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世界最大規模の水上メガソーラー 池に9000枚のパネル

日経BPクリーンテック研究所

兵庫県加西市にある逆池(さかさまいけ)の水上で、出力約2.3MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「兵庫・加西市逆池水上メガソーラー発電所」(図1)の運用が始まった。水上に設置したメガソーラーとしては、世界最大規模となる。

2015年6月11日に、関西電力への売電を開始した。年間発電量は、一般家庭約820世帯の消費電力に相当する、約2680MWhを見込んでいる。京セラと東京センチュリーリースの合弁によるSPC(特定目的会社)、京セラTCLソーラー(東京都千代田区)が発電事業者となる。

京セラTCLソーラーは、地上や大規模建物の屋根上とともに、貯水池やダムなどの水上のメガソーラーの開発に取り組んでいる。

逆池に次ぐ規模の水上設置型メガソーラーも、同じく京セラTCLソーラーが兵庫県加東市で運営する案件で、出力は約1.7MWになる。今後は、千葉県市原市にある山倉ダムに、約13.4MWの水上メガソーラーを開発する計画も進めている。

池やダムの水面を貸し出し

再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度(FIT)の施行以降、国内でメガソーラーの開発が加速したことで、太陽光発電に適し、かつ連系の条件が良い事業用地が減ってきている。その中で、貯水池やダムを活用した、水上設置型のメガソーラーの開発に関心が集まりつつある。

日本は、年間を通じて降水量の変化が大きい傾向にあり、農業用水を供給するための貯水池、工業用水を貯めるためのダム、河川が一定以上に増水した時に活用する調整池など、全国に多くの池がある。

こうした池やダムは、地方自治体や地域の自治団体などが所有している。水面を太陽光発電事業者に貸し出すことで、毎年かかる維持管理費用を削減できる。

賃借期間中は、太陽光発電事業者が維持や管理の多くを担うことになるためである。その上、太陽光発電事業者から、従来は考えられなかった賃借料が入るようになる。

一方、太陽光発電事業者にとっては、土地に比べて相対的に安く借りることができ、事業性を高めやすくなる。

水草の異常発生を抑制

京セラでは、水上設置型のメガソーラーの利点として、以下の3点を強調している。第1に、建設時の造成や整地、運用時の雑草の除草といった、地面の上に設置するメガソーラーでは避けられないコスト増加要因がなくなることである。

第2に、池の水が太陽光パネルを冷やす効果である。水による冷却効果で、仮に、パネル温度が1℃下がれば、出力は0.5%増すとしている。

結晶シリコン系の太陽光パネルは、高温時に発電損失が増大し、変換効率が落ちる特性がある。水上であれば冷却効果によって、夏の高温時に、地上や屋根に設置した太陽光パネルに比べて、発電量の損失を低減できる。

第3は、池にとっての利点である(図2)。太陽光パネルが水面を覆うことによって、貯まった水の蒸発量が少なくなる。藻など水草の異常発生を抑制できる効果もあるという。

逆池では、ヒシと呼ばれる水草などの育成を抑える効果が期待されている。施工前には、これらの不要な水草は刈った。一方で、蓮などの景観を良くする水生植物は残した。

効率化によるコストダウンが鍵に

逆池は、コメやムギを栽培する田畑への農業用水の供給を担っている。約1300年間、近隣の田畑に水を供給してきた。現在は、144軒の農家の田畑が、逆池の水に頼っている。

池の面積は約7万m2(平方メートル)と、ため池としては広く、その約3分の1に太陽光パネルを浮かべた。EPC(設計・調達・施工)サービスは、京セラグループのエンジニアリング会社、京セラコミュニケーションシステム(京都市)が務めた。同社によると、水上に構造物を施工する取り組みは、太陽光発電システム以外では、前例がほとんどないという。

このため、地上における施工と違い、効率的に施工するための機器や工法が確立されておらず、経験を蓄積していく状況にある。水上では地上への設置に比べて、重機などをふんだんに使って効率的に施工することが難しい。池に潜ったり、船に乗って作業する工程も多い。

いずれも、人海戦術的な工法となり、施工費用の増加要因となる。さらに、船の上などでの作業は、足元が揺れ続ける中で、安全を確保する必要がある。

一つの工程に要する時間も、地上での設置に比べて長くなる。こうした工程や作業の効率化によるコストダウンが今後重要になる。

また、池を囲う堤には、手を加えられない。堤が損傷してしまう可能性があるからである。同様に、池本来の機能を損なう恐れがある施工や工法は採用できない。池の機能を損なわず、太陽光パネルを浮かべるのが、水上設置型メガソーラーの基本となる。今回は、池の所有者から、できるだけ周囲の景観に溶け込むようにして欲しいという要望もあった(図3)。緑豊かな場所にあり、春は桜の名所となっている。

潜水士がアンカーを固定

施工では、太陽光パネルと接続箱は水の上に浮かべ、集電箱やパワーコンディショナー(PCS)、連系設備は、近くの地上に設置した。

太陽光パネルと接続箱は、「フロート」と呼ばれる樹脂製の部材を使って、池の上に浮かべる(図4)。フロートは、いかだのような部材で、地上設置における基礎と架台の役割を担う。

フロートは、太陽光パネルや接続箱を載せて水に浮かびつつ、水面の流れや風に吹かれて、大きく動いてはならない。池の水位が変わった時にも、太陽光パネルが過剰に傾いたりすることがあってはならない。

