字。もちろん、サイン入り。

予想はしていたが、まさか本当にマリナーズ時代のイチローのユニホームがあるとは。もう、売られてはいないはずだが、どうやって手に入れたのかと聞くと、「俺だって一応、大リーガーだぜ」とイエリッチはニヤリ。選手ならある程度、なんとでもなると言いたげだった。

サインが欲しいなら、ボールでもバットでもスパイクでも、イチローにお願いすれば、何でもしてくれるはずだ。マーリンズのユニホームなら、それこそいくらでも手に入る。しかし、なぜあえてマリナーズのユニホームなのか。

それを聞くとイエリッチは、「自分が子供の頃、見ていたのは、マリナーズのイチローなんだ」と言った後、こう続けた。「ファンになった時のイチローは、マリナーズの選手だったから」

イチローと同じスパイクで俊足に?

マーリンズのイチローはチームメートだが、マリナーズのイチローはファン。彼の中では区別があるようだ。ちなみにイチローがマリナーズでデビューした01年、イエリッチは小学生。テレビの前で、日本から来た初の野手に目を奪われていた。

別の形でイチローと接点を持つ選手もいる。先日、マーリンズのクラブハウスにいると、後ろから肩をたたかれた。振り向くと、マイク・モースが何も言わず、ニヤニヤしながら自分の足元を指さしている。はっと気づいたときにはもう、彼は扉の向こうに消えてしまったが、紛れもなくそれは、イチローと同じ「ビモロ」のスパイクだった。

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