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宇宙にもファイアウオール? 「高エネルギー」の壁

日経サイエンス

ブラックホールの構造に関する新説が注目されている。ブラックホールと通常の宇宙空間の境界面に高エネルギー粒子でできた壁「ファイアウオール」が存在するという説だ。このファイアウオールの理論研究から、現代物理学の2大柱である一般相対性理論と量子力学を統合するための新たな手がかりが得られる可能性があるという。

ブラックホールの縁は高エネルギー粒子の壁があるのかもしれない。画像はそのイメージ(提供:Kenn Brown, Mondolithic Studios)

星が大爆発を起こして、その中心部が一気に押しつぶされると、超高密度になった物質は自身の重力によって際限なく収縮し始める。最終的に、爆発を起こした星の中心部は一点にまで圧縮されて密度が無限大となる。この密度無限大の点は強大な重力を生み出し、光さえ逃げ出せない領域が生じる。これがブラックホールで、ブラックホールと通常の宇宙空間との境界を「事象の地平」という。

謎多きブラックホールの縁

ブラックホールに近づきすぎた宇宙船は暗黒の奈落へ落下していく運命だが、宇宙船が事象の地平を通過する時、搭乗している宇宙飛行士自身は何も特別な感じがしないだろうと考えられてきた。一般相対性理論によれば、ブラックホールの重力のなすがままになった宇宙船内部にいる観察者にとって、物理法則はいかなる場所でも同じであり、それは事象地平を通過する時も変わらないはずだからだ。

ところが量子力学をブラックホールに適用してみると、事象の地平ではまったく違った物事が起きている可能性があることが、理論研究によって浮かび上がってきた。米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のJ・ポルチンスキー博士らは、事象の地平には高エネルギー粒子でできたファイアウオールが存在するとみている。事象の地平に差し掛かった宇宙船は何も起こらないどころではなく、ファイアウオールにぶつかって粉々になってしまう。物理法則は時間と空間の存在が大前提となるが、ポルチンスキー博士らの説によれば、時空はファイアウオールのところで終わっていると考えられる。

「ファイアウオールの提案は反論の嵐を巻き起こしたが、満足のいく代案はまだ現れていない」とポルチンスキー博士は述べている。一般相対性理論と量子力学は非常に相性が悪く、その統合は現代物理学の最重要の研究テーマになっている。ファイアウオールの研究によってこれらの理論をより深く理解できるようになり、両者を統合する道筋が見えてくるのではないかと博士は期待している。

(詳細は25日発売の日経サイエンス7月号に掲載)

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