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社会的投資、増す存在感 連携が生む新たな成果

ソーシャルビジネスは貧困やまちづくり、環境問題など、様々な社会的課題に事業として取り組む。優れた団体や企業を表彰する第3回「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」(主催・日本経済新聞社)は大賞に味の素など3団体(共同応募)を選んだ。5月28日の表彰式とシンポジウムでは400超の応募から選んだ7団体を表彰し、「ソーシャルビジネスを支える社会的投資の最前線」をテーマにパネル討論を開いた。

ARUN合同会社代表 功能聡子氏
グリー副会長 山岸広太郎氏
日本ファンドレイジング協会代表理事 鵜尾雅隆氏
大和総研調査本部主席研究員 河口真理子氏(モデレーター)
河口真理子氏 大和証券グループ本社CSR室長などを経て2012年から大和総研主席研究員。担当分野はCSR、ソーシャルファイナンス、ソーシャルビジネスなど

河口氏 従来はビジネスに対して投資があり、NPO法人に対しては寄付があった。ソーシャルビジネスはその間。収益も期待するが、社会的な活動もする。社会性と収益性の中間にあると考えられる。より大きなお金を動かすうねりが生まれている。自己紹介も兼ねて皆さんに今取り組んでいることをうかがいたい。

鵜尾氏 私は神戸市の出身で、1995年には阪神大震災があった。震災には130万人以上のボランティアが来て、3年後にNPO法が成立した。社会のために何かをしようという流れがどんどん出てきて、今につながる。この数年、ソーシャルセクターでは意欲的で成果を上げる人々が出てきた。ただ、肉はできてきたが血が流れていない。お金が続かない。一人でも多くの人を救うにはお金も大事。「社会的課題の解決とお金」というテーマに向き合うことが必要と考え、2009年に日本ファンドレイジング協会をつくった。

功能氏 私たちは途上国の社会起業家と日本をつなぐ、社会的投資の事業を09年に始めた。世界の貧困や紛争、環境問題を解決するのに援助や寄付だけでは不十分だと今、考えられている。私は10年ほどカンボジアに住んでいた。最初に行った時は内戦が終わって復興が始まった直後。それから10年間で大きくカンボジア社会が変化した。その担い手の一つがソーシャルビジネスだったと思う。

「ソーシャルビジネスを支える社会的投資の最前線」をテーマにパネル討論した

山岸氏 グリーは3年前に企業の社会的責任(CSR)事業を始めた。ソーシャルビジネスは我々がやっているベンチャービジネスと同じようにアントレプレナーシップ(起業家精神)があって、共感できる。だがいろんなプレーヤーがいる中で、誰を応援すればいいのか分かりにくい。より良いソーシャルビジネスを評価するためのプラットフォームが大事だと思い、日本経済新聞社と一緒にこれまで(特別協賛の形で)「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」をやってきた。

鵜尾氏 私たちは様々な財源をマネジメントできる、ソーシャルビジネス事業の専門家を育てようとファンドレイザーの資格検定試験をしている。また、社会的企業を対象にした証券市場の形成に向けたロードマップを作成した。子供たちに寄付の教育などもしている。

功能氏 ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士提唱のマイクロファイナンスはほんの一例にすぎず、たくさんの社会課題を解決するビジネスがどんどん起きている。特に優秀な若者たちがチャレンジしている。私たちが投資しているのはインドのへき地の農村に医療を届ける企業や、無電化地域にソーラーパネルを販売する企業などだ。優秀で能力の高い人に私たちが投資させていただいているともいえる。

鵜尾氏 これだけ財政赤字を抱え課題が増えている中で、行政だけで全部の社会課題を解決するのは不可能。かつ、単体の組織だけでは解決しない。企業や行政、教育現場、メディアなどいろんな人が枠を超えて連携することで初めて策が生まれる。NPOやソーシャルビジネスは枠を超えて連携するのに強いツールだと思っている。

寄付とはひと味違う緊張と共感

功能聡子氏 1995年から10年間、カンボジアに住む。非政府組織(NGO)、国際協力機構(JICA)、世界銀行などの業務に携わった後、NPO設立

功能氏 ソーシャルビジネスとして、投資となると新しい関係が生まれる。寄付では「頑張ってね」「ありがとう」の関係だったものが、「きちんと事業を回してお金を返すことができるのか」といった点で投資家と事業家で意見が食い違うこともある。そういう緊張関係の中で本気で事業に当たり、投資家は応えようとする。事業家のビジョンに投資家が共感を持ち、両者が同じ目線で一緒に働けることがソーシャルビジネスの醍醐味だ。

