2017年12月16日(土)

高度1万mでテレビ番組を生視聴 進化する空のエンタメ

(1/2ページ)
2015/8/7 6:30
保存
共有
印刷
その他

日経情報ストラテジー

 全日本空輸(ANA)が機内エンターテインメントの世界を一変させようとしている。2015年5月に就航した国際線用のボーイング「787-9型」機で、国内航空会社として初となるテレビ放送の視聴サービスを開始。高度1万mの上空を飛行中に、地上で放送中のテレビ番組をほぼリアルタイムに視聴できるようにしたのだ。

 長ければ半日近くを過ごす長距離国際線の機内。見慣れた日本のテレビ番組が楽しめるようになれば、機内の過ごし方が大きく変わる可能性がある。使い勝手を検証するとともに、ANAの戦略をひもとく。

■大人気だった「数時間遅れのニュース」

 5月末のある日、東京・羽田空港の一角にあるANAの格納庫前に、ミュンヘンからの長旅を終えたボーイング787-9型機が羽を休めていた。これが国内初となる機内テレビサービス「ANA SKY LIVE TV」を搭載した1号機だ(写真1、写真2)。

写真1  5月に就航したANAの国際線の最新鋭機、ボーイング787-9型機は機内テレビサービスを提供

写真1  5月に就航したANAの国際線の最新鋭機、ボーイング787-9型機は機内テレビサービスを提供

写真2 787-9の機体上部に装着されたKuバンドの衛星通信用アンテナ。機内の無線LANサービスに併せ、IPTVの映像伝送にも使っている

写真2 787-9の機体上部に装着されたKuバンドの衛星通信用アンテナ。機内の無線LANサービスに併せ、IPTVの映像伝送にも使っている


 「機内向けのネットサービスと違い、テレビはIT(情報技術)リテラシーに関わらず多くの人に楽しんでもらえる可能性がある。ライブ性の高いコンテンツを自宅と同様に見られるのは訴求力が高いと考え、ぜひ導入したかった」。機内テレビサービス「ANA SKY LIVE TV」の導入を主導したCS&プロダクト・サービス室商品戦略部の茅順一朗主席部員は、今回のサービスに懸ける思いをこう明かす。

 実は、国際線の機内でテレビ番組がこれまで見られなかったわけではない。ANAや日本航空(JAL)は地上アナログ放送の停波前、空港で録画しておいたNHKのニュースを機内で再生するサービスを古くからやっていた。「毎月苦心して面白い映画などをそろえているのに、地上より数時間遅れのNHKニュースが利用率の3位以内をずっと維持し続けていた」というほど大人気だったという。

 新サービスは、機内で生放送の番組が見られるのが最大の特徴だ。それを実現したのが、機体中央上部に載せたアンテナである。普段は丸いカバー(レドーム)の中に格納されており見えないが、内部には電動で360度回転する「Kuバンド」と呼ばれる12G~18GHz帯のアンテナが格納されている。飛行しているエリアに応じ、最寄りの通信衛星の方を向いて電波を送受信する。

 このアンテナは機内ネットサービス「ANA Wi-Fi Service」向けのもので、テレビサービスもこれに相乗りしている。映像はIP(インターネット・プロトコル)ベースのストリーミング映像として受信している。787-9向けの機内ネットサービスは、米パナソニック・アビオニクスの「eXConnect」が唯一米ボーイングの認証を受けている。ANAはeXConnectの姉妹サービス「eXTV」を採用することで、機内テレビを実現させた。

■NHK、CNN、スポーツ専門局も

 では、機上で見るテレビは本当に革新的なのか。記者は、通常離陸後の巡航中のみ提供しているANA SKY LIVE TVを、取材のため地上で体験する機会を得た。

 まず、各座席に配置されているタッチ操作に対応した個人向けモニターにメーンメニューを表示させると、上段中央の一番目立つ場所に「スカイ ライブTV」と書かれたテレビのアイコンを発見。これを押すと、3つのチャンネルを選ぶボタンが現れた。

 日本放送協会(NHK)の在外邦人向け日本語放送「NHKワールドプレミアム」、米CNNの国際放送版である「CNN International」、米IMG Mediaが運営するスポーツ専門局「Sport 24」だ(写真3、写真4)。

写真3 各座席のモニターを立ち上げると、メーン画面に機内テレビのアイコンが表示されている

写真3 各座席のモニターを立ち上げると、メーン画面に機内テレビのアイコンが表示されている

写真4 ANAの機内テレビサービスでは、NHKと米CNN、そして米スポーツ専門局のSport 24を視聴可能だ

写真4 ANAの機内テレビサービスでは、NHKと米CNN、そして米スポーツ専門局のSport 24を視聴可能だ


写真5 ニュースは日本国内向けと同時~10分遅れでほぼ最新。あくまで地上での試用だが、映像は小さいモニターで見るには十分の画質。細かい文字も問題なく読める(テレビ映像はNHKワールドプレミアム「BSニュース」)

写真5 ニュースは日本国内向けと同時~10分遅れでほぼ最新。あくまで地上での試用だが、映像は小さいモニターで見るには十分の画質。細かい文字も問題なく読める(テレビ映像はNHKワールドプレミアム「BSニュース」)

 NHKを選択すると、映ったのは国内ではBS1で放送されている「BSニュース」。若干の遅延はあるものの、国内向けとほぼ同時放映の番組だ(写真5)。

■「まれ」や「花燃ゆ」をリアルタイムに

 画質はハイビジョンではなく標準画質のようである。ただビジネスクラスの17型モニターで視聴しても特に画質の粗さは感じない。音声はヘッドホンで聴くことになるが、全般的に明瞭で、アナウンサーの声が聞き取りづらかったり、音声が途切れて意味が分からなくなったりといったことはなかった。ただ、数十秒に1回程度プツッという短い雑音が入ったのが気になった。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

日経BPの関連記事



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報