/

ビーコンで顧客追跡 パルコ、改装効果を動線分析で検証

「動線分析」最前線(上)

日経情報ストラテジー
商業施設を買い回る来店客、工場内を走る搬送車、そして現場で働く作業員。ヒトやモノの動きを「動線」として見える化する取り組みが始まっている。動線を分析すると、仕事に潜むムダを解消し、新たな商機が見えてくる。一見、落書きのような動線データを、どう読み解けば成果が生まれるのか。人の流れから店舗同士の「相性」を割り出し、店舗配置の最適化につなげようとしている流通分野の取り組みを紹介する。
図1 パルコで最大の売り上げを誇る名古屋パルコ

パルコで最大の売り上げを誇る「名古屋パルコ」(名古屋市)は、地下鉄名城線の矢場町駅に直結。西・東・南と3つの館を備え、それらを5つの連絡通路でつなぐ(図1)。

2014年秋、名古屋パルコは東館地下1階を改装した。従来、西館地下1階のフロアブランドとしていた「スタイルデリ」を、連絡通路でつながる東館地下1階にも取り込み、東西で分かれるフロアに一体感を打ち出した。この改装によって、スタイルデリの主要顧客である「大人の女性」に、西館だけでなく東館まで足を伸ばしてもらえる効果を期待したのである。

500人超にスマホを貸し出し

改装に合わせ、パルコは電波でIDを発信するビーコン端末「iBeacon」とスマートフォン(スマホ)を組み合わせた動線分析を、改装前の2014年7月と、改装後の同10月の2回、実施した。iBeaconを3つの館、全29フロアに計350個程度設置した。動線分析の狙いは、来店客の足取りを"追跡"し、改装効果の検証や、今後の売り場展開、販促施策の立案に生かすことだ(図2)。

図2 動線分析で改装の効果を見極める

まず全フロアの通路などにビーコンを設置した。途中で動線が途切れたり、電波の干渉を受けたりしないよう、「各フロアの平面図を見ながら試行錯誤を繰り返し、設置場所を決めた」。パルコの子会社で、IT(情報技術)関連事業を手掛けるパルコ・シティの櫻田航士開発本部R&D部Webディレクターはこう話す。

次に専用アプリケーションを搭載した30台のスマホを準備し、4日間で500人以上の来店客に貸し出した。ビーコンが発信するIDをスマホアプリが受け取り、来店客の位置を捕捉する仕組みだ。

館内の回遊が明らかに増加

動線分析によって、当初の狙い通り、西館と東館の行き来が増えて、買い回りが促進されたことが明らかになった(図3)。東館地下1階の出入り口から入館した来店客を100とすると、そのうちの84%の来店客が西館1階にも足を運んでいることが分かった。

図3 改装前後の動線分析の結果。いずれの調査も、西館1階出入り口と東館地下1階出入り口で来店客に声をかけ、調査への参加協力をお願いした。その際に収集したデータに偏りが生じないように、スマホを貸し出す来店客の男女比や年齢構成のバランスに気を配った。図中の円はビーコン端末の設置場所、数字と色はビーコン端末が検知した来店客数を表す

改装前の7月に実施した調査では58%だったので、26ポイント増えた。これは、東館と西館の地下1階の売り場を一体化したことで、「東館地下1階→西館地下1階→西館1階」と館内を回遊する来店客が増えたことを意味する。

今回の動線分析は、改装効果の検証だけにとどまらない。商品を「買わなかった」来店客の動きを分析するという、もう1つの狙いがある。

買った客と買わなかった客を比較

従来のPOS(販売時点情報管理)やカード会員データの分析だと、商品を買った人だけが対象になってしまう。「動線分析であれば、購入に至った来店客とそうではない来店客の動きを比較し、売り場づくりや販促のヒントが見えてくる」とパルコ・シティの田中真悟開発本部R&D部課長は強調する。

ただし、ビーコンとスマホを駆使して収集した動線データだけでは、深掘りした分析がしづらい。来店客の性別や年齢といった属性データがひも付いていないからだ。

そこで、パルコはスマホを貸し出す際に、簡単なアンケートに答えてもらうことにした。アンケートを通じて、性別や年齢、居住地域、目的、来店頻度、交通手段といった属性データを取得。さらに、商品を購入していれば、スマホの返却時に買った商品とその金額を聞くようにした。

まだ収集した動線データを分析している最中だが、既に分かったこともある。商品を買った人は買わなかった人と比べて、30分ほど滞在時間が長いという事実だ。パルコは分析結果の検証が終わり次第、具体策の検討に入る考えだ。

[参考]日経BP社は2015年6月5日、「ゼロからわかるIoT講座」と題したセミナーを開催する。インターネットでモノやヒトを結び付け、その動きをとらえるIoT(Internet of Things)は、製造や流通、サービスなど様々な業種で注目を集めている。本セミナーはIoTを使ったビジネス設計の習得を目標に、IoTの基礎から役割、事例までを体系的に解説する。URLは、http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/itpro-s/seminar/nis/150605/

(日経情報ストラテジー 山端宏美)

[日経情報ストラテジー2015年3月号の記事を基に再構成]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン