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就活長期化 スタミナ切れ・ドロップアウトも

採用選考が本格スタートする8月1日まであとわずかだが、すでに就活生の疲労は色濃い。就活探偵団が実施した100人アンケートでは、4割がすでに半年以上を費やす「就活マラソン」の様相だ。就活の矛盾にも歯を食いしばって向き合う彼らの生の声を伝えたい。

就活1年のベテラン続出

「インターンシップ(就業体験)を含めるとざっと1年がすぎました」(早稲田大男子学生)

100人アンケートで就活を始めた時期をたずねた結果、説明会が解禁された3月が最多で42人。それ以前の1~2月が17人。2014年から準備に入ったのは23人。採用スケジュールが後ろ倒しになったにもかかわらず、スタート時期は繰り上がっている。

そのうちインターンに参加したのは約6割。学生は早ければ昨夏から企業と接触を持っており、大半が年明けにすでに就活戦線に身を投じている。経団連に加盟する大手企業が実質的に面接をスタートする8月までに、就活キャリアが1年を超える"ベテラン"が続出する。「僕は2年の修士課程ですが、そのうち半分を就活に費やす計算です」(私大院生)。「修活」はそっちのけで、「就活」が本命になっている。

東京・新橋にいた早稲田大4年の男子学生は、ベテラン就活生の1人。表計算ソフト「エクセル」のシートを使って、50社を超える企業情報をきっちり分析していた。昨年9月からインターンに参加した企業は20社にもなる。

「勝負どころが、さっぱりわかりません。あれって、本番だったんですかね?」(名古屋大女子学生)

8月の選考解禁を前に、実質的な「選考」と位置付けられている「面談」や「懇親会」、「質問会」が各所で開かれている。学生側も、水面下での選考が進んでいるのは暗黙の了解のようだが、その不透明ぶりには不安を募らせている。

JR品川駅で会った明治学院大4年の女子学生は、大手証券会社の「面談」からの帰りだった。面談はもう5回目になるという。最初は、社員とカフェでのんびり情報交換する程度だったが、その後「今度はオフィスで『面談』しませんか?」というメールをもらって、気がつくと「5次」になった。もちろん経団連加盟企業。「これは面接ですよ。面接。選考されているはず。でも認めてくれない」と口をとがらす。慶応義塾大4年生の武智絢子さん(23)は「はっきりとした選考フローを知りたいです」とモヤモヤは晴れない様子だ。

「いきなり内定を出すといわれても。これでいいのと腑(ふ)に落ちなかった」(国立大の男子学生)。選考プロセスにのったかどうか気付かず、ラッキーゴールに結びついた例もある。「ひとまずもらっておいて、辞退するかどうかは、8月以降に伝えます」。抜かりがない学生だった。

中堅・中小が先んじて内定

「将来のためにチャレンジしたい。でも、『内定ゼロ』は怖い」(東北学院大の男子学生)

選考後ろ倒しによる就活長期化だけでなく、ある逆転現象も鮮明になった。8月1日以降に内定を出す経団連加盟企業に先だって、中堅・中小、ベンチャー企業が選考採用に動いている。大手企業がリード役だった例年の就活は、志望度が高い順番にスケジュールをこなせば良かったが、この逆転現象が就活生を苦しめている。

東北学院大の男子学生は、「第一志望の大手レコード会社を受けたい。でも選考が長引くなかで、無事に本命の内定にたどり着けるか自信を持てない」と話す。現在、中小企業3社からすでに内定を打診されており、回答を迫られている。本命のレコード会社はこのほど書類選考に通ったばかりで、最終まであと数回の面接が待っているという。「自分の夢のためにはチャレンジする価値があります。でも失敗すれば、すべての内定を失う可能性があるし。もう、いいかな」

大手の採用は全体の1%

涙のドロップアウトを迫られる傾向がより強いのは地方学生だ。「面接の度に上京するのは一苦労だし、どうしても確実な内定に流れてしまう。早く終わらせて楽になりたい」(東北学院大4年)

「8月から選考を解禁する経団連加盟の大手企業やメガベンチャーの採用数は、実のところ全体の1%という狭き門」。企業向けに採用支援サービスを提供する人材研究所(東京・港)の曽和利光代表はこう指摘する。「企業の知名度にしがみつこうとすると、下手をすると100戦100敗のリスクがある」(曽和代表)。自らの実力を知ったうえで、志望企業を厳選する見切りも大切だ。

「いつ勉強すればいいのか? 休みはとれるのか?」(早稲田大の男子学生)

今後の本格的な採用選考は、夏休みともちょうど重なる。早大4年生は「内定さえもらえれば、旅行に行きたい。そんなこと考えられる余裕がありませんが」と悲しげだ。4月に選考が始まった例年なら、内定をさっさと獲得して海外旅行に行くことも可能だった。今後内定を獲得しても、卒業に必要な単位取得や論文執筆などが待ち構えている。

「学業優先」はかけ声倒れ?

