東京五輪、スポンサー契約続々 IOCも驚くペース
快走・五輪マーケティング(上)
五輪マーケティングで日本の存在感が増している。今年1月から始まった2020年東京大会のローカルスポンサー契約が早くも五輪史上最高額を更新し、国際オリンピック委員会(IOC)の最高位協賛でも日本企業が相次いで決まっている。その戦略や五輪協賛の価値は――。東京組織委マーケティング局長の槙英俊氏に聞いた。
――大会組織委員会の最高位スポンサー「ゴールドパートナー」契約が既に13社。目標の1500億円を上回った。

「金額は言えないが、10社が当面の目標だったので早々に超えたことはうれしい。12年ロンドン五輪の最高位スポンサーは7社だった。IOCからも『史上最速のペースだ』と驚かれている」
「特にみずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループが銀行業種で共存で契約されたのは、海外でかなり驚かれている。五輪マーケティングの基本形が出来上がった1984年ロサンゼルス五輪以降、1社に独占的な権利を与えることが基本原則とされてきたからだ」
――なぜ、慣例を破る手法が取れたのか。
「(独占にこだわらず)オールジャパンで手を携え合って支えていくというのは、日本の文化かもしれない。経営者の方々からも、お国の大イベントにはせ参じるんだという熱意を感じる。単純なスポーツマーケティングとは全く別物の印象だ」
――東京大会は電通が指定代理店を務める。
「電通の存在がシステムとして有効に働いているのは確か。昨年から電通には多くの企業からスポンサーへの関心が寄せられていた。いま決まっている13社は全てその中にあった企業だ。組織委はスポンサー集めをする際、IOCの最高位スポンサーの業種に抵触しない分野に限られるうえ、IOCと交渉してその業種を組織委側に譲ってもらわなければならない。どの業種ならスポンサー需要があるかの情報を持っていれば、業種や金額の設定など戦略は立てやすく、スポンサーを見つけるのも早くなる」
「海外では(大会側と企業側を仲介する)電通のような代理店はいない。組織委自ら販売営業するのが基本で、広告代理店はあくまで企業の代理人。組織委は広告代理店への手数料を削減できるが、営業をかけて契約に至るまで時間もかかるし、リスクも抱える」
――今後のマーケティングの見通しは。
「1社でも増やしたい。最高位のゴールドは来年のリオデジャネイロ五輪開幕前くらいまで営業できると思う。今は全て国内企業だが、外資系企業も入ってくるだろう」
――08年北京五輪でも地元企業がスポンサーに殺到したが、大会後は協賛効果に疑問を感じて熱が冷めたといわれる。過熱の反動は心配ないか。
「企業の方々から感じるのは東京、日本が生まれ変わる機会に参加したいという熱意。契約金額とスポンサーメリットだけをてんびんにかけているわけじゃない。そこが決定的に違うと思う」
(聞き手は山口大介)
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