太陽光パネルを縦横に連結して、面のような状態にして浮かべる。そして、停泊中の船のように、池の底からアンカーを使って止め、一定の範囲以上に流れないようにしている。アンカーは、潜水士が池の底まで潜ってGPS(地球全地球測位システム)と地上からの指示に従って設計通りの位置に固定する。

アンカーとフロートは、ワイヤーで結ぶ。このワイヤーをアンカーにつなげて、ブイに結んでおく。潜水士が、一般的な施工に関わることは珍しく、まずはこうした作業を担える潜水士の確保が、ポイントになるという。

いかに足場を確保するか

次に、フロートを使って太陽光パネルと接続箱を、池の上に浮かべる。この工程を効率化するためには、作業は極力地上で済ませ、船上での作業を減らすことが有効である。船上での作業は、地上に比べて作業性が悪くなる上、万が一、水中に機器や備品を落してしまったら潜って拾わねばならない。

池は、道路などに囲まれている場合が多く、かつ堤には手を加えられない。平坦な場所は限られるため、堤を傷つけずに足場を組むなどの工夫が必要になる。足場をいかに広く確保できるかが、施工性を大きく左右する。

京セラコミュニケーションシステムにとって、逆池は三つめの水上メガソーラーの施工案件となる。先行した二つは、加西市に隣接した加東市での案件だった。

先行案件の経験から、堤の水面付近に、単管パイプと板を使って足場を組んだ(図5)。逆池では、加東市での案件に比べて、足場の面積を約2倍の約48m2とし、効率を上げた。

逆池では、足場で28個のフロートを連結しておき、太陽光パネルを固定してから、船で所定の位置まで運んだ(図6)。ストリング(太陽光パネルを直列に接続する単位)二つ分を、まとめて水上で運ぶことになる。

連結して運ぶフロートの数を増やすほど、水上を運ぶ回数は減らせる一方、船が動く速度が遅くなる。このバランスを考慮すると、今回は28個ごとに運ぶのが最適だったという。

さらに大きな船を使って、一度に運ぶ個数を増やすこともできるが、一定以上のサイズの船を使う場合、小型船舶操縦免許を持つ作業員を確保する必要が出てくる。

ある程度作業量が計算できる地上設置に比べ、水上での作業は「何人の作業員を投入すれば、1日あたり何枚の太陽光パネルを設置できる」といった目安がつきにくい。仮設計画を念入りに作成するなどして、工期が大きく遅れることがないようにした。

このようにして、9072枚の京セラ製の太陽光パネルを浮かべた。

フロートは、最初の加東市の案件から、フランスのシエル・テール・インターナショナル製を採用している。逆池のメガソーラーでは、シエル・テール・インターナショナルのライセンスを受け、日本企業が製造した製品を設置した。

太陽光パネルの寸法の違いは、フロートが備える金具を使って調節する。京セラTCLソーラーは今後、多くの水上メガソーラーの開発を予定していることから、パネルの固定プロセスを改善することで、効率化やコスト低減につながる余地があるとみている。

ウインチを使いやすいよう直線的に配線

水の上に浮かんだ接続箱から、地上にある集電箱に向けたフロート上での配線は、極力、直線的に敷設することで、作業を効率化した。回転ドラムを使って送電ケーブルを巻き取るようにして敷設できるウインチを効果的に使うには、直線的な敷設が適しているからだ。

送電ケーブルは、それぞれの列のフロートの端部にまとめた。最長で400mの距離で敷設した。フロートの東端から集電箱がある地上までの間、送電ケーブルは樹脂製の管に入ったまま、水面に浮かんでいる場所がある(図7)。

これは、樹脂製の管の中を、正確に密閉できている証拠だという。密閉できていないと、水が管の中に入り、重みで沈んでいく。送電ケーブルは、樹脂で被覆して絶縁しているため、水が触れると樹脂が劣化し、絶縁性を損なう恐れがある。

設置しやすい池の条件

水上での施工は、船上やフロート上という揺れながらの作業となるうえ、地上設置に比べて冬の寒さによって作業員の身体が冷えて消耗が大きくなったり、トイレに通う頻度が増えるといった影響を考慮する必要があるという(図8)。

今後は、3件の水上設置型メガソーラーの経験を生かし、作業性と品質の高い施工を目指していく。

同じような池に見えても、水上への太陽光パネルの設置に向く池と、そうでない池がある。例えば、水深や水底の形状が施工性に影響する。

水深は、浅過ぎず、深過ぎず、適度な深さが良いという。逆池の場合、水深は3~4.6mで設置に向く深さだった。水深がほぼ一定で、水底の凹凸が少なく、水位が変わらない池が向くようだ。

地上設置に比べ施工期間がかなり長くなるような印象を受けるが、地上で一般的な2MWで約5カ月間に対して、逆池は約2.3MWで約6カ月間と、遜色ない期間となっている。

費用は、地上設置とほぼ変わらないという。設備購入費は高くなるものの、造成費が不要なためだ。O&M(運用・保守)については、除草費が不要になる一方、点検は船に乗って実施するため難易度が増す。

(日経BPクリーンテック研究所 加藤伸一)

[日経テクノロジーオンライン2015年7月8日付の記事を再構成]

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