2018年8月21日(火)

「現金お断り」の格安自販機 JR東が不振打開へ一石

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2015/8/10 6:30
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日経情報ストラテジー

 「現金購入お断り」という常識破りの作戦で、飲料自販機に新風を吹かせようと試みる動きが出てきた。仕掛けたのはJR東日本子会社の飲料自販機運営会社、JR東日本ウォータービジネス。電子マネー「Suica(スイカ)」しか使えない新型自販機を、このほど東京都内の22駅に24台設置した。狙いは消費増税以来続く販売不振からの脱却だ。

JR東日本ウォータービジネスが都内のJR駅に設置した、SuicaなどICカード決済専用の飲料自販機

JR東日本ウォータービジネスが都内のJR駅に設置した、SuicaなどICカード決済専用の飲料自販機

 電子マネーならではの自由な価格設定により、最大9円と小幅ながら現金機よりお買い得。年代や性別といった匿名データを分析して販売品目も見直す。待ちから攻めの姿勢へ――。しばらく大きな動きがなかった自販機ビジネスが激変する可能性もある。

■黒いシールでふさがれた現金投入口

 「なんだ、この自販機。お金どこに入れるんだろうか」。池袋や東京、渋谷など都内の主要駅に並ぶ、鮮やかな緑色にデコレーションされたある自販機。通りすがりの若者が驚いたのも無理はない。コインや紙幣の投入口が黒いシールでふさがれているからだ。

 実は決済手段は「Suica」や「PASMO(パスモ)」など交通系電子マネーのみ。専用の読み取り装置が前面に付いている。現金と電子マネーを併用できる自販機はこれまでもあったが、駅のような不特定多数が利用する場所で電子マネー専用の飲料自販機を設置するのは異例だ。

 もう一つ利用者の目を引くのが価格設定だ。例えば「伊右衛門」「爽健美茶」「カルピスウォーター」などの500mLペットボトル。駅構内にある他の自販機では160円だが、新型自販機では9円安い151円。「コカ・コーラ」の小型ペットボトルや「ワンダ」「ファイア」といった缶コーヒーは124円と、通常の130円より割安に買える。10円玉以上しか扱えないこれまでの自販機と違って、電子マネーだからこそ1円単位に価格を設定できるわけだ。

 「現金お断り」のSuica専用自販機は現金客の購入機会を逃すリスクもある。なぜ同社は展開に踏み切ったのか。

■販売不振が実現後押し

 構想が生まれたのは2013年ころ。Suicaの旗振り役であるJR東日本の系列会社として、「Suicaで決済したときだけ値引き販売する飲料自販機」を作れれば、Suicaで決済する習慣を自販機でも根付かせられると着想したのが始まりだ。

 ただ当時は、決済手段によって価格を変える「一物二価」の自販機は前代未聞。開発コストが膨大になる恐れがあるため、断念していた。

 再び計画が日の目を見たのは翌2014年のこと。「春の消費増税と夏の天候不順が実現を後押しした」。Suica専用自販機を企画したJR東日本ウォータービジネスの加藤毅取締役は、舞台裏をこう明かす。

 同年春に消費増税が行われ、1円玉が使えない自販機では全体で3%の値上げになるよう一部商品を10円値上げ、一部は価格を据え置いて調整した。結果として、10円値上げした商品は駅売店やコンビニの価格より高く、売り上げが大きく落ち込んだ。追い打ちをかけるように同年夏は例年より日照が少なく、肌寒い日が続いたため冷たい飲料の販売が伸び悩んだ。

 業界団体の日本自動販売機工業会によると、2014年の飲料自販機による清涼飲料水の販売金額は前年比2.1%減。1兆8725億円と大幅な落ち込みを記録した。あまりの不振ぶりに、伊藤園やキリンビバレッジ、アサヒ飲料など複数の大手飲料メーカーは、ホット飲料のピーク期となる2014年秋~2015年初頭に局面を打開すべく、通常140円の商品を100円で販売するなど自販機の値下げ競争に踏み込んだほどだ。

■「駅ナカ」だったことが追い風に

 こうした中でJR東日本ウォータービジネスは、「他社のような極端な値下げは避けつつ、購入しやすい価格設定として自販機から離れた客に戻ってきてほしい」(加藤取締役)と判断。1円玉や5円玉に対応する自販機の設置は難しいため、思い切ってSuica専用に改良し、希望小売価格に8%を上乗せした価格設定にするというアイデアを思いついた。

価格は1円単位で設定。同社がJR駅で展開する他の自販機より最大9円安い

価格は1円単位で設定。同社がJR駅で展開する他の自販機より最大9円安い

 同社が運営する飲料自販機は約1万台と少なく、数十万台を運営する大手と価格勝負の消耗戦になると厳しい。しかしながら駅ナカという一等地に置かれていることから、値下げ圧力は小さいと考えた。

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