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打てぬ巨人、強打捨て守り勝つスタイルに変身か

強打の巨人のイメージが一変している。今季はセ・リーグ5位のチーム打率もさることながら、本塁打数はわずか37本(リーグ4位)と過去10年でも極端に少ないペース。主軸にけがが相次いだこともあるが、いまや防御率12球団トップの投手陣と堅守に足技を絡めるスモールベースボールの成否が、貯金1で首位に座るチームの生命線になっている。

打線の重み、ソフトバンクと対照的

6日のソフトバンク戦。試合前、巨人の先発オーダー発表に合わせた鳴り物入りの声援は大音量ながら、サビのない歌謡曲のように"ヤマ場"を欠いていた。「3番ライト・亀井」「4番ショート・坂本」のコールにボルテージが上がらない。柳田、内川、李らにひときわ大きな歓声が上がったソフトバンク側とは対照的だった。

試合も打線の重みの差を象徴するような展開となった。打率3割超や2桁本塁打の長距離打者を並べたソフトバンクは、3~6番が計1安打でも威圧感は十分。四回、その3~6番に「慎重になりすぎた」という杉内が3四球を与えて満塁とし、下位打線に連打を浴びて3失点した。対する巨人は、スタンリッジらの力の投球の前に2点を挙げるのが精いっぱいだった。

巨人は昨季パ・リーグ王者との5~7日のカードで3連敗。16失点のうち、7~9番に11打点を許した。原監督は「(相手)打線が投手陣に圧力をかけていた」と敵ながらあっぱれの表情で振り返りつつ、「5点、6点の勝負ができるようにしなければ」と半分の計8点にとどまった自軍を顧みた。

巨人の
チーム本塁打
本数
06  134  
07  191  
08  177  
09  182  
10  226  
11  108  
12  94  
13  145  
14  144  
15  37(77)  
(注)15年は22日現在。
  カッコ内は年換算

打率2割3分9厘はリーグ5位。最下位を免れているのは、さらに低迷する阪神に助けられているからといえる。昨季の数字に当てはめれば大差をつけられての最下位だ。それでもアーチが乱れ飛ぶ空中戦に活路を見いだせればいいのだが、チーム本塁打も37本とリーグ4位にとどまる。144試合に換算すると過去10年で最少の77本、最も多かった2010年(226本)の3分の1にすぎない。

大砲候補でなく好打者を多く補強

チームトップに並ぶ坂本、長野、片岡の3人でも5本塁打。年11本のペースでしかなく、珍事と呼べそうなほどの超低空飛行だ。だが、長年定着してきた「巨人=強打」の先入観を取り払えば、うなずけない話でもない。この数年、かつての大砲ありきのチーム編成を志向せず、その結果が阿部や村田の離脱や不振で表れてきたのだ。

10年と比べると、本塁打49本のラミレス、34本の小笠原が抜け、44本打った阿部もベテランの域に差し掛かり今季はまだ2本。一方、10年以降に獲得した大砲といえば村田ぐらいで、この間フロントはむしろ井端、片岡、金城といった巧打の「いぶし銀」タイプを好んで補強してきた。生え抜き選手をみても、近年長距離打者をドラフトで上位指名したのは7年目の大田が目に付く程度で、高校通算73本塁打のルーキー岡本が久々の大砲候補だ。

セペダやフランシスコら外国人助っ人がさっぱりという誤算も加わった結果なのだが、強打からの脱却はセの「野球の質」に合わせてきたゆえでもあるのだろう。交流戦でも如実に表れたのだが、投打ともに力勝負が目立つパと違い、セでは投手が誘い球でコーナーを突いて打者の目先をかわす傾向が年々強まっている。ぶんぶん振り回す打者は術中にはまりやすい。

4月11日、巨人の「第82代」4番打者に選ばれ、「(4番でなく)4番目の打者のつもりで打つ感覚」と所信表明した坂本にしても大砲ではない。内角のさばきが抜群にうまく、広角に打てるこの右打者を4番に据えたのも、華のある本塁打に背を向けてまでもV4を取りにいくという原監督の決意の表れではなかったか。

巨人の主力打者成績
打率得点圏
打率
本塁打
阿部14.248.26119
15.265.233
亀井14.296.357
15.292.286
長野14.297.35813
15.234.200
坂本14.279.32816
15.270.300
村田14.256.26221
15.237.129

(注)15年は22日現在

原監督の想定を超えた勝負弱さ

もっとも、長打の減少は予想の範囲内でも勝負弱さは指揮官の想定をはるかに超えた。「あと1本が出なかった」。原監督は今季何度も漏らした敗戦の弁を、いっそ録音して使い回したい気分かもしれない。得点圏打率で及第点といえそうなのは、主軸では坂本(3割)、亀井(2割8分6厘)ぐらい。2割の長野は昨季の3割5分8厘から大きく落ち込み、阿部も2割3分3厘、村田に至っては1割2分9厘といずれも過去5年で最低だ。

本来なら主軸が不振の間に頭角を現してほしい若手も伸び悩む。4月末から10試合4番を任された大田は打率こそ2割9分近いが、得点圏打率は1割9分。楽な場面の打席では長打も出るのに、好機では慎重になりすぎて追い込まれて三振したかと思えば、焦って厳しい球を打って凡打の連続。今季は打点2にとどまり、8~9番の下位起用がもっぱら増えた。

途中出場した3日のオリックス戦では好機でボール球に手を出し続けた揚げ句、空振り三振。2打席目となる九回のサヨナラ機で代打を送られ、原監督に「(大田)泰示は何球ストライクを打ったのかな?」と名指しで苦言を呈された。

4月に1軍昇格し、3番や1番でブレークしかけた橋本もすっかりフォームが縮こまり2軍落ち。堂上も守備に難があって定着できない。開幕から注目された外野手争いは、いまや調子が落ちた人から2軍に去って行くような「後ろ向きの競争」状態で、最近は40歳の高橋由の起用も目立っている。

「リ・スタート打線」で奮起願う

迫力満点の打線によるスカッとした大勝に慣れたファンには物足りないかもしれないが、一転してきめ細かさが際立つ。坂本や吉川らが好守で何度もチームを救い、終盤の守備固めも抜かりがない。「走る職人」の鈴木を接戦の終盤でも温存し、投入時期をなお見極める原監督の采配などは詰め将棋のようで見応えがある。

今季はスモールベースボールへの転換を象徴する節目の年か、はたまた大田や岡本らが育つまでの過渡期か。いずれにせよ打線の体たらくは放置できないはず。「このままで終わってはいけないと誰もが思っていると思う。みんなが0打数0安打の気持ちで」と交流戦後、同一リーグ戦の再開前に語った原監督は、「リ・スタート打線」と名付け奮起を願った。

(西堀卓司)

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