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ヤフオクドームで本塁打激増、球場がまた狭くなる?

プロ野球ソフトバンクの本拠地、ヤフオクドームでの本塁打が激増している。ホームランテラスと呼ばれる観客席の設置で、広かった左右中間が東京ドーム並みに狭くなったためだ。強打者が減った今、追随する球団も出そうだ。

テラス席と新フェンスの効果くっきり

昨年のヤフオクドームでの1試合平均の本塁打数は1.04。パ・リーグ6球場で最低だった(表1)。ここ数年を見てもパの1試合平均をずっと下回り、「飛ばなすぎるボール」時代の2011、12年は1本を切った(表2)。

(表1)昨年のパ本拠地球場の本塁打数
球場試合本塁打1試合
平均
西武ドーム691191.72
札幌ドーム58851.47
QVCマリン721021.42
京セラドーム58801.38
コボスタ宮城67891.33
ヤフオクドーム67701.04
東京ドーム22442.00
(表2)ヤフオクドームの本塁打数
試合総数1試合
平均
ソフト
バンク
その他
球団

平均
1522502.2728221.50
1467701.0434361.44
1367801.1945351.38
1268490.7229200.99
1168670.9944331.05
10691081.5768401.72

球団は「本塁打を増やして試合をもっとエキサイティングに」と考え、ホームランテラス席をつくり、深かった左右中間を110メートルまで縮めた。5.8メートルと一番高かったフェンスの前につくられた新フェンスは4.2メートルと低くなった。観客席も増やせたわけだから一石二鳥の策でもある。

結果は歴然である。今季ここまで22試合で50本の本塁打が誕生した。そのうちソフトバンクは28本、昨年は67試合で34本だから、激増といっていい。21日のオリックス戦では同球場最多の両軍計8本が乱れ飛んだ。王球団会長は「ホームランはお客さんが一番喜ぶ。ホームランがいっぱい出てホークスが勝つのが一番だね」と語ったそうだ。8本のうち6本がホームランテラス席に入ったから球場改造の効果は抜群といえる。総本塁打数も42で中村、メヒア、森の長距離打者を擁する西武と並んでトップである。

「本塁打量産球場」といわれる東京ドームは両翼100メートル、中堅122メートルと基準通りでも左右中間の膨らみが極端に少ない。エアードームで空気が乾いていてボールが飛びやすいともいわれているが、ヤフオクドームの例をみれば、打球が一番よく飛ぶ方向である左右中間が狭いのが最大の理由だとよく分かる。

(表3)今季の本拠地球場の広さ
球場両翼中堅左右
中間
札幌ドーム100122116
コボスタ宮城100.1122116
西武ドーム100122116
東京ドーム100122110
神宮97.5120112.3
QVCマリン99.5122116.3
横浜94118111.4
ナゴヤドーム100122116
京セラドーム100122116
甲子園95118118
マツダ100122116
ヤフオクドーム100122110

(注)マツダは左翼101、右翼100。単位はメートル

左右中間広い甲子園は本塁打出にくく

現在の球場を見ると(表3)基準を満たしていないのは神宮、横浜、甲子園。敷地の関係で今や小さい球場の代表になった横浜の昨季の1試合平均2.01本は神宮(2.51本)、東京ドーム(2.13本)に次いでセの3位。1位の神宮は07年オフに両翼の客席を削って91メートルから101メートルに広げたが、その後97.5メートルと訂正された。それは別にして左右中間はそのまま112.3メートルだから、本塁打はやはり出やすいようだ。

一方、甲子園は基準を満たしていないが、昨季の1試合平均はセ最少だったナゴヤドームの1.03本をわずかに上回る1.05本。これは左右中間が中堅と同じように広い同球場独特の形状によっている。中堅とほぼ同じ118メートルもあり、これではなかなかホームランが出ないわけだ。早くからラッキーゾーンが設けられていたが、広い新球場が続々と誕生しつつあった1991年オフに撤去された。

ラッキーゾーンといえば、コボスタ宮城は13年からEウィングを設置している。「どうせなら一番広く」と両翼101.5メートルにした球場だったが、収入増と本塁打増を目指して両翼は100.1メートルになり、左右中間も1メートルほど短くなった。それでも広い方だからいいが、ヤフオクドームに追随する動きには反対である。

野球規則には早くから両翼325フィート(99メートル)、中堅400フィート(122メートル)という基準がある。ところが、日本ではまったく守られていなかった。過去の球場(表4)を見ればよく分かる。後楽園球場は両翼のフェンスが高められてはいたが、90メートルもなかった。これでは「日本の野球は米国と違う」といわれても仕方がない。

(表4)過去の球場の広さ
球場両翼中堅左右
中間
後楽園87.8120.7110
神宮
(改修前)
91120112.3
川崎89118105
甲子園
(改修前)
91118113.2
大阪91.6115.8109.7
西宮91.4118.9111.5
藤井寺91120110
日生90.4116107.1
平和台92122110
ナゴヤ91.4118.9111.1
広島市民91.4115.8109.7

(注)両翼や左右中間が異なる球場もある。単位はメートル

外野手の見せ場を奪う高いフェンス

そこで立ち上がったのが79年から2期コミッショナーを務めた下田武三さんだった。当時のプロ野球公式戦を実施したことがある、あるいはやる可能性のある32球場について実測させた。その結果は「野球大国としては恥ずかしいものだった」(下田さん)。なかにはダイヤモンドの角度が90度でないものもあったそうだ。

結果を公表すると当事者をとがめることになるとして、発表はしなかったが、32球場の責任者に「これから新設もしくは改造する場合、基準にそって行ってください」とする野球場整備に関する要望書を出した。それが、新球場建設にはきっちり反映されて、日本の球場も現在のように米大リーグと比べても恥ずかしくない状態になった経緯がある。

記者は下田さんを「日本近代球場の父」と勝手に称している。同氏のせっかくの努力で大きくなった球場をまた狭くするのに反対なわけだ。「両翼は普通でも、日本の球場は左右中間が狭いのでホームランが出やすい」などと、外国人選手にいわれたくない。

おまけに野球ファンとしてドーム球場のあの高いフェンスをどうにかしてほしい。構造上もしくはセキュリティー面で仕方ないのかもしれないが、ホームラン性のライナーを打っても勢いよく跳ね返るため、単打になるのは納得がいかない。本塁打性の打球を捕るという外野手の見せ場も奪っている。広さはそのままに外野フェンスを適当な高さにする方が、本塁打は微増してプレーの迫力は増すのではないか。

(島田健)

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