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スポーツを科学する 首位打者競う秋山と柳田、打率4割に近いのはどっち

パ・リーグの首位打者争いが熱い。西武の秋山翔吾とソフトバンクの柳田悠岐が打率3割8分付近で抜きつ抜かれつを繰り返す。近年にない超ハイレベルなデッドヒートで優位に立つのはどちらなのか。日本記録の更新、そして夢の4割の可能性はあるのか。過去の大打者たちの足跡と比較しながら探ってみた。(記録は6月末時点)

秋山と柳田、3割8分超える高打率

ペナントレースもほぼ折り返しとなる6月末の打率は、秋山が3割8分2厘、柳田が3割8分1厘。ともに5月下旬までは3割5分付近だったが、交流戦に入ったあたりから一気にペースを上げた。

打順が多く回る1番を打つ秋山は6月に3安打以上の猛打賞を8回記録し、1996年のイチロー(当時オリックス)らが持つプロ野球記録に並んだ。74試合で123安打は、130試合で210安打を放った94年のイチローに匹敵する史上最高水準のハイペース。5、6月と2カ月連続で40安打を超えたのも同年のイチロー以来である。

かたや柳田も首位を走るチームの3番打者として猛打を振るう。驚異の飛距離、リーグ最多の四球が象徴する選球眼も兼ね備え、出塁率、長打率はいずれも12球団のトップに君臨する。

甲乙つけがたい活躍を続ける両者のうち、最終的に高打率を残せる確率が高いのはどちらなのか。

歴代高打率打者の成績
打率打数/
規定打席(%)
四死球/安打(%)
秋山.38214020
柳田.38112149
バース
(86年)
.38911248
イチロー
(00年)
.3879438
クロマティ
(89年)
.4018737
ウィリアムズ
(レッドソックス、41年)
.4069581

「安打÷打数」で計算する打率。分母の打数を抑え、分子の安打が増えれば率は上がる。まずは分母の打数から考えてみる。秋山の打数322は両リーグでもっとも多く、規定打席(チーム試合数×3.1)に比べると4割多い。一方の柳田は打数に入らない四球が42。規定打席に対する打数は2割多いだけと、秋山に比べて打数を抑えられている。

歴代の高打率を見てみよう。3割8分9厘で日本記録となっている86年のランディ・バース(阪神)は82四球を選んだ。安打の48%も四死球があり、打数は規定打席の112%だった。パの記録は2000年のイチローで3割8分7厘。シーズン終盤をケガで棒に振ったため、規定打席の94%に収まっている。89年のウォーレン・クロマティ(巨人)は年間規定打席を超える8月下旬まで4割を維持した。主に5番を打ち、打数が増えなかったのが大きかった。

ウイリアムズ、四球の多さで4割超え

米国では41年、4割6厘で大リーグ最後の4割打者となっているテッド・ウイリアムズも打数が規定打席を下回っていた。故障による出遅れ、抜群の選球眼、相手の警戒で安打数の8割にも上った四球の多さが理由だ。大リーグの通算本塁打記録を持つ元ジャイアンツのボンズに至っては04年、230以上の四球があり、わずか135安打ながら3割6分2厘でナ・リーグの首位打者に輝いている。

こうした過去の例に比べると秋山は四球が少なく、打数が膨らんでいるのが分かる。安打数を増やすにはいいが、打率にはマイナスの要素だ。柳田も打数は多めだが、安打に対して49%の四死球は遜色のないバランスである。

分子の安打はどうだろうか。スポーツのデータ分析を手がけ、『4割は打てる!』などの著作があるスポーツ・アクセス(神奈川県逗子市)社長の小野俊哉さんは「大リーグの4割打者の数字を分析すると、4打数以上の試合で固め打ちをしていたという共通点がある」と話す。

四球をある程度増やしても、もっとも多いのは4~5打数の試合。ここで安打を増やすのは絶対条件なのである。41年のウィリアムズは4打数の試合で4割1分、5打数で4割7分8厘と打ちまくった。89年のクロマティも4割を超えていた8月20日時点まで4打数で3割9分8厘、5打数で5割1分1厘の成績を残している。

柳田、最終打席で安打を稼ぎ切れず

秋山と柳田の打数ごとの成績をみてみよう。秋山は3、5、6打数の試合でいずれも4割以上打っている。27試合あった5打数では無安打の試合がない。しかし34試合と"最大票田"である4打数のうち8試合で無安打に終わり、3割3分と打ち切れていない。

秋山と柳田、1試合の打数別でみた今季打率
1試合の
打数
秋山
322打数
=今季
柳田
270打数
=今季
ウィリアムズ
456打数
=41年
なし.500(5).250(6)
.481(8).368(21).377(35)
.331(42).413(39).410(34)
.407(42).337(35).478(20)
.417(8)なし.500(1)

一方の柳田は4打数の試合で4割超、2打数でも5割と打ち込んでいるが、5打数となると3割3分台と物足りなくなる。19試合あった5打数の試合で無安打が8試合もある。また最終打席では19打数6安打の2割6分3厘と稼ぎ切れていない。打数を抑えるのが経費の削減なら、安打を増やすのは収入を増やすようなもの。勝負の行方がみえていることも多い終盤の打席で集中力が落ちているのか。取りこぼしている感があるのはもったいない。

6月末までの打数と安打をみると、秋山は安打が6本多いか打数が15少なければ4割だった。柳田は5安打多いか13打数少なければ大台に届いていた。「たら」「れば」は禁物だが、秋山が四球を15増やすのも、柳田が5安打増やすのも、意識次第では可能性があったように思われる。だがそのハードルは、打数を抑えられている柳田の方がより低かったといえようか。

同リーグの好敵手同士、相乗効果も

高打率を目指すうえで2人のテーマは明白だ。秋山は四球で打数を抑えつつ、4打数の試合での固め打ちを増やすこと。柳田は5打数の試合の攻略だ。2人がまず目指すのは、08年に横浜時代の内川聖一(現ソフトバンク)が記録した今世紀最高打率(3割7分8厘)の更新。その先にイチローのパ記録、バースの日本記録がみえてくる。

夢のシーズン4割の可能性について、小野さんは期待を込めて言う。「8月もしくは9月にバットを振ればヒットという夢遊病のような状態が訪れ、打率5割近くというような状況が1カ月続けば」

7月1日のソフトバンク―西武戦。2人は触発し合うようにともに複数安打を放った。マラソンの競り合いが好タイムを生むように、目に見える好敵手の存在は相乗効果をもたらすもの。球史に残る首位打者争いになりそうな気配が漂っている。

(吉野浩一郎)

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