2019年7月24日(水)

日本刀、世界に比類なき強さの秘密
神が宿る武器「日本刀」(2)

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2015/8/14 6:30
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 信じがたいほど切れるのに、折れずに曲がらない――。切れ味を増そうとすれば折れやすくなり、折れにくくすれば曲がりやすくなるという、「鉄の本性」さえ覆してしまう日本刀。この比類なき刃物の原型が現れたのは、今から900年近く前の平安時代末期。続く鎌倉時代には、一つの頂点を迎えたという。以来、日本刀はそれぞれの時代の刀工によって綿々と作り続けられ、今日に至るまで健全な姿で伝えられている。

日本刀特有のその姿。特徴的なのは、反りと鎬造(しのぎづくり)だろう。刃を外周として弧状に反らし、さらに強度を損なわないように注意深く肉をそぎ落とした日本刀は、軽く、振り回しやすい。

断面形状も独特で、刀身の背側にあたる棟に沿って小高い線の鎬(しのぎ)を通している。こうすることで断面は複雑な六角形となり、強度が増すのである。

■刃文の意味

そんな日本刀の素材である玉鋼(たまはがね)は、良質の砂鉄を木炭で低温還元する日本古来のたたら製鉄法を使って作られた鋼だ。

炭素以外の不純物、中でも脆さなどの要因となる硫黄やリンをほとんど含まない、極めて純度の高い鋼である。この玉鋼に古い鉄などを混ぜて鍛えて地鉄とする。さらに刃の部分は炭素含量が多く硬いものを、内側の芯には炭素含量が少なく軟らかいものをというように、硬度の異なる地鉄を組み合わせる。こうすることで、信じがたい強靭(きょうじん)さが生み出されるのだ。

刃文は刀身に描かれる模様である。刃の部分が強く焼入れされた状態となっており、焼きの入っていない地鉄の部分との境界部分が刃文として現れる。

写真:宮田昌彦

写真:宮田昌彦

伊勢神宮式年遷宮矛(写真:宮田昌彦)

伊勢神宮式年遷宮矛(写真:宮田昌彦)

焼入れの際は、刀身を加熱して赤めた後、水に入れて急冷する。こうすることで鋼の組織が安定的なオーステナイト(面心立方格子)からマルテンサイト(体心正方格子)に変わる(マルテンサイト変態)。こうしてできたマルテンサイトは、極めて硬く、よく切れる。しかし、脆い。

だから、必要不可欠な刃の部分にのみ強く焼きを入れ、さらに焼戻しをかけて靭性を出す。これも「よく切れる」のに「折れず曲がらず」という特性をもたらす一つの要因である。

日本刀独特の反りも、この焼入れをルーツとして生まれたものだといわれている。鋼は、マルテンサイト変態に伴い体積を増す。このため、刃の側が伸び、全体として反りが生まれる。

さらにこの反りが生じる過程で、刃の部分には強い圧縮応力が蓄えられることになる。この内部応力が切る際に刀身に加わる力を相殺し、折れを防ぐ。

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