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就活サバイバル 100人調査 過酷な「生態」あらわに

今年から就活のスケジュールが変わり、情報収集もままならず、疑心暗鬼になっている就活生は多い。そこで、就活探偵団の新人探偵3人が6月11日から30日まで、延べ50時間以上にわたり、東京主要部で突撃アンケートを敢行。丸の内や有楽町、新橋、品川などで就活生100人に取材した。炎天下も雨の日も、はいつくばって長い就活に耐える学生たちの「今」を紹介する。

100人中38人が内定ゲット

6月11日(木)、汗ばむほどの夏日。新人探偵3人は喜々として東京・大手町の日経本社を飛び出した。これまでの就活生取材は、大学の後輩や就職課からツテをたどっていたが、実際に街に出て就活生を探すのは初めてだ。

早速、成城大4年の女子学生に声をかけた。女子就活生の定番ともいえる白のシャツに黒の上下。ピンクのスマホを片手にさっそうと歩いていたが、話を聞くと不満そう。住宅メーカーの2次面接で落とされたという。

「2次面接で、営業で女性は採用しない方針だというんです。それなら1次の時に言ってくれればいいのに」

アンケート調査では100人のうち38人が、学生をその属性だけで落とす「フィルター」があると感じたと答えた。最も多かったのが学歴フィルターだが、性別フィルターもまだ健在の様子。

探偵団としては、気になるのは内定の獲得率だ。今年から就活後ろ倒しが実施となり、日本経団連加盟の大手企業は、選考活動を8月以降にずらす。影響はどうだろうか。

大妻女子大4年の女子学生は「まだひとつも内定が取れていません。周りの友達も全然。さすがに焦ります」と話す。文京学院大4年の女子学生も「10月の内定式解禁までに1つも取れていなかったらどうしよう」と焦る。一方、大量獲得組も。アメリカ創価大からの帰国生は「9つもらいました」となんなく言ってのけた。

100人調査の結果では、内定を1つ以上もらった人は38人となった。マイナビの5月末の調査によると内定率は25・8%。東京都心部を対象にしている今回調査の方が内定が進んでいる印象だ。

「100人集めろ」デスクの厳命

幸先のよいスタートに見えるが、実際は就活生を見つけるのに苦労した。大手町や丸の内付近は銀行や商社が密集しているのに、路上にはほとんど学生の姿がない。

「100人集めなきゃ見出しにならないよ」というデスクの厳命を思い出しながら、意気消沈して帰社しようと地下道に降りて驚いた。「ここに隠れていたのか」というほどの就活生がいるではないか。小さい頃、昆虫採集に出かけて、大きな石をどけたらありんこが密集していた――あのときの感動がよみがえった。

「地下の方が道がわかりやすいですから」。お茶の水女子大学生活科学部の学生はこう説明してくれた。確かに地下は地図が掲示されてあり、どの出口から出ればどのビルにたどり着けるかわかる。そういえば、東京駅周辺の路地で、スマートフォンを片手に道に迷う地方出身の就活生から道を聞かれたことがあった。東京に慣れている首都圏の就活生は要領よく地下を移動し、地方出身の学生は地上で汗をかく。思わぬ「情報格差」が浮き彫りになった。

就活カフェでバイトしながら就活

6月22日(月)、品川。羽田空港への京急線や東海道新幹線がとまる品川駅は、スーツケースを持った就活生が目立つ。港南口で出会ったのは北海道大学に通う女子学生だ。IT系の企業に内定をもらっている彼女。今日はその内定先の懇親会だったが、交通費は支給されなかったという。それでも彼女は「東京で就職したい」と頑張っている。駅前の階段に座っておにぎりをほお張る姿は少しお疲れの様子だった。

探偵団はその後高輪口に移動し、医療関連企業の内定者懇親会から帰る就活生たちを取材。2時間ほどして再び港南口に戻ると、さっきの北大生がまだ階段に座っていた。カフェに入るお金も節約しているのだろうか。さっきより疲れの色が濃くなっているようにも見える。

東京・六本木で話を聞いた同志社大学の男子大生も、東京ミッドタウンのフリースペースを根城にしていた。富士フイルムの説明会に参加するため上京したという。地方から上京するための交通費や宿泊費を少しでも節約しようとしている。

新宿で会った青山学院大学国際政治経済学部に通う男子学生はたくましかった。

彼は、就活カフェ「就トモCafe」でアルバイトをする傍ら、自身も就活生として日々過ごしている。就活カフェとは、学生が休んだり、パソコンを使う電源を提供してもらったりできる格安の休憩所。彼は就活カフェを含め2つのアルバイトを掛け持ちしているが、それでもお財布はかつかつ。飲み物はコストパフォーマンスの良い2リットル入りのミネラルウオーターを購入し、電車2駅くらいの距離であれば徒歩で移動するという。

アンケートの中で「これまでの就活にかかった費用」を聞いたところ、5万円以上だと答えたのは100人中54人。また、就職情報会社ディスコの調査によると、昨年の就活生が就活にかけた費用の平均は15・1万円とのこと。最も打撃を受けているのが地方大学に通う就活生だ。就活の長期化によって上京の回数も増加。交通費を少しでも浮かそうと高速バスで移動し、中には宿泊費を浮かそうとネットカフェで寝泊まりする女子大生もいる。

イヤホンは何のため?

