日本刀、世界に比類なき強さの秘密
神が宿る武器「日本刀」(2)

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2015/8/14 6:30
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■世界に比類なき存在

こうした要素を一つずつ抜き出してみれば、他国の刃物や刀剣類にも類似のものを発見することができる。けれど、これだけ理に適った要素がことごとく詰め込まれたものは、まず見当たらない。

河内國平作の大小刀と古原秀樹の蒔絵による拵。大小刀には禅語の「百花為誰開」の銘があり、それに呼応するように、拵には花寄せ文が蒔絵で描かれている(写真:宮田昌彦)

河内國平作の大小刀と古原秀樹の蒔絵による拵。大小刀には禅語の「百花為誰開」の銘があり、それに呼応するように、拵には花寄せ文が蒔絵で描かれている(写真:宮田昌彦)

例えば、中国には青龍刀というものがあり、反りがある。けれど、単一材料で作ったもので、鎬造りのような凝った構造にはなっていない。インドでかつて作られていたといわれる幻の素材、ダマスカス鋼を使った刀剣類も多く残っており、その地鉄には折返し鍛錬によって鍛えられた日本刀の鋼にも似た地紋が現れている。

しかし、日本刀に施されているような繊細な地紋はない。西洋の伝統的な刀に至っては、そのほとんどが両刃の剣形で、一般的には鉄鉱石を溶解して作られた鋼を単独で使ったものである。力強さや装飾の豪華さはあっても、日本刀のような鋭い切れ味や強靭さは望むべくもない。

そんな日本刀が、存亡の危機に立たされたことがあった。第二次世界大戦後、連合軍によって日本は武装解除を申し渡され、その際に日本刀も没収の対象となったのである。

事態を受け、有志たちが立ち上がった。彼らの働きかけで、審査によって「正しく伝統的な製法で作られた日本刀である」ことが証明されれば、登録などの手続きを経て日本刀を所有することが可能になったのである。作刀も、許可制ながら昭和28年には解禁になった。

それは、日本刀が単なる武器ではないことの証明でもある。たとえば現在、国宝に指定されている刀剣類は約110点にのぼる。これは全国宝1076点の約10%に当たり、工芸品252点の約40%を占める計算になる。武器ではなく文化財として、それだけの重みを占めているのである。

現代に限ったことではない。日本刀はずっと昔から、道具でありながら美術品でもあり、さらにいえば、神器でもあったのだ。

■使う気にさせないのが名刀

世に「三種の神器」と呼ばれるものがある。本来は天孫降臨の際に天照大神から授けられ、歴代天皇が継承してきたとされる三つの宝物を指すが、その中に天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)がある。

このほかにも、たとえばご神体として崇拝の対象となっている刀剣類は数知れない。この世のものと思えないほど美しく鋭利な刀には必ずや神が宿り、邪なるものを両断し滅ぼしてくれると古人は考え、畏れ、奉ったのだろう。

こうして、日本刀は生き続けてきた。今でも国内に300万振(ふり)ほどは現存するとの推計がある。これらの大多数は審査済みだから、簡単な手続きさえすれば普通に所有もできる。

けれどもそれらは、その気になって使えば相当に強力な武器にもなるものだ。ところが膨大にあり、かつ入手も容易であるにもかかわらず、それらが実際に犯罪で使われる例は極めて少ない。

それが日本刀の力ということなのか。ある刀匠はこう語ったという。名刀とは「それを見ただけで争いの愚かさを悟らせ、お互いに刀をおさめようという気持ちにさせるもの」なのだと。名刀にあらずとも、正統な製法で作り出された日本刀は、強さや美しさ、そしてその先に、ある種の畏れを感じさせるものであるらしい。

そして当然のごとく、その作り手になるための道は、険しく狭い。

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