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ハンディが生むワイルドなパ・リーグ

プロ野球のセ・パ交流戦が終わった。昨年まではカードごとに各チームの本拠地で2試合ずつ計24試合を戦っていたが、今年からは片方の本拠地での3連戦だけで1チーム当たり18試合に減った。シーズン全体の日程などを考えてのことなのだろうが18試合は少ない。

交流戦が始まったころは各チームの本拠地で3連戦ずつ36試合やっていた。18試合ではあっという間に終わってしまい、正直なところ、物足りない。ホームと敵地では戦いやすさが違うし、勝率も変わる。公平を期すためにも、最低24試合はやるのが望ましいのではないだろうか。

個性派の強打者、パにはわんさか

試合に目を向けると、今年もパ・リーグは強かった。61勝44敗3分け、これまで11年のうち10回はパが勝ち越した。最高勝率チームはソフトバンクで、過去にはパのチームが8回優勝している。

数字だけでは測れない差も感じた。最も違うのは打線の破壊力だ。例えばソフトバンクの柳田悠岐。横浜スタジアムのDeNA戦ではセンターへの特大弾でスコアボードの上部を破壊し、ナゴヤドームの中日戦でも1試合2発でパワーを見せつけた。この3連戦では中日が1勝したものの、ソフトバンクの試合をめったに見る機会のない名古屋のファンは「すげぇな」「とんでもないな」と度肝を抜かれていた。

柳田のフルスイングは空振りであってもファンを沸かせる。あのアッパースイングはお世辞にも美しいとはいえないし、野球少年のお手本にもならないが、見ているだけで楽しい。パにはそういうプロらしい個性派の強打者がわんさかいる。

西武の「おかわり君」こと中村剛也、大地に根の生えたような構えからのフルスイングで、小さな体で豪快なホームランを打つ森友哉、日本ハムの中田翔……。セにもDeNAの筒香嘉智やヤクルトの畠山和洋といった長距離砲がいるが、彼らはきれいなスイングをしようとするところがある。野性味にかけてはパの打者にかなわない。

「スーパーエース」もパから続々

「スーパーエース」と呼ばれるような好投手もパから出ている。最近では西武時代の松坂大輔(現ソフトバンク)、米大リーグに渡ったダルビッシュ有や田中将大、オリックスの金子千尋もそうだし、今年は日本ハムの大谷翔平もそうなりつつある。こうしたスケールの大きな選手がパに目立つのはドラフトのクジ運とばかりは言い切れない。両リーグでプレーした自分の経験から両者の違いを考えてみると、「ハンディ」というキーワードが浮かび上がってくる。

パというのは何かにつけてハンディキャップを背負わされている。打者にとっては球場の広さだ。コボスタ宮城や札幌ドーム、ホームランテラスができた今年は狭くなったが、ヤフオクドームも広かった。反対にセの球場は会心の当たりでなくてもホームランを打てる。東京ドームに横浜スタジアム、神宮球場、少し前でいえば広島市民球場と長距離打者にとっては「おいしい球場」のオンパレードだ。

交流戦でセの球場に行くのは待ち遠しかった。相性のいい神宮球場と東京ドームが続いたときなどは「キター!」という感じ。僕が交流戦で打った42本塁打は今年の交流戦前時点で5位タイ。1試合打てないだけで損をしたような気分になったものだ。逆にいえば、パの打者は普段、簡単にはホームランを打てない球場でプレーしているわけで、あのフルスイングはそうした環境が育てている面もある。

ハンディはグラウンドの外にも

投手にとっては指名打者(DH)というハンディがある。投手が打席に立つセでは下位打線が弱く、アウトを計算できる。点が入りにくい分、試合序盤から送りバントを多く使う傾向があり、投手にすれば簡単にもらえるアウトが増える。かたやDH制のあるパでは下位にチャンスメークできる打者をおき、上位につなぐという打順の組み方をすることも多いから気が抜けない。一度捕まると大量点になりやすく、セでは安全圏と思っていた3~4点のリードがあっという間に追いつかれることがあった。

代打を出されることはないから、先発投手は多少打たれても長い回を投げなくてはいけない。逃げることは許されず、たくましくなっていく。もしかすると監督は、継投や代打策の腕が問われるセの方が鍛えられるのかもしれないが……。

ハンディはグラウンドの外にもある。全球場が新幹線の沿線にかたまっているセに比べ、パの本拠地は北海道から九州に散らばっている。それも空港やターミナル駅から遠い球場が多く、移動の負担だけでも大違いだ。仙台の寒さや千葉の強風にも勝たなければいけない。

契約の傾向も違う。セの球団は過去の実績や貢献を考慮して、1年ぐらい働かなくても"執行猶予"をつけてくれる。このあたり、パの球団はドライで容赦ない。僕は楽天時代、1年ダメだっただけですぐにクビになってしまった。甘えは許されず、選手は結果を出し続けないと生き残れない。その代わり、活躍すれば年俸はガーンと上がる。

セに対する反骨精神、いまだ残る

ハンディを克服して強くなったのは、営業面にも当てはまるのではないだろうか。マスコミに騒がれ、放っておいてもファンが来てくれるセに対し、パは各球団の地道な営業努力でファンを増やしてきた。移転先で根付いた日本ハム、楽天、ソフトバンクは見事な例だ。

以前は「人気のセ、実力のパ」といわれた。ドラフトの前、目立ちたがり屋の僕は巨人志望で、地味なパは絶対嫌だと思っていた。中日からオリックスに移った時は閑散としたスタンドを見て、パにやって来たと実感したものだ。かつてのような人気の格差はなくなった今でも、パの選手にはどこか「セを相手に一旗揚げて目立ってやる」という反骨精神が引き継がれているように感じる。

恵まれているというのはいいことばかりではない。反対に注目度が低いというのも、それはそれで伸び伸びやれるという長所がある。今、もう一度ドラフトされるなら、パに行くのも悪くないと思う。昔ほど地味でもなくなったことだし。

(野球評論家)

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