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アガシに思う、錦織のウィンブルドンでの勝ち方
テニスコーチ ニック・ボロテリー

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2015/7/2 6:30
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テニスのウィンブルドン選手権は四大大会の中でもとてもユニークな場所だ。当日券を買うためにテントで野宿して10~15時間も待つなんて、全豪オープンや全仏オープン、全米オープンではないことだ。最近、スポーツの大きなイベントは企業の広告のために運営しているのか?と思わせるものが目につくが、ウィンブルドンは明確に「伝統を守るため」に運営されている。

92年全英、コーチとして四大大会初V

アンドレ・アガシ(左)のウィンブルドン優勝がコーチとして初の四大大会制覇だった=IMGアカデミー提供

アンドレ・アガシ(左)のウィンブルドン優勝がコーチとして初の四大大会制覇だった=IMGアカデミー提供

広告の看板がなく色が統一された会場の雰囲気、ボールボーイ、ボールガールの準備や態度、芝の調整……。すべてに細心の注意が払われている。様々なルールがあり、おきて破りは許されない。一番有名なのは、試合中の「Quiet, please(お静かに)」だろうか。テレビで見ると、ポイントとポイントの間、シーンとしているのがわかるだろう。これと正反対なのは全米オープン。「Noise, please(音をたてろ)」と言わんばかりだ。これもニューヨーク名物となっている。ウィンブルドンと全米、これは四大大会の中でも両極端だ。

僕がコーチとして初めて勝った四大大会が、ウィンブルドンだった。センターコートで1992年のアンドレ・アガシ(米国)の優勝の瞬間を迎えた。22歳だった彼にとって四大大会初制覇。四大大会の優勝は選手と同様、その選手を育てたコーチにとっても、キャリアとして大きい。新しい扉が開いた場所なんだ。

実は、1勝することすら期待せずに臨んだ大会だった。アガシは直前までゴルフばかりしていて、練習はハードコートで15分打っただけで、芝コートのウィンブルドンに向かったのだから。少しずつ、少しずつ試合を勝ち進み、最後はビッグサーバーのゴラン・イワニセビッチ(クロアチア)をフルセットで下して優勝した。このとき、恒例の男女シングルス優勝者同士のダンスの相手がシュテフィ・グラフ(ドイツ)。後に2人が結婚するなんて、当時は誰も想像すらしなかったよ。

アガシと通じる錦織の天性のプレー

アガシは芝で勝つとは思われていなかった。そもそもウィンブルドンが嫌いだった。17歳で初出場した87年、アンリ・ルコント(フランス)にひどい負け方をし、「芝は牛のものだ」と私に告げると、88~90年の3年間は出場しなかった。91年から気が変わったが、その理由は分からない。それがアガシだ。今でこそ、恵まれない子供のための学校を建て、コート外でも尊敬を集める人材だが、当時はとっても変わっていた。

アガシのプレースタイルは芝では不利だ。錦織圭もそうだが、彼らの「試合を読む目」「フットワーク」「ラケットさばき」は誰も教えることができない、天性のものだ。しかし、キラーサーブと呼べるような、ビッグサーブはない。女子のセリーナ・ウィリアムズ(米国)を見ても分かるだろう? 戦況が不利になったとき、調子の悪いとき、一発ドカンでポイントを奪える武器があるというのはものすごいアドバンテージだ。しかもそれで20ポイントもとれたら、どれだけ心理的にも楽か。

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