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新国立競技場、民間売却はいかが? 政府方針に思う
編集委員 北川和徳

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2015/7/17 6:30
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迷走する新国立競技場の建設で、政府は建設計画を見直す方向で調整に入った。かたくなな姿勢を変えたのはいいのだが、安保法案の採決強行による政権批判をおそれ、新国立では方針変更をアピールしようという狙いがあからさまなのが悲しい。政治に翻弄される五輪、スポーツという懐かしい構図が、久しぶりにこの国でよみがえった印象だ。

屋根950億円、スタンド1570億円

工期延長とデザイン変更の両案を検討するという。だが、ラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わせるのを諦めて工期を延ばすことで人件費などの経費を削っても、それほどの予算縮減にはならない。では、デザイン変更も決断するのか。その場合は2020年の五輪・パラリンピックに間に合うのかということが最大の懸念となる。安倍首相は10日の国会答弁で「(デザインを変更すれば)五輪に間に合わない可能性が高い」と述べている。政権の支持率低下だけを考えて、スケジュールを精査しないでそこまで踏み込めば、建設コストがいくら膨らんでも国家プロジェクトだからと暴走したこれまでと、無責任さにおいて大きな違いはない。

7日に日本スポーツ振興センター(JSC)が開いた有識者会議は儀式にすぎなかった。ただ、そこで示された数字が気になっている。屋根を支えるキールアーチがコスト増の元凶とされるが、内訳では屋根工区は950億円で、スタンド工区だけで1570億円もかかっている。スタンド部分だけで基本設計での総工費にほぼ匹敵するのだ。建設会社とどんな交渉をしているのだろう。コストが膨れあがった要因は、消費税増40億円、建設資材や労務費の高騰(25%と推定)350億円、新国立の特殊性765億円と示されただけ。本当は建設業者との交渉で積み上げた一つ一つの数字を明示してほしかった。

新国立の見直しの判断について、政府は建設会社や設計事務所も同席させて、基本設計から完工までのスケジュールはもちろん、予想される工事の細部の具体的な予算まで丁寧に説明してほしい。デザインを維持して経費を削る場合も、JSCではなく建設会社から、ここまで工費が膨らんだ理由をぜひ聞きたい。それをしないで政治的思惑だけで話を進めては、とても国民の理解を得られないと思う。

スポーツ施設が国家プロジェクト?

新国立をめぐっては「国家プロジェクト」という言葉を何度も聞いた。政治家や官僚、そしてスポーツ関係者も口にする。国の巨大事業であることは確かだが、スポーツ施設の建設を国家プロジェクトとまで言われると違和感がある。新国立が20年大会のメーン会場だから、こんな表現になるのだ。五輪は都市が開催するもので、国家プロジェクトになること自体がおかしいのだが、半世紀前の東京大会も今回も、日本の政府がそういう認識で五輪を考えているのは確かである。

結局、新国立競技場の建設=五輪開催=国家プロジェクトとなったことが、建設コストがここまで膨れあがった背景にある。国の事業になったことで、五輪を招致した東京都にメーン会場を用意する責任はなくなった。代わって当事者になったJSCは「国が決めた通りに建設するのが我々の仕事」(河野一郎理事長)としか考えていない。そして担当官庁である文部科学省は、土木事業ともいえるこんな巨大施設を整備した経験がない。コストがいくら膨らんでも、国家プロジェクトだから大丈夫と、関係者の誰もが甘い見通しを持っていた。

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