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水素を安く大量に 呉越同舟で挑む世界初の供給網

NEDOが主導、7社が参加

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は今月、海外で水素を製造・貯蔵して日本へ運んで使う水素エネルギー利用システムの開発に着手した。大手プラントメーカーやゼネコン(総合建設会社)などが連携し、水素を使った大規模発電などの実現を目指す。世界初の水素サプライチェーン(供給網)の構築に向け、日本企業が呉越同舟で挑む。

6年間に400億円かけシステム開発

川崎重工業は昨秋、水素の液化プラントを作った

「普段は競合する企業もいると思うが、水素社会実現へオールジャパン体制で取り組みたい」。9日の記者会見でNEDOの土屋宗彦理事は語った。

NEDOは2020年度までの6年間に総事業費400億円をかけてシステム開発に取り組む。4つの開発テーマを設定し、7社が参画する。そのうち競合企業は、類似のテーマでそれぞれ開発を進める川崎重工業と千代田化工建設の2社のことだ。

川崎重工はオーストラリアで褐炭と呼ばれる安い炭を燃料に水素を作り、液化して海上輸送する供給網の構築を目指す。水素をセ氏マイナス253度に冷やして液化して運ぶため、特殊なタンカーの開発に取り組む。液化水素の海上輸送ルールがないため、海事機関との調整も同時に進める計画だ。

千代田化工建設は大型の実証プラントを建設する予定だ(写真は既設デモプラント)

一方、千代田化工は海外で作った水素をトルエンと混ぜて液体の化学品にして運ぶ仕組みを作る。化学品になるため、既存のタンカーで輸送できるが、化学品から水素を取り出す(脱水素)には大量の熱エネルギーが必要で、装置の耐久性や処理能力の向上が課題とされる。

「昨年11月に国産初の水素液化装置を開発するなど、着実に進展している」(川崎重工の西村元彦水素チェーン開発センター副センター長)。「今のデモ機より処理能力が数百倍の脱水素実証プラントを作る」(千代田化工の遠藤英樹水素チェーン事業推進ユニットGM)。両社とも鼻息は荒い。

産業用の水素発電を期待

両社が熱を上げるのは、昨年末に市販化した燃料電池車(FCV)の普及が理由ではない。水素が大量消費される産業用水素発電の実用化を期待しているためだ。

各社が呉越同舟で水素社会実現に取り組む(9日、東京都千代田区)

「天然ガスだけの火力発電より、二酸化炭素(CO2)を6%減らせる」。そう意気込むのは三菱日立パワーシステムズの谷村聡・高砂ガスタービン技術部技監・主幹技師だ。

同社は水素と天然ガスの混焼ガスタービンを研究開発する。水素を2割程度混ぜても出力30万キロワット程度の電力を安定して作れるようにする。

経済産業省が昨年策定して水素社会実現に向けた工程表では、30年ごろに発電事業用水素発電の本格導入を掲げている。現在の国内で流通する水素は国内の製鉄所や石油化学プラントの副生水素などで賄っているが、水素発電が実用化すれば燃料となる水素は足りなくなる。

そのために海外から安い水素を大量調達する仕組みが必要で、「世界でも例のない先進的な技術開発案件として今回のプロジェクトがある」(NEDOの大平英二主任研究員)という。

最終年は東京五輪の年、日本の技術を内外に発信

NEDOは1970年代の石油危機を受けて、石油代替エネルギーの推進を目的に80年に設立。設立当初から水素エネルギーの研究開発に取り組んできた。

今回のプロジェクトの最終年となる20年は、東京五輪が開かれ、選手村のエネルギーを水素で賄ったり、移動手段として燃料電池バスを走らせたりする構想も出ている。

水素社会への挑戦は日本のエネルギー技術の歩みと先進性を内外に示す役割も担っており、今回のプロジェクトも成否に注目が集まる。

(企業報道部 榊原健)

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