2018年12月17日(月)

宅配サービスに人工知能、買い物や外食に「ウーバー革命」
宮本和明 米ベンチャークレフ代表

(4/4ページ)
2015/8/21 6:30
保存
共有
印刷
その他

■Googleのサービスは"重厚長大"?

こうしたベンチャー企業の登場で、米Google(グーグル)が苦戦している。Googleは、独自の配送サービス「Shopping Express」を展開しているが、伸び悩んでいるのだ。同社は米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)対抗のサービスとして開始したが、実際には小回りの利くベンチャー企業との競合に勝てずにいる。

例えば、Shopping Expressで注文すると、配送は翌日でしかも時間帯は午前・午後・夜の枠から選ぶこととなる。同日配送や1時間ごとの指定ができない。配送手数料も4.99ドルと、やや高めの設定である。

しかもShopping Expressは、生鮮食料品を取り扱っておらず、衣料品や家庭用品などが中心となる。そのため、毎日利用する人はほとんどいないと想像できる。筆者はずっとShopping Expressを使ってきたが、今ではInstacartに乗り換えた格好となっている。

出典: Google

出典: Google

上の写真はShopping Express専用車両で、通りで頻繁に目にする。裏を返せば、インフラにコストがかかっているということ。Googleのサービスは"重厚長大"で、時代の波に乗り遅れているのを感じる。

■シリコンバレーの生活パターンが変わる

Instacartは、ニューヨークなど15の主要都市で事業を展開しており、シリコンバレーでは多くの家庭が利用している。また、DoorDashはサンフランシスコを中心に7都市でサービスを展開中。シリコンバレーのパロアルトでは、4軒に1軒が利用しているといわれている。

DoorDashの出前料金は少し高いので、筆者宅では友人と一緒にレストランに行く代わりに、DoorDashを利用している。出前サービスで料理を注文すると、自宅でくつろいで食事ができるからだ。

InstacartやDoorDashなどの登場で、シリコンバレーでの働き方も大きく変わった。パートタイムとして企業に就職する代わりに、自分の都合のいい時間に働くスタイルが広まってきたのだ。

複数の仕事を掛け持ちし、時給が最大になる組み合わせで働く。稼ぐ人であれば、年収6万ドル(720万円)になる人もでてきている。Uberが仕掛けたビジネスモデルが、幅広い分野で波紋を広げている。

■店にとっては新規販売チャネル

大手ベンチャーキャピタルがInstacartに大規模な投資をし、DoorDashに注目しているのは、このビジネスモデルを高く評価しているためだ。

通常、Instacartで買い物をしても、価格はスーパーマーケットと同じ設定だ。これが可能なのは、Instacartがスーパーマーケットから、販売コミッションをもらう仕組みがあるからだ。つまり、スーパーマーケットはInstacartを、新規顧客を呼び込み売り上げが増える新しい販売チャネルと位置づけている。

例外もある。例えば、大手スーパーマーケット「Safeway」で買い物をすると、商品価格は15%増しとなる。これはコミッションを貰えないケースで、追加料金がInstacartの事業収益となる。実は、Safewayは独自の配送サービスを展開しており、Instacartとは競合する関係にあるのだ。

DoorDashも同じ構造で、レストランからコミッションをもらっているといわれている。レストラン側としては、DoorDashの出前サービスが新たな販売チャネルで、売り上げの伸びを期待している。

下の写真はクレープを注文したCrepevineで、食事時はいつも満席の状態。Webサイトでは前面にDoorDashを紹介し、出前サービスを積極的にプロモーションしている。

出典: VentureClef

出典: VentureClef

ただし、レストランの出前サービスは乱立状態にある。消費者は、受け取る料理の品質に大きな幅があり、レストランの選択には注意が必要だ。

■高齢化社会の重要なインフラに

このモデルは、日本の都市部での配送システムに応用できるかもしれない。日本では、既に大手企業の宅配サービスが充実している。だが、もっとフットワークの軽いモデルを構築できれば、誰でも気軽に安い値段で利用できるようになる。

特に、自由に買い物に行けないシニア層向けに提供できれば、高齢化社会の重要なインフラとして機能しそうだ。これらのサービスを支えているのが人工知能で、IT企業の果たす役割はますます重要になっている。

宮本和明(みやもと・かずあき)
米ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーでベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。

[ITpro 2015年6月16日付の記事を再構成]

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
保存
共有
印刷
その他

日経BPの関連記事

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報