「3月からまともな研究ができていない。准教授からメールで圧(プレッシャー)をかけられています」(国立大の男子学生)。経団連が面接解禁を8月以降に後ろ倒ししたのは、学業を優先させるのが本来の目的だった。だが実態を聞く限り学生は就活にかかり切りだ。理系の学生は特に厳しい。「教授が後ろ倒しになった就活スケジュールを知らず、授業への欠席を厳しく責められた」と、板挟みになる就活生の声も届いている。

法政大学キャリアセンターの栗山豊太主任は「ゼミの出席率が例年になく落ち込んでいる」と話す。昨年までは5月に授業に戻ってきたが、今年は足元になっても面接を理由にした欠席が続いている」(栗山氏)という。

五里霧中の採用戦線に苦しむのは、企業の採用担当者もおなじだ。「8月前半までに採用を終えたい。今年に限っては、どのくらいの内定辞退が出るかつかみきれない」(大手電機メーカー)。各社ともそれなりの規模の内定辞退を覚悟しており、8月下旬から目標予定数を達成するための追加募集を念頭に入れている。採用スケジュールはさらに延びる勢いだ。

今年の就活生は新ルール適用の「1期生」で、先輩のアドバイスやマニュアルがあまり役に立たない端境期でもある。加えて、想定を上回る「売り手市場」が重なって、人材争奪を激しくさせて混乱を広げている。人材コンサルタントの常見陽平氏は「社会に出ると本音と建前がまったく違う。それを事前に学べた実践型就活と考えればいいのでは」と背中を押す。就活の歴史の中で最大とも言える波乱の1年をくぐり抜ければ、タフな新人として期待されるには違いないが。

(中山美里、高尾泰朗、雨宮百子)

 次回は7月23日(木)に掲載予定です。
 「お悩み解決!就活探偵団」では読者の皆様からのご意見、ご感想を募集しております。こちらの投稿フォームからお寄せください。就活探偵への就活生からの疑問は日経就職ナビのホームページから受け付けています。これまで寄せられた主な疑問もご覧になれます。
読者からのコメント
匿名性さん、20歳代男性
全て、後に、良い経験と化す。但し、就活生が目標を諦めたら、その人の人生に最悪の禍根を残すだろう。
現役就活生さん、20歳代男性
今回の就活長期化の被害者です。今回の件で世間の方にもわかっていただけたかと思いますが、倫理協定だか何だか知りませんが、こんな制度もう限界が来ているんです。そもそも学業が本分だと主張するのであれば、経済界が大学界に口出しすること自体がおかしいですし、大学も「そうだ」と同調するのであれば、現行の就活文化を一新する提案をするべきだと思います。 我々の世代は、大人が勝手に決めた教育によって「ゆとり世代」などと罵られ、またもや大人の勝手な決断により学業の時間を奪われるという被害を被るのです。最大の被害者は学生です。
20歳代男性
このような記事を見るたび、いつまでも採用活動一斉スタートというルールがいまだに存在していることに違和感があります。すぐにというわけにはいかないでしょうが、いずれは通年採用や学年の制限などのボーダーをなくした採用活動をスタンダードにすべきではないかと思います。
20歳代男性
学業に専念出来るとの言い分でスケジュールを変更したのに、実態は真逆の状況になっている。就活生への負担も大きい。スケジュールを戻すべきなのでは?
読者からのコメント
50歳代男性
企業は協定を守って、学生にその本分である勉学に集中する時間を与えなければいけない。今のままでは勉強もろくにしていない学生を印象だけで採用するという構図は変わらず、グローバルな競争に勝つことはできない。
70歳代男性
公平でなければ見直しは必要でしょうが、いつもいつも何をやってるんでしょうね!
20歳代女性
新しい制度が確実に私たち学生を苦しめていると感じます。昨年度までは4年の前半までに就活を終え残りを卒論に充てることができましたが、今は就活と卒論がどっちつかずの状態で集中して取り組めなくなっています。
30歳代女性
新卒一括採用制度は、終身雇用・年功序列を前提とした時代錯誤な制度。外国人や海外大学卒などの人材の採用を考慮しておらず、組織の多様性を阻害する。採用スケジュールではなく、採用制度そのものを見直すべき。
20歳代男性
政府が何も考えず机上の空論のみで決めた何の利益も生まない後ろ倒し。早く見直さないともっと事態が深刻になる。
40歳代男性
正直なところ「誰得?」のスケジュールだと思う。先の見通しが立たず、企業も学生も疲労感ばかりたまる。特に理系の学生は8月から卒論のための実験を始めるので、思いっきり学業に支障を来たしている。
説明会解禁から面接解禁までの期間が長すぎ。特に理系院生の多くの人にとっては。業界研究や志望順位の決定は2カ月もあれば十分で、研究活動に集中できるようにするべき。 (化学業界内定の院生)
70歳代男性
選考の後ろ倒しの理念は正しい。本来、8月に大手企業が選考開始し、その後、中小企業が選考開始すべきなのに、大手の実質的な選考が前倒しで実施されたり、大手と中小の選好順序が逆転していることが本質的な問題。
50歳代女性
前倒しにしたら楽になるってこともない。要領良く短期決戦で決める人もいるだろうけど、大変なのは変わらない。売り手市場でも入社後大変ってこともあるし。
50歳代男性
本来の学業への時間を無駄にして就活につぎ込むことを、企業は真剣に考えてほしい。自分で問題を考え、解決する力は育まれないのではないでしょうか?
60歳代男性
娘がY大学、4年で就活中。Aさんは大手企業からすでに内定をもらったとか、逆に、大手企業が8月まで内定を出さないとか、そんな実態が聞こえてきます。変更元年とは言え、次年度も同じ様になりそうな懸念。
50歳代男性
娘が就活で希望の一部上場企業から既に内定をもらい、結果オーライではあるが、当事者である娘から聞く限り、現場は混乱していて、企業側、学生側双方にとっても、以前のスケジュールに戻す方が現実的かと思います。

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