ファナックがロボットにディープラーニング技術導入へ

ファナックは、ニューラルネットワーク技術の一種であるディープラーニング(深層学習)技術や機械学習を手掛けるベンチャー企業であるPreferred Networks(PFN)と提携した。今後、ディープラーニング技術を自社の産業用ロボットや工作機械などに応用すべく、PFNと共同で技術を開発していく。
2015年6月10~12日に開催中の「Interop Tokyo 2015」において、PFN代表取締役社長 最高経営責任者の西川徹氏が基調講演の中で明らかにし、その後、同日開催されたファナックとの共同記者会見にて詳細を説明した。ファナック ロボット事業本部長 専務取締役の稲葉清典氏はPFNへの出資についても「可能性を含めて検討している」と述べた。
PFNは、ディープラーニング技術で国内随一の技術力を持つ企業である。産業用ロボットの大手企業と、ディープラーニング技術のトップ企業が組む意義は大きいといえる。PFNは自動運転分野では既にトヨタ自動車と協業関係にある。
適用対象は、産業用ロボット、工作機械、射出成形機など。現状では、基本的にプログラミングによってロボットの動作を決めているが、これをディープラーニング技術により学習によって導き出せるようにする。人間では気付かないような動作をディープラーニング技術によって発見し、従来以上のものづくりの最適化の実現を狙う。
具体的には、ロボットや工作機械の予防保全、複数ロボット同士の協調動作などに適用する。従来の予防保全は異常の兆候を検出するためのルールは人間が設定してきたが、これを機械学習ベースで行う。複数ロボット同士の協調については、例えば10台のスポット溶接ロボットを協調動作させてサイクルタイムの短縮を実現したり、1台が故障などで停止した際に残りの9台でラインを止めずに溶接を続ける方法を見いだしたりする。
PFNの西川氏は「Industry 4.0では、センサーデータの収集と分析までに留まっている。我々はその先の『beyond Industry 4.0』の世界、複数ロボットの協調やロボット自体の制御にまで踏み込み、ものづくりの超インテリジェント化を目指す」と語った。
ディープラーニング技術としては、教師なし学習の一種である「強化学習(reinforcement learning)」を用いる。
なお、PFNは同日、パナソニックとの提携も発表した。自動運転やデジタル家電などにディープラーニング技術を適用することを狙う。
(日経Robotics 進藤智則)
[日経テクノロジーオンライン 2015年6月11日掲載]
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