2018年11月20日(火)

幸福の国ブータン 揺れる幸せの定義

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2015/5/24 6:35
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「国民総幸福(GNH=Gross National Happiness)」--。不思議な言葉だが、聞いた途端にその発想の古くて、新しい響きに打たれる。2008年9月、ブータンのティンレイ首相が国連総会の演説で紹介し、世界に「幸福度を測る」という観点での経済、政治、社会などの見直しの機運が広がった。成長至上主義、市場経済万能の発想に対するアンチテーゼとなった。それはヒマラヤに抱かれ、伝統文化を維持する神秘的な国からのメッセージであったからこそ強い説得力を持っていた。

■5年ぶりの全国幸福度調査

伝統文化を維持する国、ブータン

伝統文化を維持する国、ブータン

多くの人が疑問に持つのは、「幸せ」は測れるのか、ということだろう。健康や経済的な安定、物質的な豊かさ、家族、友人など周りの人々の状況や関係、住む街や国の環境、あるいは人生の目標や趣味など、幸せを形作る要素は多く、幅広い。また、個人によってそれぞれの要素の重みも違ってくる。人生のステージごとにも変化するだろう。そうした難しさを承知のうえで、幸せを測ろうとした点にブータンという国の国民への真剣さを感じる。

ブータンは今年5年ぶりの全国幸福度調査を実施している。調査官が各家庭を回り、聞き取りで幸福度を調べる。質問項目は148にもわたる。すでに調査済みの統計指標をいくつか取り上げて、合成して「幸福度」などの基準をつくろうといった安易な手法ではない。

現地からの映像で印象的だったのは、やはりブータンでも幸せの定義が揺れている様子だった。家族の衣服を洗濯する農村部の主婦は「洗濯機が欲しい」と漏らし、姑が「幸せ度10点満点」と明るく笑う傍らで、「幸せ度5点」と密かに答えていた。伝統的な生活を好みながらも、労働を軽減したいという人間の欲求はヒマラヤの高峰を望む村でも東京やニューヨークと変わらない。年老いた姑自身は数年前に購入した中古のテレビに感激しており、新しいモノへの人間の関心、そこから得られる楽しみを正直に語っていた。そうした人間の根源的な欲求がイノベーションを生み、経済を発展させる原動力になったのも間違いない。

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