住民移転の遅れを偽装、市職員に賠償命令

2015/5/15付
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日経コンストラクション

春日井市道149号高座(たかくら)線のうち東端付近の拡幅済み区間。拡幅事業の完了時期は未定(写真:愛知県春日井市)

春日井市道149号高座(たかくら)線のうち東端付近の拡幅済み区間。拡幅事業の完了時期は未定(写真:愛知県春日井市)

愛知県春日井市は、市道拡幅に伴う住民移転が予定の年度内に完了したように偽装して市に損害を与えたとして、担当者だった建設部の当時の課長に約95万円、課長補佐に約125万円の損害賠償をそれぞれ命じた。

担当職員は、移転の遅れで補助金が受けられなくなると考え、移転完了検査調書に虚偽の記載をした。市は偽装発覚後、国に補助金を返還し、加算金を支払った。

問題があったのは、春日井市が市東部のJR高蔵寺駅付近で進めている延長1250mにわたる市道149号高座(たかくら)線の拡幅事業。市は拡幅のため移転する住宅20戸の住民への補償金に、国の社会資本整備総合交付金を充てる予定だった。補償金は1戸当たり2200万円だ。移転は当初、2012年度末に完了する予定だったが、うち1戸で新居の建設が遅れた影響で14年度にずれ込んだ。

■2回目の繰り越しは無理

春日井市が補助金を受けるための移転期限は、12年度末から13年度末へと既に1回延長していた。国が財政法に基づいて補助金の1回目の繰り越し(明許繰り越し)を認めたためだ。2回目の繰り越しも制度上は可能だが、自然災害の発生や補償対象の住民の死亡などを理由とする「事故繰り越し」に該当する場合に限られる。

市によると、移転先となる新居の建設が遅れたのは、敷地が市街化調整区域にあることなどが理由で建築確認に手間取ったためだという。財務省が公開している事故繰り越しの事例集には、移転先建物の設計の遅れで住民が引っ越しを延期したことを理由とする事例もある。しかし、これは住民の入院と建築基準法改正による建築確認審査の混乱が影響した非常にまれなケースだ。

春日井市の担当職員は、今回のケースでは2回目の繰り越しが認められないと考え、補助金を受けるための移転完了検査調書で、13年度末までに移転が完了したと虚偽の記載をした。愛知県が14年7月に移転完了検査を行った際に、その住民がまだ移転していなかったことから、市の不正が発覚した。移転が実際に完了したのは14年11月だった。

市は15年2月、担当職員2人をそれぞれ減給処分とした。その後、補助金の返還のほかに必要となった加算金419万円について、地方自治法243条の2第3項に基づき、一部の賠償を2人に命じた。

■悪かったのは担当職員だけか

市は補助金の返還と加算金の納付で損害を受けたとしているが、その補助金は本来、交付されなかった可能性が高いものだ。

住民の移転の遅れで公共事業が予定どおり進まないケースは全国でも珍しくない。それによって自治体が補助金を失った場合、その責任はいったい誰にあるのか――。硬直的な補助金の運用を批判する声がある一方、計画的に移転を進められなかった自治体側の問題とする見方もある。あるいは、移転が遅れた住民の責任を問う意見もあるかもしれない。

虚偽の記載をした職員に責任があるのは当然だが、そうした不正に手を染めさせた構造的な問題にも目を向ける必要がある。

(日経コンストラクション 安藤剛)

[ケンプラッツ 2015年5月14日掲載]

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