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ギリシャ騒乱、想定外の影響も

「君は今週も来週も日本時間月曜に東京にいるか」

ニューヨークから確認メールが相次ぐ。

ギリシャ中央銀行(アテネ)=筆者撮影

EUの財政改革案を受け入れるかどうかを問うギリシャ国民投票発表に始まる一連のギリシャ情勢の急転回と銀行休業を受け、東京市場は世界に先駆けてその影響をモロに受ける展開になった。

7月に入り2日の米雇用統計、3日は米国休日、そして5日にはギリシャ国民投票を受け、6日の東京市場の反応にも世界が身構える。いずれも、時間帯として東京市場の寄り付き、上海市場の寄り付き、欧州勢の「アーリー・バード(早起き鳥)」たちが参入してくる午後が注目される。

市場の目線はまず日本株。そして、急落後、利下げを発表した中国の上海株。外為市場でのユーロに向かう。

マクロで見れば、米国市場の関係者は、ギリシャの民間銀行危機が利上げ時期に与える影響を推し量る。仮に9月にギリシャのユーロ離脱と米利上げが重なるような事態になれば、市場の波乱は必至だ。

米利上げ観測が新興国からのマネー流出を誘発する中での上海株の急落劇。ギリシャ発リスクオフと不安の共振現象を誘発したが、前週末の中国利下げ発表により、一抹の安堵感が漂う。とはいえ、スマホの「株投資ゲームアプリ」が「練習用」として400万個も買われるという初心者集団が主導する相場には常に危うさがつきまとう。

このような市場環境では、いやがうえにも日本株の安定度が際立つばかりだ。アイ・ライク・ジャパンとの表現を頻繁に聞くようになった。ギリシャ不安で下げれば、買いたいとのつぶやきが複数聞かれた。

欧州中央銀行(フランクフルト)=筆者撮影

そしてユーロの動向。

常識的には売りしか考えられないが、最近のユーロは変わった動きをする、と欧州市場関係者も首をかしげる。ギリシャ発のリスクオフで、ユーロ・キャリー・トレードが巻き戻され、調達通貨のユーロが買い戻されるシナリオも無視できないからだ。

長期的には、地域共通通貨も所詮は約束事との認識が広まり、信認が薄れることは避けがたい。

円の基調は、これまでどおり対ドル円安の継続と見ており、逃避通貨としての円買いは短期的な現象にとどまりそうだ。

ギリシャ騒乱が、中東系テロ同時期多発と中東・アフリカからの大量難民問題とほぼ同じ時期に勃発したことも不安材料だ。

ギリシャ国民投票の発表前後にクウェート、チュニジア、フランスなどで起きたテロ事件は、過激派組織「イスラム国」(IS)によるラマダン入りを狙った「殉教の教え」の影響を無視できない。今後は不安化するバルカン半島も狙われやすいだろう。

ギリシャ国内でも銀行休業により社会不安が拡散される恐れが出て来た。さらに、バルカン半島最南部のロケーションは、地中海を渡ってくる難民船にとって格好の上陸ポイントである。公務員削減により手薄になっている国境警備の間隙を縫うように、ギリシャを経由地として隣国に散ってゆく可能性が高まる。アテネの新聞戯画だが、ショイブレ独財務相とおぼしき船長が、難民船に上陸許可せずと叫んでいるのに対し、難民船船長が、あなたはギリシャ人を見捨てたではないか、とやり返しているイラストがあった。

難民にまじってIS分子が欧州内に入り込むことだけは、なんとしても避けたい、とのメルケル独首相の思いがにじむ。

ギリシャ情勢の今後だが、投票日までのポイントは2つ。

まず、国民投票は大阪都構想の住民投票なみの僅差となりそうだ。世論調査ではユーロ残留・緊縮やむなし派が多いが、これは相対的に余裕のある人の回答だ。年金カットなどでギリギリの生活を強いられている人たちに世論調査に答える余裕などない。どちらに決まっても、国際債権団との間で不信感の溝が深まってしまった。国民投票の公正な実施を監視する機能も公務員削減による不安を残す。そもそも、国民投票の設問も決まっていない。

次に既にデフォルトは前提の上で、他の南欧諸国への伝染予防措置の検討に議論は移りつつある。経済的伝染は防げるだろうが、反緊縮を唱える新興政党などのイデオロギーの拡散は防げない。

いずれにせよ、事態の展開は予想を上回るペースだ。27日の国民投票発表直後に本欄で「ギリシャ国民投票、銀行閉鎖観測も」と書いたが、早くも現実となった。ユーロ離脱も早まる可能性がある。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://gold.mmc.co.jp/toshima_t/index.html
ツイッター(http://twitter.com/#!/jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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