本音トーク、フィギュア解説に革命 J・ウィア(上)

2015/7/11 6:30
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何はなくともリアルであること――。米国のエンターテインメント界、特に大衆文化で成功する鍵だ。「本当の感情、正直な意見を言うこと。嘘、フェークに米国人はそっぽを向く」とジョニー・ウィア(31)は話す。フィギュアスケート男子の2008年世界選手権銅メダリストで、五輪でも2度入賞したプロスケーターだ。

14年ソチ五輪の解説にあたりスケート関連のサイトは毎日チェック、米選手全員と話して準備した

「解説を別次元へ上げた」

米国で人気のあるテレビ番組は常に、公開デート、金持ちの私生活ルポなどの"リアリティーショー"だ。ここからヒントを得て、1998年長野五輪女子金メダルのタラ・リピンスキーと組んだ14年ソチ五輪のテレビ解説は革命的だった。

20代半ばの中堅選手に「ジャンプは世界トップ級でも芸術性はジュニア」、メダル候補に「この曲は彼には重すぎる」。話題になったのは米国ペアへのコメント。「売れないと破産するかのように、プログラムを見せたね。素晴らしかったけれど、アイスダンスはフィギュアにおけるクジャクのような存在だから、ゴージャスに演じないと」

嘘は言っていないけれど本質もついていない、という従来の解説を覆す「タラ&ジョニー」の本音トークは、フィギュアに興味がない視聴者をも引き付けた。「視聴者を楽しませるのも仕事の一部。今、米国でフィギュアは人気と言えないし、これまでの解説は退屈だった」。聞いている方が心配になるような発言もあり、「日本じゃ絶対言えない」と笑う。

「すごい」「難しい」と曖昧な説明が多かった技術の説明も明瞭で、洗練されていた。「ジャンプを着氷した時、雪がフワ~っと氷上に舞ったら、回転不足」という具合。ウォール・ストリート・ジャーナル紙などがこぞって「解説を別次元へ引き上げた」と論じた。起用した米テレビ局NBCによると「新人解説者がこれほどインパクトを与えたケースはない」。

ド派手ファッションも貢献

2人のド派手ファッションも貢献した。ピンクやシルバー、レースのドレスにスーツ、ティアラなどキラキラグッズをまとい、巻き髪にメークも完璧。インターネットで旋風を起こし、ソチ後もアカデミー賞などのイベントに招かれる。

スポーツとかけ離れたバラエティー番組になりかねないが、ウィアは選手が最もリアルであり、フィギュアに品は不可欠と熟知していた。「基本的に解説者の仕事は選手を視聴者に売りこむこと。選手がハッピーになるよう、でも僕の意見も言う。両方を可能な限り知的に語るんだ」。スケート関連のサイトは毎日チェック、米国選手とは全員と直接話して準備した。選手からのクレームはゼロだったという。

演技が素晴らしいとき、感動で胸がいっぱいになったとき、2人はほとんど話さなくなる。ソチ五輪の浅田真央のフリーの時も。「泣いてしまって。マオの復帰は楽しみ。彼女は特別なスケーターだから」。どんな言葉で浅田を迎えるのか。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊7月7日掲載〕

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