2019年5月23日(木)

オワハラ 行き過ぎた「愛」は成就するか

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2015/6/18 6:30
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 初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。

「就活生の間で『オワハラ』が恐れられています。実際に自分が遭遇したら、うまく対処できるか不安です」

「オワハラ」とは企業が学生に内定や内々定を出すことと引き換えに就職活動を終えるように強要する「就活終われハラスメント」を略した造語だ。一躍2016年卒就活のキーワードに浮上している。相談を受けて、調査に向かった。

■「そろそろ電話しようか」

「『内々定を取り消す』と言葉には出さないものの、ものすごいプレッシャーでした」。ある私大に通う男子学生は4月に大手テレビ局の選考で受けた体験を振り返る。

人事から「内々定した」との連絡を受けて会社に駆けつけると、面接室に「現在選考が進んでいるテレビ局一覧」というリストが掲げられていた。丁寧に各局人事部の電話番号まで書き込まれている。実は内々定をもらったこの局は彼にとって第2志望。第1志望の局がリストに含まれていた。「この中に、選考を受けている会社があるよね。そろそろ電話しようか」と促され、泣く泣くその場で第1志望先に電話し、辞退を申し入れた。

別の都内の私大男子学生は6月、アパレル大手の最終面接で「他社の選考を全て辞退すれば内々定を出す」と言われた。ただ、本命企業の選考はまだ始まってすらいない。「少し待ってほしい」と返事をしたのだが、数日後この会社から届いたのは不採用を知らせるメール。「この段階で結論を出せと言われても」と納得がいかない様子だ。

今年度の新卒採用は選考開始を8月1日とする経団連の指針を守る一部の大企業と、既に内々定を出し始めている外資系やIT系などの非経団連系企業との間で選考時期のズレが鮮明になっている。こうした選考時期の違いに、学生優位の売り手市場という環境が重なり、早めに動き出した企業が学生を囲い込もうとオワハラ行為が過熱している。

マイナビが今年2月に1949社を対象に実施した16年卒の採用予定調査によると、内々定辞退対策として「他社選考の辞退要請」を行うと回答したのは全体の5.4%。業界別ではマスコミ(11.8%)や金融(8.1%)、企業規模別では従業員5000人以上の大企業(9.7%)の回答割合が比較的高く、オワハラ気質が強いといえそうだ。

■「オワハラ」ブームに仕掛け人

もっとも企業が他社選考を辞退させたり、内々定後に懇親会や研修と称して学生を拘束したりする行為は昔からある話。こうした行為を「オワハラ」と命名し、あらためて社会の関心を呼び寄せた仕掛け人がいる。

オワハラがクローズアップされたのは、就職活動の制度改善に取り組むNPO法人DSS(東京・千代田)が今年3月にYouTubeに投稿した、「『就活終われハラスメント』とは?」という1本の動画がきっかけだ。代表の辻太一朗氏は「オワハラを放置していたら採用活動で企業の『早い者勝ち』が助長され、就活時期の早期化に歯止めがかからなくなる」と語る。

文部科学省もオワハラ是正に乗り出した。大学を通じて学生が受けたオワハラ事例を定期的に集計し公表することで、オワハラを抑止しようとしている。学生・留学生課の渡辺正実課長は「一部の企業が過度な行為によって学生を囲い込むのは、採用時期を守っている正直な企業や学生が損をしてしまい、フェアではない」と話す。

もともと今年度の新卒採用時期の後ろ倒しは、政府が経団連に要請して決まった経緯がある。オワハラを放置したままでは、わざわざ就活時期を後ろ倒しにした政策の意義も問われかねない。そんな大人の事情も「オワハラ」ブームを盛り上げる。

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