有楽町で出会ったのは農林中金のリクルーター面接に向かう早稲田大学の男子学生。イヤホンで音楽を聞きながら歩いていた。そういえば、イヤホンをつけて歩く就活生を多く見かける。これまでの経験上、イヤホン学生は話しかけても無視されてしまう確率が高く、敬遠しがちだった。もしかしたら、就活生は悪質なキャッチ(客引き)を寄せ付けないためにイヤホンをつけているのかもしれない。そこで、早大生に「なぜイヤホンをしているのですか?」と質問してみた。

足早に立ち去ってしまう人もいれば、親切に立ち止まってアンケートに答えてくれる学生もいた(東京・有明)

 「イヤホンをつけていれば、企業から電話がかかってきたときにすぐに出られるでしょう」。意外な答えだったが、なるほどだ。次回の面接に関する連絡や、内定が出たとの連絡が来たら、できるだけ早く電話を取りたいと思うのが就活生の心理だ。40代後半のウチのデスクはこう言っていた。

「オレたちの就活のころは、みんなバイトでお金を貯めて、アパートの自宅に留守番電話をつけたよ」

留守番電話なんて死語が出てくるとは思わなかったけれど、1人1台携帯電話を持つようになった現代は便利な半面、外出中もずっと気を張っていないといけない気の毒な状況を生んでいる。就活カフェにいた東北大学理学部の男子学生は、イヤホンつけない派。「誰が見ているかわからないから」だそうだ。もしかしたら面接に向かう企業の社員が見ていて、悪印象を持たれてしまうかもしれない。念には念を、というわけだ。

「キャッチ」が集まる新橋

締め切りも近づいた6月末。集まったアンケートは80枚程度。もう一息だ。

「新橋・汐留地区はどうだろう? ソフトバンク電通、テレビ局も多いじゃない」。時折小雨も交じるすっきりしない天気の下、一行はSL広場のあるJR新橋駅前に立った。よくテレビ番組などでも街頭インタビューが行われる場所だ。ところが就活生は影も形も見当たらず、代わりに思いもしない"人種"に遭遇した。

「スマートフォンの利用方法について特集してるんですが」。近づいてきたのはテレビ局の取材クルー。

「ごめんなさい、同業者なんです」と断ると、今度は30代の男性が寄ってきた。「川崎のタワーマンション物件を扱っているんですが、アンケートに答えてくれませんか」。不動産会社の営業マンらしい。自分もアンケートを断られ続けて2週間。なんだかシンパシーを感じ、思わず答えている自分がいた。なにしてるんだ……。

そういえば、渋谷で話を聞いた学習院女子大学に通う就活生にこうアドバイスされたのを思い出した。

「就活塾のキャッチが多いから、記者さんの名刺を出さないと怪しまれてしまうかもしれないですよ」。就活売り手市場でひところより数は減ったらしいが、就活塾の営業もまだまだ健在のようだ。品川で話を聞いた慶応義塾大学商学部の男子学生も「新橋はアグレッシブな就活塾のキャッチが多いです」。

 新橋は就活生にとって危険地域なんだと、ようやく分かった。他にも「就活中でお金がないことにつけ込んで、夜のお仕事で働かないかと誘われた」(島根県立大学の女子学生)という声も届いている。「内定」という餌を追い求めながら、様々な外敵から身を守る――。まるでジャングルの小動物のような機敏さが求められる就活生がふびんに思えてくる。

「学業の妨げにならないよう」という主旨で今年から実施されている「就活後ろ倒し」。だが実態は、長期化する就活に学生の忍耐力も限界に近づいている。次回は100人の就活生の声から浮かび上がった就活の矛盾を深掘りしてみたい。

(高尾泰朗、中山美里、雨宮百子)

読者からのコメント
30歳代男性(その他)
社会の流れに乗っている時点で楽をしている。
40歳代男性(卸売・小売業・商社など)
虚実入り乱れた情報が例年以上に飛び交っているので、混乱や不安は著しいと思う。早目に見切りをつけられない、内定を集めてしまう人(親からの影響も含め)は更に大変であろう
60歳代男性
自己能力評価について、知識不足の自覚が足らないように思います。
30歳代男性(機械、重電)
空前の売り手市場で企業にこだわらなければ、それほど苦労せずに内定がとれると思います。
30歳代男性(素材)
今年の就活生は説明会や選考開始の時期が繰り下がっているだけで、それ以外は例年と変わりません。複数内定を獲得できる学生もいれば、1社も内定を獲得できない学生もいる、この状況も同じと考えます。
50歳代男性(金融・証券・保険)
就職活動が長くて可愛そうだと思う。もっと学生の時期にしか出来ない事をやらせてあげたい。
60歳代男性(卸売・小売業・商社など)
私の時は4年生の10月解禁(青田刈り禁止;それもかなり厳しく、11月内定解禁でした。短期決戦で精神的にはタフでしたが、1ヵ月間頑張れば後は学業に集中出来た様に思えます。
50歳代男性(放送・広告・出版・マスコミ)
時期的な変化はあっても、企業の採用意欲が高いのだから、これ以上の好条件はないだろう。とにかく、気合いでがんばれ!

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