2019年2月17日(日)

インテル「2兆円買収」で手に入れる3つの未来
伊藤元昭 エンライト代表者

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2015/6/10 6:30
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日経テクノロジーオンライン

米Intel(インテル)は、FPGA(ハードウエアの再構成が可能なIC)メーカー大手の米Altera(アルテラ)を現金167億米ドルで買収する。1株当たり54米ドルという買収金額は、両社の交渉が初めて報じられた2015年3月27日の前日の株価である34.58米ドルよりも56%高い。かなり高評価での買収である。

図1 AlteraのFPGA「Stratix 10」

図1 AlteraのFPGA「Stratix 10」

今回の買収話が明らかになった時、業界アナリストの多くは、比較的冷ややかな見方をしていた。パソコン向けマイクロプロセッサー市場に比べてFPGAの市場規模が小さく、噂される買収金額の割に売上高が少ないと見たからだ。確かに、過去また現時点での売り上げだけで見れば、そのような評価も当然である。

しかし最近のFPGAの用途の急拡大を見ると、今回の買収は決して"王様のお戯れ"などではないことが分かる。

過去に組み込みシステムの一部品に過ぎなかったFPGAは、今や今後の電子産業全体をけん引する可能性を秘めたチップとして脚光を浴びている(図1)。一説では、仮に今回の買収交渉が不調に終わった場合、Intelは敵対的買収も視野に入れていたという。同社にとっては、生き残りを掛けてなりふり構わず仕掛けた大戦略なのだ。

■スマイルカーブの底に沈む危機

なぜIntelは、それほどAlteraの買収に必死だったのか――。今のコンピューティングの世界でのシステムの価値について、次のような簡単な図を描いて考えると合点がいく(図2)。横軸にシステムの規模の逆数を、縦軸にシステムの価値を取った場合、現在のシステムの価値はいわゆるスマイルカーブのような曲線を描く状況になりつつある。

ムーアの法則」に沿ってマイクロプロセッサーの性能が伸び続けていた時代には、システムのダウンサイジング化の流れに乗って右へ右へと伸び、システムの価値は右肩上がりの曲線を描いていった。これがインターネットが普及した2000年代前半になると、サーバーを置くデータセンターの価値と個人保有の端末の価値が押し上げられた。そして、クラウドコンピューティングの時代となった今、片側にサーバーの集合体であるデータセンターを置き、もう片側にスマートフォン(スマホ)もしくはIoT(Internet of Things)関連の端末を置いたスマイルカーブを描くようになっている。

図2 コンピューティングのスマイルカーブ

図2 コンピューティングのスマイルカーブ

Intelのマイクロプロセッサーは将来、このスマイルカーブの底に落ちてしまうという危機感を抱いていたのではないか。

同社のサーバー向けマイクロプロセッサーの売り上げは、2015年1~3月期(第1四半期)には営業利益の半分以上を占めている。スマイルカーブの価値の高い口角の一端を確保しているかたちだ。

ところが、現在絶好調のサーバー向けの分野で、処理エンジンをマイクロプロセッサーからFPGAに移行する動きが急速に進展していくことが明確になってきた。マイクロプロセッサーとFPGAで電力当たりの性能を比較した場合、検索処理では約10倍、複雑な金融モデルの解析では実に約25倍もFPGAの方が性能が高いという。

もう一方の口角の一端であるスマホ向けのマイクロプロセッサーの分野は、英ARM(アーム)の牙城であり、簡単に取って代わることができない。このままでは、スマイルカーブの底に位置するパソコン向け市場だけが同社に残された格好になってしまう。

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