なでしこリーグ再開 岡山vs神戸戦に5千人
サッカー女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会で準優勝を飾った日本代表らが帰国し、「なでしこリーグ」が12日から再開した。岡山県美作市では「なでしこジャパン」の主将を務めた宮間あや選手(30)ら代表2人が所属する岡山湯郷(ゆのごう)ベルと、代表7人を擁するINAC神戸が対戦。岡山湯郷のホームゲームで過去最高の観客約5千人が熱戦に声援を送った。初優勝した4年前の活況を取り戻せるのか。再び期待が高まっている。

試合はINAC神戸が前半終了直前に先制点を挙げるなど攻め込んで2点リード。岡山湯郷は後半に反撃し、最後は後半39分で宮間選手がボールを奪ってドリブルから同点ゴールを決め、2対2の引き分けとなった。
W杯で計7試合を戦い抜いた日本代表選手らは7日に帰国したばかり。コンディションも万全とはいえず、INAC神戸の澤穂希選手(36)も左膝関節炎のため欠場。だが試合終了のホイッスルが鳴るまで勝負が分からない熱戦に通常の2.5倍の観客が詰めかけたスタンドから手拍子や声援は途切れなかった。
岡山湯郷の下部組織に所属し、夢は「なでしこジャパン」と話す中学3年、保田陽さん(15)。今回初めて満員になったスタジアムを見つめ「自分もこれだけの観客の前で試合をしてみたい」と興奮気味に話した。
2011年のW杯ドイツ大会の優勝から岡山湯郷の試合に通うようになったという岡山県津山市の会社員、梶岡潤二さん(56)。「毎試合これだけ観客が入れば……」と驚く。毎試合のチケット収入が伸びてクラブの財政が潤えば、選手のサッカー環境が改善されていくと考え、「これからも試合はスタジアムで観戦し、応援し続けたい」と力を込めた。

岡山湯郷は昨シーズンのホームゲームで1試合当たりの平均観客数が2036人だったが、この日は最多の4998人が観戦。普段は使用しないバックスタンドも埋まった。午後3時のキックオフにもかかわらず、午前9時に会場入りした観客も。岡山湯郷の黒田和則ゼネラルマネージャー(GM)は「いい試合だった。これだけ人が入ると、スタジアムの臨場感が違う。これを続けていきたいね」と満面の笑みで話した。
ただ苦い教訓もある。W杯ドイツ大会で初めて優勝し、3月の東日本大震災後の日本に希望と勇気を与えたとして「なでしこジャパン」が流行語大賞にも選ばれるなどフィーバーが起きたものの、その後は1試合当たりの観客数は減少傾向が続いているからだ。

前回W杯前の10年は1試合当たりの観客数は912人で、初優勝した11年は東日本大震災の影響で東京電力マリーゼが活動を自粛したため試合数が減ったが、1試合当たりの観客数は3倍の2796人に。だが翌12年は再び10チームに戻り、試合数が増えて総観客数は増えたものの、1試合平均では2572人と減少。13年は1865人、14年も1591人と減少が続いている。
今年もW杯前まで1試合平均の観客数は1456人でピーク時の約半分まで落ち込み、減少に歯止めがかかっていない。
この日ホームゲームで観客数が過去最多となる4998人だったことを受け、岡山湯郷の宮間選手は「(5千人まで)あと2人、惜しかったですね」とおどけながら、「お客さんが飽きない、また来たいと思える今日のような試合を今後も続けていく」と誓う。女子サッカーを一過性の人気ではなく、文化として根付かせるために「これからが大事」と意気込む。
日本代表でW杯で共に戦い、この日は対戦相手となったINAC神戸の川澄奈穂美選手(29)も「(岡山湯郷のような)最後まで試合を諦めない姿勢をみせることが大切」と話し、日本の女子サッカーのさらなる向上のために、残りのリーグ戦に全力を尽くす。
14年からは2回戦総当たりの「レギュラーシリーズ」の後に、成績上位6チームと下位4チームに分かれた「エキサイティングシリーズ」が開催されるようになった。
なでしこリーグでプロ契約をしているのはごく一部だ。INAC神戸ではプロ契約以外の選手も契約社員としてサッカーに打ち込める環境が整っているが、社会人選手の多くはアルバイトなどの仕事で生計を立てており、選手の待遇改善も課題となっている。
関連企業・業界