5人死亡の土工事事故 施工者を安衛法違反で書類送検

2013年11月に秋田県由利本荘市で法面工事中の土砂が崩れて作業員5人が死亡した事故で、秋田労働局本荘労働基準監督署は2015年7月8日、労働安全衛生法違反の容疑で施工者の山科建設(同市)と当時の工事長、副工事長を書類送検した。
容疑は、労働安全衛生規則の二つの違反に対してかけられた。
一つ目は、同規則の第355条「作業箇所等の調査」に対する違反だ。この条文で、施工者は地山掘削箇所をボーリングなどの適当な方法で調査し、その結果を適切に踏まえて作業手順などを決めるよう規定されている。
公共工事では一般的に、建設コンサルタント会社などにボーリング調査を発注するので、施工者が実施することはない。問題とされたのは、コンサルタント会社が実施していたボーリング調査などの報告書を、同社が全く確認せずに工事に臨んでいた点だ。本荘労基署は、同社が適当な方法で調査しなかったと判断した。
発注者の対応改善を文書要請
もう一つの疑いが、同規則534条「地山の崩壊等による危険の防止」に対する違反だ。地山崩壊の原因となる雨水や地下水などに対して、同社は適切な排水措置を取らなかった。
他方、本荘労基署は発注者の由利本荘市に対しても、安全な施工に対する配慮が足らなかったとして、文書で改善を要請する予定だ。
事故は13年11月21日、市道の災害復旧工事で発生した。法面を切り土した範囲に、セメント改良土を1mほど盛った段階で、幅40m、高さ20mにわたって切り土した法面の土砂が崩落。当時、法尻部で作業をしていた作業員5人が生き埋めとなって死亡した。
市は、現場に降った雪と大雨が引き金となって土砂崩落が起こったとする報告書を2015年3月にまとめている。
(日経コンストラクション 真鍋政彦)
[ケンプラッツ 2015年7月9日掲載]