戦後70年、特攻隊員「声の遺書」が伝える心情
学徒出陣で特攻隊員になった大学生が家族に「声の遺書」を残していた。家族に囲まれた平穏な暮らしから帰り道のない戦場へ――。レコードに録音された2分半の肉声からは国に殉じることを決意しながら、なお生と死の間で揺れ動く若者の心情が浮かび上がる。戦時下、録音機器は一般的ではなく隊員の音声記録は貴重だ。
音声を残したのは慶応大1年のときに出征し、人間魚雷「回天」の搭乗員になった塚本太郎さん(当時21)。1943年10月、学徒出陣の壮行式の後、銀座で広告関係の仕事をしていた父親のスタジオでレコードに別れの言葉をふき込んだ。塚本さんは45年1月21日、西太平洋のウルシー海域で敵艦に突っ込んだ。
レコードは戦後、12歳年下の弟、悠策さん(80)が亡くなった母親の遺品を整理していた際に見つけたという。
音声は、慶応大三田キャンパス図書館(東京・港)で開催中の戦争資料を集めた展覧会「慶応義塾と戦争3 慶応義塾の昭和二十年」で、8月6日まで公開している。