山岸氏 日経ソーシャルイニシアチブ大賞は今回で3回目となり、効果が出てきているのがうれしい。例えば受賞者のメディアへの露出が3倍になったという効果があった。銀行に融資してもらえたなど信頼性の向上や、事業の拡大にもつながっている。想定以上の効果だ。

 ◇        ◇ 

河口氏 お金にまつわる洞察が色々出てきた。もう少し意見を聞きたい。

面としての広がり目指すとき

鵜尾雅隆氏 国際協力機構(JICA)、外務省、米国NPO、米ケース大学NPO経営管理修士号取得などを経てNPO支援企業を創業。2009年にNPO設立

鵜尾氏 最近、新聞などで休眠預金を社会的に活用しようという話が出るようになった。払い戻しには対応しつつ、社会課題の解決で頑張るプレーヤーに生かしていこうというものだ。日本の全国各地にNPOやソーシャルビジネスの良いモデルが生まれている。日本社会にとって未来の希望だ。だが一つの街でいい事業をやってもなかなか隣町にいかない、全市、全県、全国にいかない。面として広がらないのが課題。

功能氏 鵜尾さんが言った課題と展望は大事。加えるならば、国際協力自体が変わってきている。今までは援助という形だったお金が投資に変わり始めた。しかも投資というと非常に大きな数十億、数百億という額が動いてきたが、もっと小さな規模でも投資が必要になっている。

鵜尾氏 休眠預金が新しいチャレンジの誘発剤になれば非常に良い。それを契機にNPO、ソーシャルビジネスが可視化され、社会的投資が減税されれば、民間資金が流れやすくなる。この業界は自分たちが生み出している成果やインパクトを十分説明してこなかった。これからは良い成果を上げた団体を社会に知ってもらう仕組みや仕掛けが大事だと思う。

功能氏 ソーシャルビジネスの中でマイクロファイナンスは一つの成功例だ。貧困層のために金融サービスを届けることがビジネスとして成立する、投資としてリターンが得られることが分かってきた。ほかの様々な分野でも経済的・社会的なリターンが出るのが知られつつある。こうした新しい投資を支えているのは今までとは違う視点。小規模、長期と様々な投資の動きが出てきている。

山岸氏 我々はこの5年くらいの間に急成長する中で壁にぶつかり、短期的な利益追求ではいけないと企業の社会的責任(CSR)を始めた。2012年には消費者保護という観点からソーシャルゲームの業界団体をつくった。インターネットリテラシーの向上のため、専任の社員が全国の学校を年300くらい訪問して啓発講演をする。教材を作って全国の学校に配っている。

河口氏 今後はどうビジネスを広げていきたいか。

功能氏 社会的投資は意志のあるお金ともいえる。投資が未来に一手を投じるという考えが、どんどん受け入れられていくのでは。特に若い人は自然に受け入れている。日本人とカンボジア人、ミャンマー人の学生との交流プログラムをやっているが、参加した日本の学生がカンボジアの起業家の不屈の魂に触れ、人生観が変わって帰ってくる。それも一つのリターンといえる。単なるお金だけでない、様々なつながりやインパクトを生み出すような新しい社会的投資がつくられていくのではないか。

事業とリンクする哲学が大事

山岸広太郎氏 日経BP、シーネットネットワークスジャパン「CNET Japan」編集長を経て、2004年からグリー取締役、14年から副会長

山岸氏 企業から見たCSRは定量的に判断するのは難しい分、なぜやるのか、自分たちの事業と絡めた哲学が大事だと思っている。この大賞によってより実感するようになったのは、大学やNPOの社会貢献活動を本職で取り組んでいる人たちとの連携が大事だということだ。

鵜尾氏 ソーシャルビジネスはいろんな団体があり、きちんと成果を出してインパクトを出している団体が確実に生まれている。見極める支援者がいると、このセクターは何倍にも加速して育つ。「こういう成果を出しているから応援している」と言ってあげるだけで、同じ1万円を出すにしても何倍もの価値を持って、その人たちのやる気を生み出すのではないか。

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