着工後に入札ミス判明 "誤った"落札者で工事続行
高知県は2015年6月15日、2014年12月に実施したトンネル工事の入札で予定価格を誤って設定し、落札するはずだったJVを失格にしていたと発表した。落札した別のJV(共同企業体)が既に着工しており、入札をやり直すと工事が大幅に遅れることから、そのまま続行することにした。県によると、本来の落札者であるJVには謝罪をし、了承を得ているという。
落札者の選定を誤った結果、契約価格は本来の落札価格より360万円高くなった。県ではこの360万円について、落札者に減額修正の協議を申し入れるという。
工事を受注した落札者に落ち度はなく、工事費を減額する法的な根拠はない。それでも県は、「減額に応じる義務はないが、何とか協力してもらいたい」(土木部建設管理課)としている。
「情報開示請求で明らかに
入札でミスがあったのは、「国道439号社会資本整備総合交付金(木屋ケ内トンネル)工事」。高知県四万十町内に長さ271mのトンネルをNATM工法で築く工事だ。トンネルの標準的な断面は幅9.25m、高さ5.8m。工期は2015年3月26日から16年8月31日まで。
予定価格を9億93万1000円(税抜き、以下同じ)、調査基準価格を7億9534万3000円とし、総合評価落札方式で入札を実施した。
2014年12月に開札し、参加した8JVのうち調査基準価格を下回った5者を失格とした。残る3者のうち、入札価格が7億9800万円で、評価値が最も高かった四国開発・南国建興・テスクJVを落札者に決定。県議会の承認を受け、3月に本契約を締結した。

予定価格の誤りが分かったのは2015年4月。落札できなかったJVのうちの1者が、情報開示請求した資料によって不備に気付き、県に指摘した。これを受けて県がチェックし、5月に積算ミスが判明した。
施工するトンネルでは過剰となる送風機や集じん機を選んでいたので、機器のリース費用がかさんだ。適正な機器を選んだ場合に比べて、予定価格が約425万円、調査基準価格が約377万円、それぞれ高くなった。
積算ミスがなければ調査基準価格が低くなるので、失格となるのは1者だけのはずだった。本来は失格とならない4者も含めると、轟組・三谷組・田邊建設JVの評価値が最も高くなる。轟組JVの入札価格は7億9440万円。落札した四国開発JVよりも360万円安い。
「疑義申し立て期間」設ける発注者も
最近、積算ミスが相次いでいることから、開札後、正式に落札者を決定するまでの間に、ある程度の「疑義申し立て期間」を設ける発注者が多い。予定価格の疑義などについて、その期間内に入札参加者から報告を受ける仕組みだ。この制度によって、積算ミスの多くは契約前に見つかっている。しかし、高知県ではこのような制度は設けていなかった。
(ライター 山崎一邦)
[ケンプラッツ 2015年6月17日掲載]